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ぬか床

週に2回、ぬか床をかき回す当番になっている。

何でも漬けていいよと言われたので、美味しいと教えてもらったアボカドと間違いないカブをぬか床に埋めた。

そういえば昔読んだ小説に、彼氏と別れて手元に残ったのはぬか床だけという話があったのを思い出した。ぬか床って、なんとも言えない味がある。ぬか漬けの味もそうだけれど、ぬか床と共に生活する感じが、「生活してるな」と思わせる。


そういえば、わたしが気に入る映画や小説はたいてい、「生活」を感じさせるものが多いなと思った。使い込んだ台所、何でもない会話、同じような日常の暮らしの中の小さな変化。子どもの頃日曜日に観ていた戦隊物でも、アクションシーンよりその前と後の方が好きだった。ぱっと見では単調なものに惹かれる。単調でも、そこに何か小さくても変化があるもの。そういうものに、グッとくる。


他人の生活に憧れを抱くこともある。逆に他人から見た自分の生活は、自分の思っているものとは違く見えるのだろう。自分の重ねてきた生活も、他人の重ねてきた生活も、毎日を繰り返して積み重なって"今”になっている。地層みたいに、積み重なっての今の自分。

地盤を固めたいと思う。わたしの地層の下の部分は、ちょっと不安定だから。単調ばかりで飽きてしまったときは、予告なく突拍子もないことをするかもしれない。それはそれで面白い。何でもない日常があるから、突拍子のなさが2倍か3倍くらいになって、面白おかしい、いい味を出してくれる。変凡な日常に突然変化が訪れて、アクションシーンがより面白くなるみたいに。


ぬか床のアボカドとカブは、どうなっているだろう。そんなに簡単にはいかないことは分かりつつ、わたしもぬか床に漬かって一晩くらい寝かせたら、いい味が出るといいのに。






最後までお読みいただき、ありがとうございます! 泣いたり笑ったりしながらゆっくりと進んでいたら、またどこかで会えるかも...。そのときを楽しみにしています。