発熱を繰り返すとき③(自己免疫性好中球減少症)

自己免疫性好中球減少症

あまり馴染みのない病名かもしれませんが

感染症を繰り返す病気として、小児科ではたまにあります。

平均生後8~12ヶ月くらいに発症して

3~5歳くらいにはおおむね自然に改善する一時的な病気で、

感染免疫に関わる”好中球”が減少することで

感染しやすかったり、感染症が治りにくかったりといったことが起こります。

血液中には白血球が存在して、細菌やウイルスが体に侵入してきた時に体を守ってくれる

”兵隊”のような役割をしてくれます、
(理解しやすくするためざっくりした言い方になってます。小声。。)

好中球は、その兵隊(=白血球)の一種です。

白血球は、さらに好中球、単球、好酸球、好塩基球、リンパ球に分類されますが

細かい話はさておき

”兵隊”にも陸軍、海軍、空軍など得意分野があって、色々わかれているのと同じで、

白血球も得意分野の異なる色々な種類のものがあるということです。
(※ちなみに大人の白血球は好中球の割合が多いが、乳児期の白血球はリンパ球の割合が多い)

その中で自己免疫性好中球減少症は

「細菌」を相手にするのが得意な”好中球”が低下する病気です。

原因ははっきりしてませんが、乳幼児期のある期間に

好中球に対する「抗体」が産生されて、好中球が減少してしまいます。

これもざっくりとしたいい方ですが、体のシステムが未熟なために

本体必要な兵隊(=好中球)がリストラされてしまうようなものです。

好中球兵隊がリストラされて、数が少ないので

細菌の侵入に対して十分に戦えず、感染しやすかったり治りにくかったりします。

一般的に、

ウイルスを得意にしている兵隊はリンパ球

細菌を得意にしている兵隊は好中球です。

ですのでウイルスの感染の時にはリンパ球の割合が多くなっていて

細菌の感染の時には好中球が多くなっていることが一般的です。

しかし、自己免疫性好中球減少症の患者さんは、

もともと好中球が少ないので、細菌の感染の時でもリンパ球の割合が多くなってしまうために

”細菌の感染がウイルスの感染と誤認されてしまう”可能性があります

ウイルスの感染と思われて、

抗菌薬を使用しせずに様子をみていたら

実は細菌感染で、重症化してしまったケースを過去にみました。

患者さんは好中球が普段少ない状態ですが、感染などの時には一時的に少し増えるので、検査しても一見わからないこともあります。
(それでも通常よりは低いです)

システムの未熟さがあるために、大量にリストラしたにもかかわらず

やばくなると一時的に雇用して対応しようとするようなものです。

そして感染が落ち着くと、またクビにするので

感染がない時には体の中の兵隊はとても少ない状態です。(ゼロに近いこともある)

別の理由で血液検査をして偶然気づかれる時もありますし、

感染の回復期に、通常より好中球が低いことなどで気づかれます。

ただし、この病気の正確な診断は一部の研究施設でしか検査していない「好中球抗体」を測定しなければならないので、診断については専門的で難しいところはあります。

それでも通常の診療で疑うことは可能であり、しばしばスルーされることもありうるので

感染を繰り返す病気の一つとして、こんなのもあるよということで紹介させていただきました(^^)

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