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愛と自由のテルアビブ・プライド・パレード

●LGBTの歴史と日常
●法と権利と世論
●プライドパレード2019

写真:テルアビブ市庁舎もレインボーカラーにライトアップ

LGBTの歴史と日常

6月14日にテルアビブでプライド・パレードが行われ、参加してきました。 街は虹色で一色になり、テルアビブは1週間近く色々なイベントで盛りだくさん。 日本ではレインボーパレードという名称で知られていると思います。 

プライド・パレードはLGBT(Lesbian,Gay,Bisexcial,Transgenderの頭文字)コミュニティー、 性的マイノリティーの人々が平等を求めて始めた運動です。 
※最近はQもついてLGBTQと言うそうです。

Qは「クエスチョニング」「クィア」という二つの言葉の頭文字を意味し 、 クエスチョニング( Questioning )は 性自認や性的指向を決めない、まだ決まっていない、違和感があるという定義のようです。 クィア(Queer)は 元々は「風変わりな・奇妙な」と言う意味で、「変態」の意味合いを持っ て、侮蔑的にゲイを表現する言葉として用いられていました。 今日では性行動で分類できないという主張で、現在はセクシャルマイノリティーの総称となっ ているようです。

イスラエルでは1975年に最初のLGBT団体が設立されます。 1979年には市庁舎前広場で抗議運動が行われ、そのまま行進に発展しますが、これが第一回目のテルアビブプライドパレードだったとさています。 1993年に公式なパレードが初めて開催されました。今年で21回目となり、去年は20万人の参加があり、アジア大陸では最大級のパレードとなっています。諸外国からもコミュニティーの人達が大挙して押し寄せるパレードに成長しています。

また中東圏でみても最大のプライド・パレードです。 周りのアラブ/イスラム諸国は彼らLGBTの存在を認めていないので、間違いなく中東最大のパレードでしょう。 ちなみに周辺アラブ諸国からLGBTの人が移住してきたというニュースはたまに聞く話で、敵国からも受け入れている現実があります。

有名な話では2015年にイランからテルアビブに逃れた詩人フィアム・ファイリーさんの話です。人権団体によるとイランではホモセクシャルの人々は捕まり処刑され、すでに4000人が命を落としているようです。

 彼はイスラエルの移住を夢見て、それを実現させました。当時の文化大臣ミリ・レゲブ氏やLGBTコミュニティーのヘルプにより彼は敵国イランからイスラエルに移り「ここが本当の僕の家だ」と喜んでいました。

テルアビブはLGBTフレンドリーな街として定評があり、2011年にLGBT旅行サイト Gaycities.com によって最適な旅行スポットとして認定されました。 世界を見渡すとゲイバーの密集地区が存在しますが、テルアビブはいわゆるゲイエリアはありません。なぜなら街全体がLGBTを受け入れているため、ゲイエリアの様な地区を作る必要がないからです。

6月からほぼ1か月半、イスラエルの各地でプライドパレードや関連イベントが行われます。 まずパレードの話の前に、イスラエルにおける日常のLGBTとの関わりをお話ししたいと思い ます。

イスラエルは建国71年の若い国です。 ここ20年は急激な経済発展を遂げ、近年はスタートアップネーションとして世界に知られるようになりました。この国の経済を支えている、世俗派のイスラエル人。(ユダヤ教の教えを日々守っている正統派や伝統を重んじる人と逆の生き方をしている人々の事を指して世俗派と呼ぶ) 

世俗派の人は自由を謳歌し、日々しっかり仕事をして週末は家族、パートナーとの時間を大切にしています。(特に教会に祈りに行ったり宗教的習慣はしない) 世俗派の人には多くのLGBTの方がいます。

自分の3人の子供は小学校に通っています。そして各クラスにLGBTのお父さん、お母さんが居るのが現実です。
人口比でいうとコミュニティーの比率は意外に高いようです。 2009年に行われたアンケート、「イスラエル社会における少数度数」によると1〜5段階で、平均値3.2と高い。世界と比較しても高い数となりました。

LGBTの団体はイスラエルにはなんと19もの数があり、学生だったり地域だったりゲイパパ、レズママなどのレイヤーで形成されています。 2005年には「バット・コール」という宗教女性のレズビアン団体や2007年に「ハブルータ」というユダヤ教ゲイ団体も出来ているというから驚きです。

私は学生時代をエルサレムのベツァレル・アカデミーと言う美大で過ごしました。 先生はじめ生徒もLGBTコミュニティーの人が多く、自分のクラスにはレズビアンが3人、ゲイ が1人、トランスジェンダの人が1人いました。 ですから自分の中では、そういう人が日々の生活の中にいることはごく自然であり、普通に彼らと接触してきました。自分の肌感覚ではLGBTに対する理解が進んでいて、イスラエルは懐が深いな〜と感じています。

数年前イスラエルに来たピュ〜ぴるさんと言う日本人アーティストの方とお仕事する機会がありました。彼女は幼少期は男の子として育ち、その後性転換をして女性になりました。 彼女は子供の頃から自分が男の子ではないと感じていたという。 そんな彼女と話しながら日本はLGBT認知後進国だと嘆いていました。 これからコミュニティーの為にすることは一杯あると言っていたことが印象的でした。

