見出し画像

マイキー奈良クラブはどう戦い、なぜ敗れたのか 日本一詳しい(多分) 奈良クラブ観戦記

画像2

昨日、武蔵野陸上競技場で開催されました武蔵野シティFCと奈良クラブの試合を観戦してきましたので私的な感想として書かせて頂きます。多分JFLのゲームで日本一詳しいマッチリポートかと思います。とういうかもう少しさくっと書こうと思っていたらなんか長文になって今しました。

待ちに待ちました武蔵野陸上競技場に林マイキー率いる奈良クラブがやってきました。今シーズンはなんとJFLもYouTubeでライブ配信しているので奈良クラブの試合は時々見ていましたが、やはり現地観戦が一番いいですよね。

YouTubeの動画配信はこちらからどうぞ

東京武蔵野シティFC対奈良クラブ
https://youtu.be/ItvdicgNUCI

奈良クラブのサポーターも結構な数が来ていたように感じられました。奈良県人恐るべし。選手が挨拶に来たときも結構な数の拍手が起きていました。自分の前に座っていた男性も奈良クラブがシュート外す度に嘆いていたので奈良クラブのサポーターに違いありません。

そしてなにより秋晴れの小春日和の素晴らしい気候の中の試合でした。ただコロナウイルス感染防止のせいなのか、出店がひとつもなくて、ビールが飲めなかったのが残念でした。

では早速ゲームを振り返って見ましょう。

試合開始早々から奈良クラブが武蔵野シティ陣内に押し込みます。奈良クラブは最終ラインで相手FW(通常二人)に対して数的有利(通常三人)な状況を作り出し、そこからロングボールを入れていきます。前戦にロングボールを納めることのできるFW(13番:坂本 修佑選手)がいるので、そこでボールをキープしたり、ワンタッチで上がってきた中盤の選手に落としたり相手DFラインの後ろに浮き球で出したりして、武蔵野シティFCを押し込んでいきます。

DFラインで数的有利を作り出したり、ロングボールを入れた後にDFラインで「上がれ」という声がけがなされていたので、これが事前にデザインされていたのは明らかです。奈良クラブはロングボールの後で、中盤とDFの選手が素早く押し上げるので武蔵野シティのDFがロングボールを跳ね返しても、そのボールを押し上げてきた奈良クラブの選手が拾って2次攻撃を仕掛けます。そのため、ほとんどの時間帯で武蔵野シティサイドでプレーがなされます。

一方、武蔵野シティFCも攻撃でロングボールを入れてくるのは奈良クラブと同じなのですが、こちらはあまり規則性が感じられず選手個人や選手同士の関係で攻撃を構築しようとしているように見えました。ただあまり有効な攻撃はできていませんでした。時々偶発的に武蔵野シティFCが跳ね返されたボールを拾って、右サイドに展開できていれば奈良クラブに脅威を与えていました。武蔵野シティFCの26番(後藤 準弥選手)はドリブラーで前を向かせて仕掛けられるとかなりやっかいな存在でした。ただ前半の前半はそれも散発的だったので多くのチャンスを作られてはいませんでしたがこの後、この26番 後藤選手が決定的な仕事をすることになります。

試合開始から奈良クラブが優勢で得点は時間の問題と思われていたのですが、前半35分に思わぬかたちで武蔵野シティFCに先制点が入ります(YouTube動画 45分30秒あたり)。

この時も奈良クラブはDFラインで数的有利な状況を作り出しロングボールを入れます。ただこの時は中央ではなく右サイドにパスします。サイドの選手はフリーな状態でパスを受けたのですが(この時、このボールを受けた選手をマークするべき武蔵野シティの選手が、CBの横パスを警戒しもう一人の相手CBへプレスをかけに前進しようとしていたので、このパスの判断は素晴らしかったですね)、そのパスを受けた選手が味方に横パスしたのを、武蔵野シティFCの選手にインターセプトされるような形で奪われてしまいます。

この時奈良クラブの右のCBとSBはボールを保持している選手のサポートに前進している最中でした。ボールを奪われた瞬間、このCBとSBは前にプレスに行くか、後ろに戻って裏のスペースをケアするか迷ったように見えました。

その瞬間、武蔵野シティFCの26番 後藤選手が右CBとSBが上がってできた裏のスペースにスプリントしてます。そしてそれにどんぴしゃりのタイミングでインターセプトした選手が、そのスペースに浮き球のパスを出しました。

