シンギュラリティ論を抑えた進路指導を

 こんばんは、PARADIGM平良です。本日は「シンギュラリティ論を抑えた進路指導を」というタイトルでお送りします。

 シンギュラリティとは、人工知能が発達して人間の能力を越え、人間の生活に大きく影響を与えるとういう概念を指します。よくAIが発達したら人間の仕事は奪われるっていいますよね。つまりは、それです。そして、シンギュラリティ論とはシンギュラリティによる楽観論と悲観論が論じられている背景そのもののことです。

 今回はなぜこのテーマについて取り上げたかというと、多くの大人が子どもの夢に対して以下のような指導を行うからです。

「◯◯の仕事は近い将来AIに仕事を奪われるから辞めておいた方がいいよ」

 これは、学校の先生や塾の先生、はたまた保護者や身近な大人までもがそういう風に言います。

 これはある程度しょうがない部分があります。メディアが日常的にその将来を煽っているので、無意識的に影響を受けているのだと思います。しかし、私は安易にその予測を用いてアドバイスすること自体は反対なのです。理由としては2つあります。

①子ども達がせっかく自分で見つけた将来を否定して欲しくないという理由
②大人がメディアの情報をそのまま鵜呑みにして、伝達してしまう軽率さを露呈しているからという理由

 ①の理由が基本的には強いです。確かに現実を教えることも大切です。しかし、そもそも大人がきちんとしたキャリア教育を施せていない現代社会において、子ども達自らが発見した目標を否定するのは何だか無責任に感じます。何よりその与えている情報が不確かなのです。

 そして②に関しては、大人達が特に勉強もせず無意識・無自覚的にアドバイスすることは実に軽率的な行為だと思います。

 上記で与えている情報が不確かだと述べましたが、正確にはシンギュラリティに対する否定的な意見もあるということです。「AIによって多くの仕事が奪われる」という言説が流布していることは確かです。ですが、実は自らを改変しさらに良いものを生み出す人工知能というのは、現状の技術ではどうやって作るのか実効性のある解は見つかっていないと述べる専門家もいるのです。

 国際的な人工知能論文誌の編集長は、国際会議で“The Singularity May Never Be Near”(シンギュラリティは決して来ないだろう)という題で講演を行ったそうです。このように、実はAIに対する極端な未来像に対して、否定的な意見を持つ専門家は多いのです。

 つまりは、素人の勉強不足な知識を与えて子ども達に絶望感を味合わせるよりも、二項対立する意見を踏まえたアドバイスをする方がよっぽど健全に思えるのです。あるいはそのような科学論争を提示することで、改めて子ども達に思考実験させるぐらいの教育の方が有益にみえます。

 シンギュラリティに対する楽観論者に対して悲観論者もだまってはいません。個人的な見解としては、悲観論者の論の方が説得力ありそうな気がするのですが、専門家ではないので私自身ももっと勉強が必要です。私の答えとしては「中庸」をとります。AIによってかなり簡略化される仕事もあるとは思いますが、生命性のある仕事全てがAIにとって代替されるとは考えにくいと勝手に思っています。

 科学的な予測を完全にできる存在はラプラスの悪魔のような存在です。少なくとも学校の先生達はラプラスの悪魔ではないはずなので、反対論を踏まえた議論をすべきだったでしょう。

 大人がすべきことは否定ではなく、これから起こり得る技術の進歩や変革を正しく理解し、どう向き合うべきなのかどう活用できるのかどう共存できるのかを吟味して子ども達に伝えるか、子ども達に問題提起することだと思います。シンギュラリティ論を抑えた進路指導を。

平良

 

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