クワガタ。それは妙な生命力を持った生き物のような。

紆余曲折を経て、とまでは言わないけれど、なんだかんだとあって、新曲「クワガタ」が動画も含めて完成の日を迎えた。

思い返すと、半年ぐらいかけて作ったことになる。ファーストアルバムを出した直後に、それへの反省と次回作への欲求があった。

ボブディランにヒントを得た習作をいくつか重ねていて、ドレミファソのコード進行の気持ち良さに新鮮な思いを抱いていた。

わりと完成度を高めていたプロトタイプにはその後の展開がなかったのだけれど、偶然、なんだったかは忘れたけれど、なんかの機会があってけんたろうメンバーのお宅に食事をご馳走になって。そこで出会ったのが、こうたろうメンバーの書いた詩だった。

酔っ払いながら、その場でピアノを弾いて、即興で歌ったのが曲の原型で。でも当時はレコーディングの対象曲の筆頭ではなくて、他に二曲ほど録音しようとしていた折の、ついでというか、保険的なポジションの曲だった。ロングでスタジオを予約したのに、我が家は度重なる家族の発熱に悩まされていて、スタジオ入って2時間も経たないうちに妻から呼び戻されて。

結局、その日、満足に音源を録れたのがクワガタで。

とはいえそれも、完成には程遠い、素材に毛の生えた程度の代物だった。それが、四ツ谷のライブに出ることになって、セットリストの目玉になって、あわてて完成させて、ラップもつけて。

ライブでやったら、オーディエンスの反響が思った以上に強く、なにやら感動していたら、ひさとしメンバーがまさかの動画制作を敢行。

こうして振り返ると、無計画にもほどがあるケ・セラ・セラな制作過程である。でも、決して歩みを止めるわけではない。ファーストアルバムを作ったおかげで、制作過程やかかるパワーにはある程度の見積もできる。なんだかんだ、あれやこれやとやっていると、不思議と到達すべき点にたどり着いたのだった。

それにしても、妙な生命力を持った楽器である。このnoteでも、やれ次回作は楽しいものにしたいとか、元気が出るようなものをとか語っていたのだが、やってみれば確かにそんなようなものになったのではないか。

願わくば、この生命力が羽ばたき、まだ見知らぬどこかの誰かをちょっと、にっこりさせてくれたら、嬉しい。そのためにできることは何か。それを考えるのもまた楽しい。


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