奈良クラブの後ろにはCBが一人だけの状態で、PA内で1対1の状況です。ここでCBの選手は縦のスペースを埋めに行ってしまいました。ただ武蔵野シティFCの26番後藤選手は右利きだったので、できれば中のスペースを切って外に追いやり角度が少ないところからシュートを打たせれば、GKが正しいポジションをとればかなりの高確率で失点は防げたと思います。

ただこの場面では縦のスペースをケアしてしまったので、結果的に右に切り替えされてシュートされ失点してしまいました。この時も切り返したCBの股を抜いたように見えました(ゴール裏からの映像はなく確認できてないのですが、GKのニアサイド抜かれているのでCBの股抜きをしないといかないコースではないかと推測できます)。

これで押しまくっていた奈良クラブが一点のビハインドになりました。サッカーではよくある展開ですね。マイキーは前半の前半に味方CBにカウンターに備えてマークを外さないように指示していたのですが、ここでは26番 後藤選手の素晴らしいスプリントと切り返しからのシュートにやられてしまいました。

ただここから奈良クラブの戦術が変更されます。失点するまではロングボールを多用していたのですが、失点後はグランダーのショートパスでビルドアップを構築します。これが選手独自の判断なのか、監督の指示なのかはわかりません。ただ明らかにロングボールを蹴らなくなったのは事実です。

これが1点リードした場面であれば、わかるんです。1点リードしたからボールをきっちりとポゼッションし、カウンターの危険を避け、時間を消費しながら追加点を狙うのはごく普通の戦術です。

ところが奈良クラブはなぜかリードされてからボールをつなぎ始めました。ところがこれがミドルプレスを狙っていた武蔵野シティFCの守備に引っかかり始めます。ボールは前進しないし、相手から攻め込まれる時間も失点前より明らかに増えてきます。ただ前半は両チームとも得点ができずにホームの武蔵野シティFCが1-0とリードして折り返します。

後半は開始から再び奈良クラブがロングボールを多用する攻撃をするようになりました。これで再び奈良クラブが主導権を持つようになります。そしてそこから後半10分に同点ゴールが生まれます(YouTube動画 1時間23分17秒あたり)。GKからのロングボールに武蔵野シティFCの多分SBが奈良クラブの選手に裏を取られて、フリーでヘディングされて武蔵野シティFCのCBとGKの間にボールを落とされます。GKは前に出てくるも奈良クラブの26番 島田選手が先に触れたボールが無人のゴールに流し込まれ、これで同点です。マイキーのガッツポーズにもご注目下さい。

画像2

この時までは武蔵野シティFCの選手もロングボールに競り合って自由にさせていなかったのですが、この時は一瞬裏を取られてマークを外してしまい失点してしまいました。GKがロングボールを蹴ってくるのは明らかだったので、予測して早めにDFラインを下げていれば防げていたと思います。

このあとは一進一退を繰り返すのですが、その中で武蔵野シティFCに勝ち越し点が生まれます(YouTube動画 1時間40分27秒あたり)。後半27分に武蔵野シティFCのGKから蹴られたボールが奈良クラブのDFラインに届きます。それを両チームの選手が競り合いますが、二人とも触れずにボールが裏にこぼれます。ただこのボールには競り合った奈良クラブのDFが先にボールにさわり、シンプルにGKにバックパスを試みます。ここまでは何の問題もありせん。後ろからは先ほど競り合った26番後藤選手が追ってきていましたから安全策をとるのは通常の判断です。

ところがここでそのDFがGKへアウトサイドでパスしたボールがきれいにミートせず、そのDFとGKの間に転がります。それを後ろから追いかけていた26番後藤選手が拾い、相手ゴールの右上の隅に強烈なシュートを決めて今日2得点目を決めました。この失点自体はDFのミスなのですが、このシュートは見事なゴラッソでしたね。

このあとは当然、奈良クラブも前戦に身長の高い選手を投入し、さらなるダイレクト攻撃を仕掛けるのですが、前半ほどうまくいきません。後半の後半にもなると奈良クラブのDFやMFの選手には明らかに疲労の色が出てきて味方のロングボールに対して押し上げができなくなっていました。

