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【備忘録②】フマレット2019【ネタばれ注意】

その2です

①はこちら。


【オフィーリアの膝に頭をのせる菊池風磨】

劇中舞台観劇のこのシーンは、菊池風磨さんが普通にかっこよかったな…っていうだけです…わたしの伝えたいことは…

すごいエロエロ台詞シーンなので、ドエロい言い回しだったらどうしよ…って緊張してたんだけど、フマレットさまは、からかい半分なスタンスだった。(まぁそうだよね)

腕で男性器をもしてみたり、とにかく下品。風磨くんの独壇場だった。

【旅の一座の演劇】


テーブルのセットが演劇の舞台にみたててつかわれてた。役者が膝立ててテーブルの上にのぼるんだけど、足が短い人形劇みたいなコスチュームで、ちょうど等身の低いぬいぐるみが舞台にたってるようにみえる。(暇だったら絵にかいて残すわ)

喜劇かな??みたいなキャラクターで、かなり不気味。

登場人物のゴンザゴー(王)は青、バプティスタ(王妃)はピンクに顔が塗られて、王を毒殺する甥は、紫の道化みたいな格好をしてました。(金田一少年の事件簿にでてきたへんな犯人ににてた)

みてて気づいたんだけど、冷静にこの劇って、甥が王を毒殺するじゃないですか。

父と伯父のやりとりを再現しているようで、これってハムレットと伯父の結末そのままなんですよね。(毒殺という意味でいうと)

『なるほど、そっかぁ、ハムレットも同じ様に王を殺すんだよなぁ』とおもって。

ハムレットが興奮しながら劇を見守るその姿と、かれのこの後たどる道が重なって、複雑な気持ちに…(風磨くんの怒りのあまり『死ね』みたいな顔で王を見つめる姿最高だった)

ちなみに、自分のおかした殺人をもした劇をみせられた王の動揺はすさまじくて、『私だったら【ふーん】みたいな顔するのに、この王様素直だなぁ…!!』と思ったり。

そういえば、ハムレットって解釈的にはガートルードもグルみたいな説もありかなぁと思ってたんだけど、『あなた、どうなさったの?』の言い方がほんとになにも知らない愚かな女そのもので、このひとまじでなんも知らんのか!!と思った。

ガートルードって王家に生まれて、自分はただ王のとなりにお飾りとして座ってきた女性なんだなぁ…それってむなしいよね…とかなんとか。なんかすこし可哀想におもったり……

【王の罪の独白】

王が罪を独白するシーン。

いままであんまり気にしてなかったけど、台詞のなかに

俺を殺人に掻き立てたもの、俺の王冠、俺の野心、俺の妃

っていってるんだね…それで『そうか、このおじさんはガートルードのことがやっぱりすきなんだな。罪を犯しても手にいれたくなるほどに…』と思ったわけです。

たぶんガートルードは古い夫でも新しい夫でも別にどっちでもいいんじゃないかと思う。ガートルードは性格がいいともおもわない。でも美人なんだよねぇ~、結局そこかな…わかんないけど。彼女には王冠がセットでついてくるし、そういうこともあって男からしたら彼女の夫という地位が羨ましくみえるのかな…

独白を聞いた感じとしては、愛と野心で勢いで殺人をおかしたものの、王は以外と小心者って感じがしたかな。

【敬虔なキリスト教徒ハムレット】

王が祈りをささげるなか、ハムレットは背後から近づいて短剣をつきさそうとする。

しかし、いろいろな思いが交錯し、結局殺すのをやめてしまう。

このシーンまじでよかった。

王のちょっと猫背でおじいさんっぽい情けない風情と、そんなによわよわしいのに、背後から彼を殺すことのできないハムレット。祈りをささげている、ただそれだけなんだけど、ハムレットの敬虔なクリスチャンな部分が、父は天国にいけるかわからないのに、こいつを今逝かせてなるものか、という気持ちにさせる。

ハムレットって大学できちんとものを学んで、しかしその頭のよさのせいで、こういうときにその時代における正しい選択をしてしまうわけですよ。バカだったらここで殺してるもん。

