新幹線の車窓から

車窓から外の景色を眺めるのが好きだ。
わたしの知らない街の、知らない人達の日常を少しだけ覗いているような、不思議な気持ちになる。

田んぼには青くなった稲が芝生みたいに見える。
地元の田んぼもこんな感じだろうか。

知らない世界に思いを馳せる。
すんでいる所から少し離れただけなのに、全く知らない地域、全く知らない人達。ここでどんな生活を送っているのだろう。土地が違うだけで、日常は大して変わらないかもしれない。けれど、全く違うようにも感じるから不思議だ。


駅が好きだ。
人混みは苦手だけれど、ホームに新幹線が入ってくる時。大きなキャリーバッグを引きずる旅行客。スーツ姿で新幹線に乗り込む人。これから出張だろうか。あまりにも身軽すぎてこちらがびっくりしてしまう人。子ども連れ。到着したときの音楽。駅独特の雰囲気や周りから聞こえる音。

紛れ込めるからかもしれない。色んな場所からそれぞれの目的があって、今同じ場所に偶々集まっているだけ。ほんの一瞬だけ、すれ違ってそれぞれがまた別の場所へと向かってゆく。何者でなくても居られる場所。目的地に向かうための手段としての通過点。

わたしもたぶん、今はまさに通過点。これかな思うものを探している途中。色んな人にも出会う。この線路の先に何があるかは分からないし、何もないかもしれない。叶えたい大きな何かがある訳ではない。長生きして色んな事をしてやるぞという意気込みも、残念ながらない。それでも、これから先もしんどいだけではあまりにも酷いじゃないかと思うのだ。そう思わないと、やっていけないのだ。


どこかへ向かうときは良いけれど、帰りは苦手だ。元来た道を戻るみたいで、過去の自分に戻るみたいで、孤独感がさらに強くなる。一人座席で涙を堪える。他の乗客は何を思ってシートの背もたれに身を任せているのだろうか。

車窓の外、海が見えてきた。船が見える。釣りをしてるのだろうか、豆粒みたいな人影。鳥が飛んでいる、気持ち良さそうだ。また停車した駅から人が乗り込んできた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます! 泣いたり笑ったりしながらゆっくりと進んでいたら、またどこかで会えるかも...。そのときを楽しみにしています。