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over the rainbow

20年以上前のこと

僕はバイクで事故をして体中の骨を折り

4ヶ月ほど入院していました。

仕事も辞め、付き合っていた女の子とも別れ、暗い気持ちで毎日を過ごしていました。

なんとか退院し、通院でリハビリすることになってからも、なかなか前向きな気持ちににもなれずに、どんよりとした気持ちで毎日を過ごしていたのです。

そして、事故をして入院した初夏から6ヶ月経った、クリスマスイブのこと。

「なんもやることねえや・・・」と家で1人ぼんやり本を読んだり、音楽を聴いたりして過ごしていたところに突然、仕事先の同僚だった長谷川君から電話がかかってきました。

「ケガはどう?だいぶ良くなった?」

「まぁ、見た目はだいぶいいよ。まだリハビリに通ってるけど」

「あのさ、今日さ、家の近くの駅まで出ておいでよ。せっかくだしご飯でも食べようよ」

別段用事も無かったので近所の○○駅に12時ちょうどに待ち合わせの約束をしました。

でも、そもそも長谷川君とはほとんど口をきいたことが無かったのです。

彼は職場ではかなり浮いた存在で、私の知る限りでは彼と仲良くしていた人は居なかったと思います。変な話ですが、ほとんど口をきいたことが無い私が、一番仲が良かったのです。

12時が近づき、私は身支度を整えて松葉杖でヒョコヒョコ歩きながら駅へ向かいました。

小さな下り坂を下りると、100m先に駅が見えます。

クリスマスイブ、しかも休日なのでたくさんの人が駅前でたむろしていました。

よく見るとサンタクロースの格好をしている人も居ます。

ケーキ売ったり、チラシ配ったりしてんのかな・・・?

Σ(゚Д゚;≡;゚д゚) ハッ!!

アレ、長谷川君や・・・

アイツなんであんなカッコしてんねん・・・まいったな、恥ずかしいな、帰ろうかな・・・でもなぁ・・・

結局、すっぽかすわけにもいかずに長谷川君のもとへ

「あぁ!!北島君、ごめんね、来てくれてありがとうね」

「うん、でもな、この帽子だけはちょっと取ろうや」

彼の頭のサンタクロースの帽子に手を伸ばします

「ダメだよ、コレを取ったら雰囲気無くなるやん!!」

かたくなに拒否。

・・・まいったなぁ・・・てか、もう、どうでもいいや・・・

「コレ、北島君にクリスマスプレゼント」

笑いながら、ラッピングされた大きな四角い箱を白い袋から出して私にくれました。

「ありがとう。ごめんやけど、オレさ、家からぜんぜん出てなくてさ、なにもあげれるものが無いわ」

「いいのよ、私が北島君にあげたかっただけだから」

ん・・・?言葉使いが・・・?

「あのね、私、北島君のこと好きなの」

ェェェェェヽ(゚Д゚;)ノ゙ェェェェ

「いや、突然そんなこと言われても困るわ」

「うん、驚くと思った。私、男の子が好きなの。物心ついた時から。でね、同じような人間はわかるの。北島君と初めて会った時に、この人は私と同じタイプやってすぐわかった!!」

ェェェェェヽ(゚Д゚;)ノ゙ェェェェ

「いや、ゴメン、オレそういうタイプじゃないと思う」

「自分で気付いてないだけよ。ほんとはそうなのよ。私にはわかるの」

Σ(*゚Д`;)イヤイヤ・・・

そこから喫茶店に入ったりして3時間ほど、彼と押し問答。


「また電話するね」

そう言って彼は帰っていきました。

しかし、その後電話も無く、勤め先も辞め、その日いらい一度も会っていません。

そして今、私は普通に結婚し、2人の子供の父親になりました。

長谷川君はどうしているだろう?

自分のプロフィール写真を7色に加工したりしてるのかな?

誰かと幸せに暮らしているのかな?

・・・

まだ、オレ気付いてないけどさ・・・

本当にそうなのか、どうなのかわかんないけどさ・・・

今なら偏見とか無しで、自然に友達として付き合えると思うんだ。

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