シン・エヴァンゲリオンは監督失格なのか。(ネタバレ)

エヴァ公式がネタバレしても良いと言い、Twitterが若干騒がしい本日。
エヴァについて書きたいと思いnoteの記事にしました。

まず僕はエヴァはそんなに好きじゃない。
嫌いでは決して無いが、喜んで好きな作品でも無い。
30代後半男性としては必ず通る道だし、通らなくても横にあるのを意識するぐらいエヴァンゲリオンという物はそこにあった世代。
エヴァによって、まぁ正確にはそれよりも前からだけど、エヴァっぽい何かというものが大量に生産され、良し悪しあれど転換期ではあっただろう。
スター・トレックやガンダムが日本のアニメーションに影響を与え、
それ以降 “それらしい何か” が大量生産されたが、
それと同じでエヴァも転換期ではあった気がする。

世界を構築するという神のようなことを
偶然なのか故意なのかわからないが
エヴァ製作者たちは行ったのだ。

そして、そのエヴァに一番囚われたのは、
視聴者である僕らではなく。

創造主であるその制作者たちである。
その中心にいる庵野秀明という人は
最もエヴァに囚われた人であると僕は思っている。

そして今回そのエヴァが終わる。

庵野秀明がエヴァから卒業できるのである。

その意味で僕はシン・エヴァがとても楽しみだった。
数週間ぐらい前から周りに見たいとウザいぐらい公言して
公開初日に見にいくほど楽しみだった。

期待して映画館に入り、出てきて思ったのは

「素晴らしかった。ありがとう。そしておめでとう。」

これ以外言葉は出ない。
素晴らしい映画でした。
2時間半あっという間だった。
そしていっぱい泣いた。

エヴァがそんなに好きでは無い僕だけど
庵野秀明という人物は好きなのだ。

愛してやまないゴジラをシンゴジラとして製作してくれた人でもあるし。

今回のシンエヴァを見て意識した作品がある。

2011年に公開されたドキュメンタリー映画
「監督失格」
庵野秀明はプロデューサーとしてこの作品に関わる。
監督は平野勝之。
本人が主演で進む映画だ。

内容は、AV監督である平野勝之が、
男女の関係であり被写体である
AV女優、林由美香さん。
彼女が亡くなったその日に会っていた平野氏
ドキュメンタリー作家としてその一部始終をカメラで撮っていた。

林由美香が亡くなったあと、アイデンティティが崩壊しカメラを回せなくなった平野勝之がその時のテープを見直し、向き合う。
彼は林由美香から卒業できた。

それが、エヴァしか撮れない庵野秀明と被る。
何もできないモラトリアムな状態から脱却する。
監督失格という映画をプロデューサーで参加し、
自分のこととして向き合いたかっただろ。
でなければ、
彼がプロデューサーとして参加した意味がわからない。

実際、監督失格以降の庵野秀明作品には
何か吹っ切れたところがあって
とても大人の作品に感じる要因になっている。
シンゴジラ然り、エヴァQ然りである。

シンエヴァは冒頭のパリの戦闘シーンの後、
シンジ綾波アスカの3人が歩いてたどり着いたのが
生き残った人々のコミニティー。

そこからとても牧歌的な世界観が続く。
普遍的な幸福、生きてることへの幸福。
自給自足で植物を作り食べる幸福。
新しい命が誕生する幸福。

およそエヴァっぽく無いシーンが続いた。
今までのように刹那的な悲しみや不幸が主体の世界から
幸せを享受することへの理解を示すシーンばかりだ。

こういう事を描くのが恥ずかしく無くなったんだなぁ。
っと感じた。すごく大人な世界。
「エヴァファンはこう言うのが好きだろう」
っと描いてきた彼らが、そうじゃなくなった。

そう思った時、僕は泣けた。

そして、ああ、終わるんだって実感が湧いた。

シンジくんは庵野秀明本人を描く。
「エヴァなんかに乗らなきゃよかった」は彼の言葉だろう。
自分だけ歳を取らず、エヴァという世界に隔離された彼は周りの人々は26歳上に見えただろう。
シンジくんが14年分成長が止まる姿が庵野秀明本人に見えた。

原作から離れ、エヴァンゲリオンという世界を構築してしまった彼は
そこから逃れる術を模索したと思う。
終わらせたけど結局終われなかった。
エヴァは彼にとって牢屋だったのかもしれない。

しかし、エヴァだからこそ庵野秀明は成長できたのでは無いか。

だからシンジくんは
またエヴァに乗る事を決めたんだと思う。
そして、シンジは成長する。
過去の自分の投影であるゲンドウに大人として接するシンジは今の庵野秀明と同じだ。

過去の庵野秀明では終われなかったエヴァを
大人になった庵野秀明が終わらせる。

全てのエヴァンゲリオンにありがとうっとキャッチコピーは嘘では無い

映画は進み、最後に全てが終わるように構築されてる。
丹念に一個づつ終わらせていく。
エヴァに対する敬意を感じながら

そしてラストシーン

駅舎から出てきた彼らはもうアニメの世界ではない。
エヴァはもう終わったんだ。

エヴァは終わった。
シンエヴァは監督失格だった。エヴァから卒業するための儀式でもあった。

庵野さん、スタッフの皆様。お疲れ様でした。
そしておめでとうございます。

ありがとうエヴァンゲリオン。

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