その葛藤が泣けたよ…


物語だから当たり前なんだけど、ここで王を殺してたらハムレットが愛したもの、ハムレット自身もみんな死なずにすんだんだよね。

そういう『かもしれない』未来を考えると、ハムレットの悩みとか迷いにもどかしさとか、わたしの個人的な『いまだ、やれ!!』という気持ちが上乗せになって、

まじめちゃめちゃせつない。

【ハムレットとガートルードのやりとり】


ハムレットを部屋に呼びつけたガートルードとの、あれこれのやりとり。

この入室から、ポローニアスが殺されてしまうまでの流れは、すごかった。(すごいしかいってない気がする)

まず、ガートルードの態度の悪さよ。ハムレットが部屋にくるまで、ふてくされて、あんまり息子の心配してる感じじゃない。

そしてハムレット…母を椅子に座らせるように突飛ばし、逃げようとするところを執拗に追いかけ…

舞台の裏に幕があって、その後ろにポローニアスが隠れているんだけど、ポローニアスの気配にハムレットは『王だ』と思って幕裏に向かい、殺してしまう。

ハムレットが上手から幕にはいって、下手からでてくる二人の役者。

ポローニアスは右脇腹を刺されて、ハムレットは左頬に返り血をあびている。この返り血が、ハムレットの銀髪と見事にコントラスト…

死んだ相手の顔をみたハムレットの、『よくわかっただろう、うろちょろすると危ない目に会うんだ』と言ったときの狂気…すごいよぉ、ほんとに怖かったもん。

そりゃこの時代、命や土地をかけて人を殺めることは当たり前だったとおもうけど…

人違いで見知った人間を殺して、ここまで冷酷な一言をかけるハムレットは怖かった。全力だったよ、風磨くん…

そして、それだけ冷酷なことをしながら、次第にハムレットから人間的な『申し訳なさ』『不安』みたいな、かれの本来的にもっている優しさや真面目さが演技ににじみ出てくるんだよね…その狂気と全うさの境目をうろちょろする感じが、『あ…うまい…うまいよ風磨くん…』っていう感じ…。

ハムレットは人を殺してを押さえていたものがはじけ、隠してきた父への尊敬や母への軽蔑をガートルードにぶつける。

風磨くんが目をひんむいて責める様は、圧巻だったよ…こわかったもん。

机の上に乗り上げて、母親のことを乱暴にあつかい…観客の背後に父と王の肖像画がある体でそれをガートルードに見せるんだけど、すごいのよ。もう、すごいしか、いえないの。

端的にいうと狂ってる。ハムレットは狂ってるふりをする中で、確実に狂っていく。


そんななか、亡霊があらわれる訳なんだけど、そのときの床に這いつくばって父に懺悔するハムレットの姿もこわいの。ガートルードとおんなじ気持ちだよ。わたしたちには亡霊は見えてるけど、見えててもやっぱりハムレットはくるってる。

でもまぁ、別の意味で圧巻だったのはポローニアスだよね…まじですごいんだけど、胸がまったく上下してなかった。死んでる役すげぇ~

【おやすみなさい】

ハムレットは、亡霊と対面の後心が沈静化し、ポローニアスの遺体を引きずって部屋からでていくわけです。(足をもって、ポローニアスの遺体を見ながら後ずさるように消える)

このとき、ハムレットは王妃に【おやすみなさい】っていうんですよ。【おやすみなさい】これ、ここがねぇすごい。今回のハムレットで最もよかった。

このシーンだけ5億回みたい。


おやすみなさい…。その、優しくて苦しくて純真で子供みたいな…お母さんのこと、ほんとは大好きで、だから許せなくて、そして自分の犯したことすべてを受け入れて決意を固めたんだなってことがよくわかった

きっと母とともに、ハムレットは自分自身にむきあって、やっぱり王を殺さなくてはいけないなと思ったんだと思う。

風磨くんって優しい顔をするときめっちゃ赤ちゃんっぽい顔になるわけだけど、それがこのときの優しくて寂しくて自信がないのかあるのか…そんな不思議な雰囲気に5000000%活かされてた。まじ最高。

この1場だけでさぁ一万円くらいはらう価値があったよ。

実質タダでみれたわ。(?)