そのためロングボールを跳ね返されたボールを前半は面白いように拾えていたのが、武蔵野シティFCに拾われるようになりました。そして押し上げができていない奈良クラブは、相手にスペースを与えてしまい再三危険なカウンター攻撃を仕掛けられます。ここでもあの26番の後藤選手が効いています。そうなるとカウンターが怖いので、更に押し上げができなくなるという悪循環です。追加点こそ与えませんでしたが、武蔵野シティFCに決定的な場面を何回も作られてしまいます。

この時、奈良クラブは前戦の中央に4人の選手がポジショニングしていました。ただ跳ね返されたボールを受ける味方がいなかったので二人を前戦に残しながら、二人は少し後ろにポジショニングしてこぼれ球を拾えるようにすれば、また展開は違っていたと思います。ただこの時点ではもうSBが攻撃参加できるほどの余力も残っていなかったので、それで得点できていたかどうかはまた別ですが、少なくともカウンターを受ける回数は減ったでしょうし、DFラインを押し上げる時間は作れたと思います。

結局、この後はこのまま2-1で終了しホームの武蔵野シティFCが勝利しました。

奈良クラブは前半から非常に整理された戦術で攻撃していました。一方の武蔵野シティFCは攻撃の判断が個々人の選手に委ねられている部分が多く判断に時間が必要で、そこを奈良クラブにプレスをかけられてボールを奪われていました。だから前半の失点するまでは奈良クラブが優勢に進めていたのは当然だったと思います。

ただこの試合では武蔵野シティFCには違いを生み出せる26番 後藤選手がいました。高い技術と強いメンタルでドリブルを仕掛けてくる後藤選手は奈良クラブには手強い選手でした。

一方奈良クラブにはこのようなタイプの選手はおらず、攻撃の戦術がロングボール一本しかない状態で、武蔵野シティFCも苦しみながらも徐々に順応し、防げるようになってきました。できれば奈良クラブにもドリブルで局面を打開できる選手がいればと思わざるを得ませんでした。まぁ、このへんはマイキーも痛感しているとは思います。ただチームの予算もありますし、マイキー就任1年目で全ての選手がマイキーが選んだ選手でもないですから数年かけて徐々にチームを作り上げて行くしかないですよね。

それとロングボールがDFやGKからの縦のボールが多かったので、もう少しボールを相手陣内まで持ち込んで、サイドからボールを入れるとかすれば、もう少し攻撃のバリエーションが増えたかなとは思います。縦のロングボールだと相手DFがボールとマーカーと同一視野に納めることができるので対応することができてしまいます。それにサイドからのボールは相手DFはマーカーとボールを同一視野に納めるのが難しくなり対応が難しくなりますし、DFラインのコントロールもより繊細さを求められるようになります。

そもそも奈良クラブはシーズン当初はDFからグランダーのショートパスを多用してビルドアップして攻撃を構築しようとしていた記憶があります。ただボールは前進するのですが、これがあまり得点につながらなくて攻撃が活性化されているという状況ではありませんでした。

シーズンの中盤辺りからロングボールを多用する攻撃を取り入れ、これが機能していたので、シーズン中に攻撃の戦術を変えたのだと思います。どんなに高尚な理想や戦術があっても機能していなければ勝てません。そして勝てない監督はクビになるのは洋の東西を問わないので、現実的になって戦術を変更したことは理解できます。これがマイキーがやりたい攻撃なのかどうかはわかりませんが。

そしてこの試合でもそのロングボールを用いて試合を優勢に進めていたのですが結果にはつながることはありませんでした。確かに有効なこのロングボールなんですが、どうしてもロングボールだと相手に跳ね返された場合、プレスがかかりにくくなります。なので速く押し上げようとはしていたのですが後半の終盤になると押し上げるのが難しく、カウンターの危険性も多くなります。これはロングボールを攻撃に組み入れている以上避けられない構造的な問題なので、今のままではこの後の試合でも同じような状況が再現すると思います。そしてロングボールを蹴って相手のPA近くまではいけるのですが、そこからは個人の能力に依存するのも事実ですから、このあたりのジレンマをどう解決していくからはマイキーの手腕と補強次第なんでしょうね。

画像3

ともあれいい天気の中、楽しくサッカーを堪能させていただきました。
ほんとサッカーって楽しくて難しいですね。

長文のマッチレポートを最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?