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しっくり、すんなり、しっとり


しっくりくる場所を探している。

自分の家の話だ。小さな部屋だったけれど、ここが落ち着いて居られるという場所がなかなか見つからないまま、今の部屋に住んで4年が経とうとしている。来月でこの部屋を離れるので、しっくりポイントが見つけられないまま退去の日を迎えてしまうのではないかと思っている。

まだ退去の日まで時間はあるのだけれど、片づけられるものはどんどん片付けてしまおうと思い、部屋の中の荷物が少しづつ減っていく。さすがにこの部屋に引っ越した当初まではいかないけれど、タイムリープしているみたいな不思議な感覚がする。


昔、吉本ばななさんの「キッチン」をひたすら読んでいた時期があった。みかげちゃんのしっくりポイントがキッチンだったように、いつかわたしのしっくりポイントも見つかるといいなと思う。わたしも台所(キッチンと言い慣れていないので)は家の中で好きな場所だ。今も好きだけれど、昔の方が何も考えずに台所に居られた。台所から聞こえる音は、結構気持ちを落ち着かせてくれる。同じ空間に誰かが居る感覚が、安心感をくれるのかもしれない。

場所もそうだけれど、言葉にもその人にとってのしっくりくる言葉があるのではないかと思っている。同じようなことを言っていても、言い方が違うだけですっと心に入ってきたり入ってこなかったり。その言葉がすんなり自分に入ってくる"時期”があるのだと思う。何度同じことを言われても、その時の自分には受け入れられないこともある。逆に言葉を変えただけで、すんなり心に入ってきたりもする。

その時の自分にしっくりくる言葉を、その時その時、大切にしたいと思う。雨の日が続いて、空気がしっとりしている。正確に言えばじっとりの方が近いけれど。部屋の中で聞く雨の音も好きだ。しっくりくるものは、見落としているだけで、もう既に自分の周りに集まっているのかもしれない。


最後までお読みいただき、ありがとうございます! 泣いたり笑ったりしながらゆっくりと進んでいたら、またどこかで会えるかも...。そのときを楽しみにしています。