私は菊池風磨くんのファンだけど、ここのシーンはきっと風磨くんのファンじゃないひとも同じ気持ちになってくれたとおもう…すごい…🥺

このおやすみなさい、って台詞、最後にホレイショーが亡くなったハムレットを抱き締めながら、おんなじように言うんだよね。おやすみなさい…って。

この作品において、『おやすみなさい』って言葉はこんなにも意味のあるワードだったんだ…!!って驚いた。眠りって、愛なんだよね、母の象徴だと思う。子供を眠らせる母、そんなきもちで、相手に愛を伝えることばが、この『おやすみなさい』なんだね…思い出しても泣いちゃうよ…

ガートルードがさ、ハムレットに『私はどうすればいいの?』って聞くんだよ。そんなのさぁ、母親の台詞じゃないわけじゃん。

ハムレットだって、どうしていいか、どうしてほしいか最早わからない。破滅に向かって一直線なんだよね…

【フォーティンブラスとハムレット】

ハムレットは名誉のために出立するフォーティンブラスの軍勢をみて、【真に偉大なものは、大義がないと動かないものではなく、名誉がかかっているとなれば藁しべ一本にも戦う理由を見いだす人間だ】と気がつくわけである。

ハムレットこのとき黒いコート着てたんだけどめっちゃかっこよかった。上手から下手に移動するから私には背中がよくみえたんだけど、ほんとに…かっこよかったなぁ、広い背中…ごはん、もりもりたべられる…

もうこのときのハムレットは、表情がさっぱりしだしてて、迷ってないんだよね、あんまり。

そうなると、もう死相がみえてくるんだよ…ハムレットに…うう

【オフィーリアの狂気】

オフィーリアの狂いかた、まじすごかった。

最初は黒い布をお化けみたいにかぶってでてきて、舞台後方から客席にむかってかけてくる。それで、小さい子供みたいにかけながら恋の言葉を唱え、ホレイショーにも倒れかかったり、舞台前方でまるまってみて歌をうたったり(バレンタインの歌。めちゃくちゃうまかった。南沢奈央さん、全然くわしくないんだけどいつもはひょっとしてミュージカルにでてる…??)

最終的には下手でひっくりかえって、客席からは布で顔はみえないのに、放り出した足だけがみえてて、泣きながら父のことをなげいて…もうねぇ、かわいそうなの…ほんとに…

狂気の根本はハムレットで、愛がなくなったことを悲しんでいて、でも時折正気に戻って父の死をなげいてるんだ…と思ったら苦しくて…

オフィーリアもこのとき、『おやすみなさい』っていいながら舞台からいなくなるんだよね…おやすみなさいってなんなんだろ…ほんとかんがえさせられる

【裏切りもののデンマークの犬ども】

レアティーズを中心に荒れ狂う民衆とそれに怯える王と王妃のやりとり、ほんとガートルードがクソ過ぎてあきれてしまった。(それくらい上手い演技だったということ)『裏切りもののデンマークの犬ども』って台詞、冷静やばくない??まじでほんとガートルードには感情移入できないわ…

【オフィーリアとレアティーズ】

オフィーリアをみてなきじゃくるレアティーズも結構すごかったけど、やっぱり花言葉を添えながらお花を渡していく狂ったオフィーリアの姿はみていてめちゃくちゃつらかった。

こんなに狂ってるのに…めっちゃいい花言葉…

まじで上手だったから花を配るオフィーリアの顔がみえなかったのがほんとにくやしい。どんな顔してたんだろう…どんな顔で花を配ってたんだろう…うぅ

【オフィーリアの死】

このシーンはガートルードの言葉で伝えられたんだけど、うそだろ、というくらいあまり私の心にこなくて、『可哀想…』より、『死んじゃったか…』という感じだった。

理由は確実にガートルードなんだよねぇ~、ガートルードのしおらしい語りがなんか心にこなくて、『あなたほんとは悲しんでなくない?ね?』という気持ちがすごかった。

レアティーズはめちゃくちゃ泣いてるんだけど、わたしは『安蘭けいのガートルードの悪さ』に飲まれていたので、ひとり疑いの眼差しでガートルードをじっとりみてしまっていた。

レアティーズは上手にむかって泣いてたので真正面だったし、とにかくその泣き顔がすごい悔しそうで、かわいそうなのよ?!

でもさぁ、それでかれもハムレットへ復讐することが確定するかと思うと、ハムレット派としてはなんともいえないよねぇ…。

どちらかというと、私は埋葬のシーンハムレットで、『あっ、オフィーリアやはり亡くなったのね…』じーんときて、『死』を感じたなぁ。

多分、すきな役者によってこのシーンは見えかたがかわるとおもうよ。

みんなの感想もききたいなぁ~


つづく

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