見出し画像

ワークマンのデータ経営と競争戦略。噂のワークマン本は経営学の参考書だった。

こんにちは、りほ🥖です。

今週も中小企業診断士の受験勉強中です。
暗記とかばかりやってると飽きてくるので、先週末は読書をしました。

読んだ本は、最近話題のワークマンの、ここ数年の大躍進の裏側を紐解く本

「ワークマンは商品を買えずに売り方を変えただけでなぜ2倍売れたのか」

です。


これがもう

めっちゃくちゃ面白かった!!!!!

面白すぎて夜寝れなくなるくらい!一気読みしました!!


株価の爆上げニュースをきっかけに知ったワークマン。
私の中では、
「職人品質の機能性の高さを一般を向けに訴求したら爆売れした企業。安いらしい。」
くらいの認識でした。

しかし実際には、その爆売れの背景には訴求ターゲットを追加しただけではなく、サプライチェーンの中のあらゆる機能の改善があったことが書かれています。
それらの改善活動と、元々のワークマンの企業風土である「真面目にやり切る力」や「店舗運営の徹底した標準化能力」が組み合わさって、新生ワークマン(ワークマンプラス)が爆誕したようです。ローマは一日にして成らずですね。

ワークマンのここ数年の躍進は、タイトルである「売上2倍」からも推察できますが、株価の上昇からも見て取れると思います。

株価は2年前から2~2.5倍の数値になっています。スゴイ…


この本、中小企業診断士の受験生であればおなじみの理論がいたるところに散りばめられており、経営学や経営コンサルティングの参考書になるような内容です。それでいて、ドラマや映画のようなサクセスストーリー仕立て。ワクワクして、2015年~2020年にワークマンでこの変革を体感していた人がうらやましい!と思うほどの内容でした笑

中でも面白いなと思ったことが2つありますので、それぞれ取り上げてみたいと思います。

①データ経営企業への転換

ワークマン躍進の背景にある大きな転換のひとつが、データの全くないアナログ企業からデータ経営企業への変化です。

ワークマンでは、「データサイエンティストは必要ない、それよりも全社員をエクセルの達人に育てる」という方向性でデータ経営を行っています。
これにより、現在に至るまでに「需要予測のアルゴリズム」や「未導入商品の発見プロファイル」など様々な業務に繋がるプログラムを生み出しています。


私は現在、Webサイトのアクセスデータの解析を行う仕事をしていますが、元々は営業マンでした。
異動するまでの1年半、お客様と対峙する中で
「データを活用できる社員を育てたい」
という声は、大小問わず沢山のクライアントから聞くニーズでした。

ツールは導入した。
様々な分析に耐えうるデータベースもある。
でも、分析を行う文化がない。

これは多くのお客様の共通の悩みでした。
私の所属する株式会社プリンシプルでは、人材育成やツール運用の定着支援なども業務範囲です。
こういったお客様に対してTableauやGoogleAnalyticsなどの講習を行う教育メニューや、相談窓口になるようなサポートメニューを用意しており、時にはプロジェクト型で長期にわたり支援に入るような活動もしています。

こういった教育メニューはもちろん効果的で、上達する人は本当にメキメキ成長します。
しかし、「社員みんながデータを活用する組織」にするには、やはり組織風土や文化の変革が一番大事だと感じます。

個人的にですが、データ活用の一番の壁は、過去の成功体験ではないかと感じます。

データがなくても上手くいく、こねくり回していたらなんとかなった、最後は気合と根性だ!こういった姿勢で様々な物事をなんとかしてきた方、沢山いるんじゃないでしょうか?他ならぬ私自身元々は完全にこっち寄りの考え方をしていた人間です。

下手にこういった仕事の仕方で成功体験があると、データを使って仕事の進め方を改善する、という思考に至りません。だってなんとかなるんだもの。

こういった考え方が染み付いていて、この思考回路から脱するのにかなりの時間を要しています。正直言ってまだ抜けきっていないな~と感じる時がかなりたくさんあります。(年齢的には若い方ですが、効率化大好きな人が多いわが社の中では、私が一番遅れているかもしれないと常に思っています笑)

では、データを活用する組織にしていくために一番大事なのは何か?それは仕組み作りとリーダーシップにより組織風土を変革することなんじゃないかなと思います。

ワークマンは、そのどちらもっても上手く取り入れて進めています。

仕組み作り(学習の機会の提供)

ワークマンでは、入社してからの4年間、全社員にエクセルの講習受講を義務付けています。また、データに強い社員はそれとは別に、中級者向けの講習会に参加でき、またそこで更に頭角を現すと分析チームのメンバーになれるというステップで育成していくそうです。

高度なツールがたくさんあるこの時代に、なせまエクセルか?その答えは社員に自分の頭で考える能力をつけるためです。
データを見て異常値を発見したり、売上げ変動の因果関係を考えたりする力は、AIなどではなくむしろエクセルでの方が育つという思いから、エクセルを標準的に使用しています。

データを活用して売上を上げる、という目的だけから考えると一見遠回りのようにも思えます。そういった作業が得意な人がAIでもなんでも使いこなしてプログラムを作ってしまえば良いじゃないかと。

でも、ワークマンでは分析思考が必要な業務が日常的に転がっています。

例えば商品開発。ワークマンでは、体形の大きく異なる客層が存在している(職人さんとアスレジャー好きの一般女子など)ため、商品開発時、どの層にどのくらい売れるかを考え、サイズごとに何点ずつ作るのかなどの試算が必要になるそうです。

(職人向けのみの時代からシフトチェンジしたことで、分析が必要な場面が増えたということですね)

