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2019.7.29 『頭脳警察xRama Amoeba「69 Paradise」』レヴュー


Panta : 市川 清師くんがレヴューしてくれた…♫
◼︎頭脳警察、新作『乱破』を最速で披露! 『頭脳警察xRama Amoeba「69 Paradise」』
産直か。朝採れをそのまま店頭に並べる。そんな感じではないだろうか。ミキシングはまだだが、頭脳警察は先日、新作のレコ―ディングを終えたばかり。スタジオで作り上げたものをそのままライブで下ろしていく。既に東京・渋谷「B.Y.G」での3回連続の公開リハーサル・ライブ(!?)「頭脳警察 “50th”& B.Y.G “50th” presents」、亜無亜危異やフラワーカンパニーズらとの「対決ライブ」、トークイヴェント「PANTA暴走対談」などで、公開されていたものの、この日、聞くことができるのは“完成品”に一番、近いものだろう。
7月28日(日)、台風一過の東京・吉祥寺のライブハウス「ROCK JOINT GB」で開催されたRama Amoebaとの対決ライブ「頭脳警察xRama Amoeba「69 Paradise」。Rama Amoebaの秋間経夫とはマルコシアス・バンプ時代から“グラムロック・イースター”や“Unti・X’mas”での共演など、旧知の仲だが、意外なことにちゃんとバンドとしての対バンは初めてらしい。なかなか、いい組み合わせではないだろうか。両者の観客は多少、被りつつも微妙に違う。お互いに“Win-Win”(と敢えて使ってみた)かもしれないが、彼らには“一挙両得二宮尊徳”(とはかつて大滝詠一がインタビュー原稿に書き加えたお言葉)が相応しい。
開演の午後7時を10分ほど、過ぎて、頭脳警察が登場する。メンバーはいうまでもなくPANTA(Vo、G)、TOSHI(Perc)、澤竜次(G)、 宮田岳 (B)、樋口素之助(Dr)というお馴染み(という感じに段々、なってきた)のメンバー。いきなり「麗しのジェットダンサー」〜「メカニカルドールの悲劇」〜「プリマドンナ」〜「やけっぱちのルンバ」というメドレーで、頭脳警察の痛快で軽快なナンバーを畳み掛ける。この流れは6月8日(土)に渋谷「B.Y.G」で開催された『頭脳警察 “50th” & B.Y.G “50th” presents ♯3』のアンコールで、体験済みだが、悪たれ頭脳警察の面目躍如だった。それをこの日は敢えてオープニングに持ってきた。予感めいたものがあったが、見事な滑り出しであり、次に披露されであろう新曲に繋がる。
PANTAは9月18日にリリースされるニュー・アルバム『乱破』に収録される新曲と告げ、「だからオレは笑ってる」を歌い、奏でる。同曲は2019年の結成50周年に向け、中継地点の報告として昨2018年9月にリリースされた2枚組ライブ・アルバム『BRAIN POLICE RELAY POINT』に収録されたナンバー。もともとはセカンド・アルバム『頭脳警察セカンド』制作時にレコーディングされたが、お蔵入りとなっていた楽曲で、新作で初めてスタジオ録音ヴァージョンが収録されることになる。47年をかけての落とし前の付け方が頭脳警察らしい。かの「つれなのふりや」が奥底で鳴り響くかのようにレゲエのビートが揺蕩う。
そして「ダダリオを捜せ」が続く。同曲は国際派俳優、PANTAがハリウッド制作のスリラー映画『I’m Not a Bird』(ウィリアム・オルソン監督作品)で共演した主演女優、アレクサンドラ・ダダリオ(「世界で最も美しい顔3位」に選出されている)と、ギター弦やチューナーで有名なメイカー「D’addario」を引っかけて作ったものらしい。 美麗な題材を扱いながらもその音はパンキッシュでハードである。ある意味、破壊的に美しいといっていいナンバーだ。
「戦士のバラード」は度々、演奏され、その度に歌詞は変わったが、今回は最終版になるらしい(リリース後、ライブで変わる可能性は充分にある)。“疲れたら休めばいい 倒れたら夢を見ればいい”という、頭脳警察の戦歴(!?)に思いを馳せれば、とりわけ印象的で、感慨深いフレーズではないだろうか。新たなバラードの傑作の誕生といっていいだろう。
そして、新作のタイトル・トラックとでもいうべき、「乱破者」が披露される。“らっぱもの”と読む。「乱暴者」、「無頼漢」という意味もあるが、戦国時代、武家が野武士や野盗であった者を取りたてて使った「間者」、「忍びの者」という意味があるようだ。PANTAは甲賀忍者の末裔らしい。この辺はNHKに“ファミリーヒストリー”してもらうしかないが、ルーツということもあり、ずっと書きたかったテーマだという。タイトル・トラックに相応しい勢いと活気があるナンバーではないだろうか。
新曲の披露はここまで、後はどの曲が収録されるかはお楽しみというところだろう。彼らはラストへ向け、「ふざけるんじゃねえよ」、「銃をとれ」 「コミック雑誌なんかいらない」という頭脳警察の代表曲を放ち、ステージから消えていく。
50分ほどのステージだが、いまの頭脳警察が凝縮されている。頭脳警察50周年の最終形態が見えてきた。極端な言い方だが、フェスで勝負できるバンドだろう。“伝説”や“不滅”などの冠不要、身一つで赴き、その歌や演奏を披露するだけで、新たな観客の耳目を捉えていく。贔屓の引倒し、欲目ではないが、時代を超えた最新型の頭脳警察は、同時代にあっても最新型である。そして凡弱のバンドにはない深淵と豊穣がある。度々、指摘しているがPANTAはロック界最高の詩人であり、極上のポップスを紡ぐメロディーメイカーであり、世の中に不協和音と光暈を巻き起こす最強のアジテーターである。新生頭脳警察はこの国のロック・シーンを騒然とさせること、必至だろう。新作の発売前後には9月8日(日)、渋谷TSUTAYA O-EASTで開催される「アーバンギャルド Presents 鬱フェス2019」、9月21日(土)、渋谷Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASUREで開催される「頭脳警察 結成50周年2ndライブ」、9月28日(土)・29日(日)に開催される「中津川 THE SOLAR BUDOKAN」(頭脳警察は29日に出演)…など、 ライブやイベント、フェスに出演、全国津々浦々に出没する。