写真:今回のメインテーマ「法的同性婚と養子縁組の権利」

法と権利と世論

80年代から西欧と足並みをそろえるようにして、イスラエルでも意識が高まり彼らの認知と平等がしばしば公共で話されるようになりました。 法的には同性婚を認めていないイスラエル。但し”事実婚”として社会で認めるという判断にはなっています。つまり法的には経済的権利は受けられるという事になっています。 またゲイの知人は大使館に勤める彼氏のパートナーとして日本に法的に滞在もしていますが、 イスラエル国が実婚を認めているケースと言っていいでしょう。

代理母出産は法的には認められていません。 ただ国内外問わず、代理母出産はおこなわれてきて、自分の大学時代の友人も国内で代理母出産で娘さんを生んでいます。 また海外からの養子縁組も盛んです。決して安くはない代理母出産や養子縁組をしてでもイスラエルのLGBTは家族を作って過ごしたいという現実があります。

ただ社会全体では未だにコミュニティーに対する理解不足や法的差別、偏見があるのも事実です。養子縁組市民権社会保障相続税など法整備の遅れは否めず、係争中として放置されている感もあります。

写真:2019年4月の選挙ポスター「子供とお父さんとお父さんという事にならないように!」 宗教政党ヤハッド・べレシートのエリ・イシャイ氏

2009年の調査「地域にLGBTが居住したら」と言うアンケートでは、25%のユダヤ系イスラエル人が不快と回答、アラブ系イスラエル人は70%が不快と回答した。 (70%の超正統派ユダヤ教徒は反対、不快、一般のユダヤ教徒は55%が不快と回答)世俗派イスラエル人はコミュニティーを受け入れるが、ユダヤ宗教家やアラブ系には嫌悪感理解が進んでいないことが分かります。
上の写真のエリ・イシャイ氏はこのポスターのキャッチでLGBTコミュニティーから猛反発をうけました。ユダヤ教は男女間の関係だけでなく、性的マイノリティーに対しても厳しいスタンスと取っています。全てを受け入れようと言う考えはないらしく、これを性的な乱れと捉え、信者たちに警告を発しています。

別のアンケートでは国民の61%が同性婚を支持、60%が同性カップルの養子縁組を支持しているという結果になっています。(2009年ハアレツ紙)

写真:パレード終点近く

プライドパレード2019

イスラエルでは毎年5月か6月の金曜日の朝10時、テルアビブの中心のメイール・パークから始まります。 パレード開始前には、2009年テルアビブのバルノアルで(LGBTの青少年が集まる場所)反 LGBT勢力による銃乱射事件で命を落とした、ニール・カッツさんとリズ・タルビシーさん(当時16歳)に1分の黙祷を捧げています。

テルアビブのブグラショブ通りを北に進み、海外沿いの通りへと練り歩く。
メインストリートはビーチ側のハーバート・サムエル通り。
ホテルが連なり、ビーチから乾いた風が吹き抜ける最高のロケーション。
毎年、照りつける太陽と参加者と警察、物売りがごった返すカオスなシーンです。

写真:2018年のトラック

この通りから50台ほどのトラックが参戦。このトラックは各団体やスポンサー企業などがだしていて、それぞれ思い思いの曲を飛ばしながらパフォーマー達が踊っています。 熱気と情熱に揉まれながら、終点のチャールス・ガーデンまで進んでゆく様は圧巻です。 

ある意味イスラエル最大のイベントになっている事実、5月にあったユーロ最大の歌の祭典がテルアビブで開催されたが、それを凌駕しているのは言うまでもないでしょう。 それもそのはず今年はなんと 25万人が参加!!!

自分はもう4年近くパレードの写真を撮っていますが、いつも感動することがあります。 それは参加者の中にLGBTの家族がいることです。 お母さんが「自分の息子はゲイですけど、それが何か?」というプラカードを掲げていたりします。見た目や性の趣向が変わっても、自分の家族に変わりはないというスタンスが好きです。

数年前、妻と自分達の子供が将来ゲイになったらと言う話をしたことがあります。
「全然問題ないよ、宗教家になる方が嫌だ」と妻。
ちなみに妻の親族にもレズの従妹と、ゲイの従弟がいて、その従弟は今年の春、軍を除隊してカミングアウトしました。
叔父さんと叔母さんが家にわざわざ来てその事を話してくれました。
とっても誇らしげでした。

ユダヤ教のトーラーの一節に、べ・アハブタ・レアハ―・カモハー(ואהבת לרעך כמוך)と言う 教えがあります。意味は「あなたの隣人を自分の如く愛しなさい」 これを変えてべ・アハブタ・レヤルデハー・カモハー「あなたの子供を自分の如く愛しなさい」 と掲げていました。
イスラエルはイノベーション大国として注目されていますが、この性マイノリティー問題でも自由で懐の深い国でもあります。
お祭りとしての要素が強いパレードですが、コミュニティーの人達が口をそろえて「権利が先、その後お祭りだよ」と言っていたのは、まだこれから長い戦いを意味しているんだと感じました。
日本のLGBTコミュニティーの人はもちろん、この空気に触れてみたい人、性的マイノリティー支持を考えている方はぜひ、来年のプライドパレードにお越しください!


自分が撮った写真はこちらから​↓
https://photos.app.goo.gl/4BVXkUa9mX32VZdX6

2019Tel Aviv プライドパレード動画↓

2018年のパレード動画↓

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