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それは恋愛に似て非なる旅の一幕

 今日は、ごくごく個人的な思い出を書き記す自己満足の1ページ。


 たとえ仕事の出張であっても、普段仕事をしている土地ではない場所へ移動することは、ほぼ旅といっていいのだと思う。少なくとも私は。

 同じ場所で同じことをし続けることが苦手な私にとって、定期的に出張があり、多種多様な仕事をするのは、本当に肌に合っている。
 そもそも出張が嫌いという人も当然いると思うが、私は願ったり叶ったり。出張好きの人には、仕事のついでの食事とかナイトライフとか、そちらが本題という人もいるが、私は、別のところに行って高まる気持ちそのものがもう楽しいので、まあ、美味しいものを食べ損ねても、お酒を飲み損ねても、それなりに充実した毎日と実感が持てる。

 そんな中で、尊敬する上司とお遣いに行く用事が発生した。

 恋とか愛とかが介入する関係性でなくとも、尊敬というプラスの気持ちを持っている相手とのお出掛けというものは気持ちが盛り上がるものである。
抑えきれないわくわく感を悟られないようにポーカーフェイスを装い、時間が時間だったこともあってか突然「飯でも食うか」と言われ、一度謙遜してみるものの内心万歳三唱だったり(そして飯は食う)、といった、恋する乙女のような感情の行き来をさらに自分自身で俯瞰してみてほほえましくなったりしていた。

 お遣いを終えて大量の荷物を抱え、タクシーで帰路につく際に、ある出来事が起きる。地元のタクシー運転手のおじさんはそこそこに地方訛りが強く、関東から出たことがない私には少々聞き取りづらい話しぶりだったのだが、そんな運ちゃんの言葉でもはっきり聞き取れてにわかに赤面する事案が起きる。運ちゃん、上司のことを「旦那さん」と呼んでしまったのだ。上司は「旦那さんって(笑)」と反応していたが、あまりにびっくりしてしまい私は何も言えずにただただ聞こえなかった振りを通すことになる。(ちなみに上司は既婚者である。)

 心の中は、うわわわわわわああああ、とただただ焦る私。私にもまだそんな気持ちがあったかと思わず口元がほころんでしまう。

 恋愛どうこうがある関係性でないことが十分にわかっていて、またそれを願っていることもなく、それでも嬉しかったのは、そういった雰囲気を醸し出すような人間関係であると他人から見えていることであった。
私はとても信頼しているし、もしかしたら上司もある程度仕事を任せていいと思ってくれているかもしれないとは思っている。それでも、他人の思っていることはわからないのが世の常。外からの評価でその片鱗がもらえることは、やはり嬉しいことだなと素直に思ってしまう。

 短い時間だったが、仕事でも、普段と違う時間を共有できたことは嬉しく楽しい時間だったと、忘れたくない時間だなと、海鮮丼が特別美味しかったなと、備忘録的に、そっと書いておきたいと思う。


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