パンダ音楽祭のつくり方(1)「はじめに」

はじめて料理する人はレシピを見ます。はじめて山に登る人は登山の基本を学ぶでしょう。はじめての国を旅する人はその国のことを調べるはずです。当てずっぽう、行き当たりばったりでは、到底目指すゴールにはたどり着けない。あたり前です。

僕と仲間たちが「音楽フェス」というものを自分たちでやってみようと思った時、本屋にもネットにも「フェスのつくり方」を記したものはありませんでした。料理をつくる人は多いけど、フェスをつくる人はそんなにいないということです。仕方なく僕たちはレシピなしでフェスをつくることにしました。

フェスの材料:会場 1個/出演者 適量(上質なもの)/お客さん 適量(できれば多め)/リストバンド 人数分/飲食物 適量/グッズ 適量

最初の知識はこの程度でした。こんなんで本当に「フェス」ができるのか。はじめは半信半疑の人もいました。やってもお客さんぜんぜん来ないんじゃないか。盛り上がらないんじゃないか。イベントをする際いちばんはじめにやるのは「会場を押さえること」ということくらいは知っていましたが、準備した会場はキャパは1200人でした。これをいっぱいにしないと出演者にギャラが払えません。ちなみに僕は飲み会の幹事がせいぜいで、フェスはおろかイベントというものを主催するのはこれがはじめてでした。ふだんはサラリーマン・OLをしているド素人たちが集まって、フェスを開催。幼稚園児がレシピも見ずにフルコースをつくろうとしているようなものです。大やけど必至。

けれどもう会場は借りてしまったし人には言っちゃったし期日はどんどん近づいてくるし、とにかくやるしかないのです。やれるかどうかじゃなく、やるしかない。そういう状況に追い込まれると人間は強くなります。僕たちはイベンターとしては素人だけど、お客さんとしてはプロだ。プロのお客さんとして、いいフェスをつくろう。新宿の居酒屋でチューハイを飲みながら一致団結しました。

それから数ヶ月後のフェス当日。満員とはいかないまでも、850人もの人々が会場に来てくれました。調子に乗った僕たちはそれから毎年開催するようになり、翌年からは毎回前売り券がソールドアウト。今年5月にひらかれた第4回では、発売当日わずか8時間で売り切れたのです。ちょっと前まではまったく無名のフェス。いまも有名ではありませんが、熱狂的に愛してくれるお客さんがいるフェス。

名前は「パンダ音楽祭」といいます。そして僕は申し遅れましたが主催のパンダといいます。どうぞよろしく。

パンダ音楽祭をはじめて数年たった頃、「自分もフェスを主催してみたい」というお客さんに出会いました。それも一人ではなく、数人。みなさん、やってみたいけど無理だろうな、というような口ぶりでした。でも、料理も登山も一人旅もフェスも、実際に一歩を踏み出すことがいちばん大変で、そしてやってみたら大変なことが吹き飛ぶくらい楽しいもの。そう、フェスは行くと楽しいけど、やるともっと楽しいのです。日本のあちこちで有志による手づくり音楽フェスがひらかれたら、とっても素敵だなと思います。地元でやる文化祭、楽しくないわけがありません。近所でひらかれるフェスならお金もあまりかからないで1日楽しめるというメリットもあります。巨大フェスもいいけど、それとはちがう魅力が草フェス(草野球みたいなフェス)にはある。

というわけで、パンダ音楽祭をやるにあたって考えたこと、やってみてわかったことを、主催のパンダが書いてみることにしました。たったひとつのメニューしか知らない料理人が書く料理本みたいなものですが、なにかひとつでもヒントになれば幸いです。



 

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パンダ音楽祭のつくり方

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