見出し画像

兵庫県で鳥貴族を出店し、飲食店で世の中を明るくすることを実感した時の話

株式会社ダンクは大阪を中心に鳥貴族をチェーン展開していたフランチャイズ加盟会社の一つだった。そして、大阪から新規出店の際に、エリアを変え、2009年4月に兵庫県尼崎市にある「園田」にお店を出店した。

もともとはゲームセンターがあった場所に店を構えることとなる。10年も前の地元のゲームセンターを想像してもらうと分かるように、そこは地域のたまり場だ。前を通るのが少し嫌な感じがする場所でもあった。そちらが廃業となり、タイミングも重なり、駅前の最高の場所をダンクは手に入れることが出来た。

オープニングスタッフにも恵まれ、好立地が後押しし、オープン当初からロケットスタートを切った。(本当に伝説のオープニングだったと振り返る)当時の店長は、この満席がいつまで続くのかと不安になったほど、連日満席が続きに続いた。口コミが広がりに広がり、周りの飲食店の皆さんが脅威に感じて見に来るほどだった。

出店を決めた時、多少なりとも勝算はあった。なぜならば、視察に行った際に当時の園田は、人気のあるお店は少なく、本当に地元の居酒屋しかなかったからだ。「ここでならいけるかもしれない。」狙った通りのことが起きた。

でも、これで世の中が明るくなることを実感したわけじゃない。売上が高く、お店が満席状態にあればあるほど、確かにお客様の笑顔の数は増やすことが出来るが、それは当時のダンクでは当たり前だった。その実感は、数年後となる。

園田の売り上げも軌道に乗り、安定し始めていた。経営者の片岡は、毎年全社員と1時間ほどの面談をしているのだが、たまたま園田店の社員との面談の際、園田の街を訪れ、飲みに行くこととなった。

1件目、ふらっと何気なしに居酒屋に入ろうとした。早い時間だったにもかかわらず、空き席がカウンターだけだという。資料も広げての面談になるため、カウンターでは難しいな。。そう思い、お店を後にした。ぶしつけな感じはなく、感じの良いスタッフさんだった。

2件目、こちらも店内は賑わっていた。なんだか「おや?」という感覚を覚えているという。たった今空いたというテーブル席があり、なんとかテーブル席に座ることが出来た。ようやく面談がスタート出来た。

面談が終わり、気になって鳥貴族園田店を覗きに行った。8割ほど埋まってはおり、賑わってはいる。それでも行列が出来ていた開店当初とは違っていた。続いて、園田の街の居酒屋を見て回った。まばらにしか入っていなかったお店ばかりだった街。それが、どこのお店も、お客様で賑わっていた。その時「ハッと」した。この時、「世の中が明るくなっている」と強く実感した。

この感覚は強烈なものだった。じわじわとこみあげてくる実感。この街にとって、園田で暮らす方々にとって、鳥貴族が出来た意味を強く感じられた瞬間だったという。

仮説であり、ただの実感だ。でも、経営者にとって強烈な原体験だ。

数年前、間違いなく鳥貴族の出店は、園田で飲食店を営む方々にとってはまさに黒船のような存在だった。自分たちの身を脅かす脅威だった。お店で受けたサービス、料理、価値を、きっとお店の店長さんは持ち帰られたんだと思う。このままだと危ない。あれだけの店を作られたら、お客様は殺到し続ける。自分達のお店も、もっと良いお店にしなければいけない。店長さん方は必死になって、サービスを向上させ、お客様を獲得しに来られたんだと思う。結果、これは誰のためになったか?大事なのはここだ。

結果はもちろんお客様のためだ。飲食店は誰のために存在するのか。やはり顧客のためだと言い切れる。その街で暮らす人々にとって、たくさん良いお店が増えたこと。今日はどこに行こうかな。良い店が街に一つでもあれば、「あの店に行こう」となる。選択肢はない。これが「今日はどこに行こうかな。あの店に行きたいな。でもこっちの方が今日はいいかな。迷う!どうしよう!選んで?」なんて言葉が飛び交っているとどうだろう。間違いなく、楽しい。その時間は、幸せだ。その街で食事をとる楽しみが生まれている。地元に戻っても、入りづらいお店ばかり。それでは街は明るくない。価値の感じ方は人それぞれだが、そこで働いているのは「人」で、利用されるのは、暮らしている「人」だ。その「人」にとって、素敵な街にしていきたいんだ。だから出店をして、その地域の皆さんと関わっていく。

この街で、鳥貴族を出店して本当に良かった。この街で暮らしている人は、園田という街をもっと好きになってくれるだろう。園田という街を、少しでも明るく出来たんじゃないか。やってよかった。鳥貴族が掲げる、世の中を明るくするという理念は、実現する。本当にそれを実感した瞬間だった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?