なお、共演のRama Amoebaも強力だった。色鮮やかで煌めく筋金入りのグラム・サウンドで聴く者を魅了する。マーク・ボランの意志を継ぎ、グラム道を突き進む秋間を筆頭に美形ギタリストの吉田ブギー、新加入の長身のクールなベーシストのSHINPEI、ダイナミックでステディーなビートを叩き出す大人の魅力を醸すドラマーの大島治彦という4人が奏でる幻惑の音塊は唯一無二である。アンコールではRama Amoebaと頭脳警察が合体。モット・ザ・フープルの「All the young dudes 〜 すべての若き野郎ども」がPANTA作詞による日本語ヴァージョンを披露された。それはまさに同じ土俵で戦う若きバンドへ向けての挑発と挑戦ではないだろうか。
とんでもないものが歴史から飛び出し、蘇ったーー。頭脳警察をリアルタイムで見れる奇跡に立ち会える、乱破者のロック騒乱罪を目の当たりにする絶好の機会となるだろう。Rock’n’Roll is Here to stay!
7月28日(日)、東京・吉祥寺「ROCK JOINT GB」「頭脳警察xRama Amoeba「69 Paradise」
頭脳警察(PANTA・TOSHI・澤竜次・ 宮田岳・ 樋口素之助)
1 メドレー
麗しのジェットダンサー
〜メカニカルドールの悲劇
〜プリマドンナ
〜やけっぱちのルンバ
2 だからオレは笑ってる
3 ダダリオを捜せ
4 戦士のバラード
5 乱破者
6 飛翔
7 ふざけるんじゃねえよ
8 銃をとれ
9 コミック雑誌なんかいらない
Enc
10 All the young dudes 〜 すべての若き野郎ども

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