レベルの高いデータサイエンティストが数人だけいるより、社員全員がエクセルのエキスパートで分析思考がある状態を目指す。しかしワークマンではその道の先に、高度な分析が出来るエキスパートが集まる分析チームが生まれています。
急がば回れとはまさにこのこと!🕺🏾

業務でお客様のデータを分析していると、Webマーケターならではの視点は出てきますが、同じデータを現場の人が見たら更に山ほど発見があるのではないかと感じます。

現場の人が皆、基本的な分析思考を持っている状態。これは昨今あらゆる企業が目指している姿です。ワークマンはその土台を手に入れました。

リーダーシップ(トップダウンの意思表示)

ワークマンは2014年、中期経営計画で

・「データ経営」で新業態を運営する準備をすること

・5年で社員年収を100万円ベースアップすること

を掲げてました。本によると、このどちらも2020年時点で達成されたようです。
ただデータ活用の能力強化を社員に求めるだけでなく、その先に給与UPがあるという具体的な未来を見せたことで、社員の士気を高められたのではないかと思います。

また、仕組み作りの一端でもありますが、データ分析力を部長登用の必須条件にしました。

会社として明確に、データ分析が出来る人を推していくという意思表示をしたということです。

ワークマンは、アナログ企業、かつ創業から40年程度続く老舗企業でもありました。凝り固まっているはずの組織文化に変革を起こすためには、やはりトップダウンの意思表示が必要です。(社内向けに発信する際は社長に発言してもらい説得力を持たせる、というようなテクニックも使われていたようです。)

②競合回避できる市場選択

ワークマンはもともとニッチ市場(職人向け作業服)でのリーダー企業です。安定的に成長してきましたが、市場の伸びが鈍化した時、改めて自社の強みを棚卸しし、競合分析を行いました。
そして改めて「高機能・低価格」の市場が空白であると気づいた、この本ではそう書かれています。

この「高機能・低価格」は、もともとワークマンが持っていた強みです。しかし、改めてそのコンセプトを強く打ち出し、職人向けと同じ商品を一般向けに訴求したところ、大きく事業の規模を広げることに成功しました。

1500円や1900円で高機能な靴を売っているお店など、確かにありません。普通のアパレルブランドなら安かろう悪かろうと捉えられそうなところですが、ワークマンでは「職人向け品質」のブランド力があるので、安心して買うことが出来ます。

成功の影には、
•一般向け訴求に欠かせない商品開発力の強化などに経営資源を投下したこと
•長年積み重ねた職人品質のブランド力
が大きく作用しています。

が、私はワークマンの成功から、やはり自社の強みに即してポジション取りをすることはとても大事だなということを1番強く感じました。

市場の中で明確に立ち位置のある企業は強いです。

本の中ではベーシックを貫くユニクロなどが出てきましたが、アパレルなら最先端でデザイン性の高いアイテムが安価にそろうZARAなども立ち位置が明確です。

また昨今では、ひとつ前のnoteで書いた、小嶋陽菜さんのブランド「herlipto」や、胸の大きい女性にターゲットを絞った元鈴木さんのブランド「pinup closet」など、ニッチな市場に向けてオーナーの個性を活かして訴求するようなアパレルブランドがひしめいています。

アパレル企業以外でも同じです。成長市場である時は気づき辛いですが、業界でトップを走る企業と全く同じことをしていては経営資源の少ない中小企業はいずれ淘汰されます。
中小企業は中小企業の戦い方があります。基本的な考え方はアパレルと同じで、競合のいないニッチ市場でリーダーになることを目指すべきです。

ワークマン変革の中心となった立役者の土屋哲雄氏のこんな言葉が本に書かれていました。

誰も気づいていなかった市場の隙間を見つけて、徹底的に攻め込むのが、ワークマンがワークマンたりうる理由である。40年間も作業服専門店として独走してきたDNAが、今なお生きているのだ。土屋氏はこう言い切る。
「うちは、とにかく競争したくない会社だから」負ける勝負はしない。競争して負けるぐらいなら、最初から勝負しないほうがましだとさえ考える。

徹底した競争回避の戦略が、ワークマンの成功の要因の一つであることは間違いないです。

競合ひしめく現在、果たしてどこにポジション取りをするのが良いのか。それは自社の持つ強みに依存します。
あなたの会社の強みはなんですか?

まとめ

アツく書いてしまいました。本当にとても面白かったです。

マーケティング的な要素の話ばかりピックアップしてしまいましたが、ワークマンはじめとしたモノを扱う事業会社の仕事はマーケティングだけではなく、仕入れ、商品開発、在庫管理、フランチャイジーとの関係性の強化や、仕、店舗を束ねるスーパーバイザーさんたちの努力など、様々な要素があるのだなあと思いました。

Webマーケターとしては、自分が仕事の中で携わっているWebというチャネルが、いかに全体のサプライチェーンの中の一部でしかないかをいうことを改めて感じました。アパレル企業のパートナーとなるためには、この辺りの知識をもっとInputする必要がありますね。

また、中小企業診断士資格の受験生としては、(ワークマンは中小企業と呼ぶには規模が大きすぎますが)企業経営理論で習った経営戦略の話がふんだんに盛り込まれており非常に勉強になりました。

私が今勉強していることは、机上の空論ではなく、実際の経営に取り込まれている考え方なんだな~と改めて認識できました。さて、勉強引き続き頑張るぞー💪🏻


おまけ

ハートボタンを押してもらうと、美味しいものの写真を表示する設定にしてみました。

試しにハートをオシテミテネ!!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?