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東南アジアの医療

昨年度まで理学療法士として病院で臨床をしていた塩見幸菜さん。もともと海外の医療現場や、障害者スポーツなどに興味を持っていたようで現在は世界各国を回って自分の目でその状況を学んでいます。今回は東南アジアの中でもベトナム・東ティモール・ラオスでのレポートを掲載します。興味のある方はぜひご覧下さい。

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①ベトナム
ハノイ、ホーチミン、カントーの病院を訪問し、施設見学・リハビリ見学をさせて頂いた。

【ベトナムの医療について】
・急性期→回復期→在宅
・急性期リハの制度が不十分で慢性化してから来る患者がいる。
・自宅へ退院し、もう一度回復期に入院可能。
・なかには5年後に再入院する人や1ヶ月入院し、10日間在宅で生活し、再度1ヶ月入院するような人もいる。
・病院と地域の連携、地域でのリハビリが少ない。
・家族による介入が強く、過介助により患者の自立度が上がりにくい。
家族が歩行練習や食事介助をしている。
・手洗い等の感染対策が不十分

【多い疾患】
・CVA、バイク事故による頭部外傷や整形疾患
・最近は食文化の変化により生活習慣病が進んでいる。
・若い世代での生活習慣病がベトナムでは増えており、糖尿病による切断患者が多い。生活習慣病に対する予防が不十分である。

【理学療法の現状】
・理学療法の治療プロセスが不十分である。
・評価が少なく、家族情報・環境等のバックグラウンドの把握が不足している。
・評価の必要性の理解が不十分。
・ベッド上での運動が多く、活動に繋がりにくい。
・リハビリ環境が整っていない施設がある。ベッドのみで高さ調整できない等。
・家族による介助が多すぎる。
・病院→地域の繋がりが少ない。
・学生が常にいる。PTが増えてきた。
・義足や装具もあるがPTが評価することはなく、個別性がない。

【病棟】
・自立に向けての環境ではない。
ベッド配置、家族の介助。

【課題】
・リハビリ環境の不十分さ
・理学療法プロセスの不十分さ
・地域との繋がりの不十分さ

【日本のPTさんの今後の方針・目標】
・客観的指標のある評価表を作成する
・現地のやり方があるため、こちらが指導するではなく、共に考え、よい方法を提案していく。
・ここのセラピストだけで評価・統合やリスク管理、治療の組み立てができ、活動に繋げる。

②ラオス

1ヶ月半、『NGO アジアの障害者活動を支援する会 ADDP』で活動させて頂いた。

【ラオスの障がい者の現状】
ラオスでは、障がい者のほとんどが農村地帯の貧困家庭出身であり、教育へアクセス不足や環境整備の不正により、多くの障がい者が教育を受けにくい。そして、教育や働く場を持てず、家に閉じこもりがちになる傾向がある。
それに加え、職業訓練施設は少なく、自立した生活を送るための訓練ができず、働く場が少ない。障害者スポーツの認知度が低い。

【ADDPの活動】
・障害者の就労支援や障害者スポーツの振興を行い、障害者の自立を目標とした活動をしている。
・パラスポーツやユニバーサルスポーツの普及活動、選手の発掘を行っている。パラスポーツは競泳、車いすバスケ、サッカー、パワーリフティング、陸上等。
・ユニバーサルスポーツは講習会やイベントを開催し、地域の健常者、障害者問わず人を集い様々なスポーツの普及をしている。
・就労では身体障害者、知的障害者の方たちがお菓子やパンを作り、聴覚障害者がカフェを運営している。

【パラスポーツ選手への関わり】
・コーチやトレーナーの不足により、選手のパフォーマンス向上が得られにくい
・スポーツ選手の育成活動やトレーナーの育成活動として、水泳選手・陸上選手・パワーリフティング選手のケアやトレーニングのアドバイス等をさせて頂いた

【今後】
・ASEANパラや東京パラに向けて、選手に関わらせて頂く。その後もパラスポーツやユニバーサルスポーツの普及に携わる。

③東ティモール

CBRの活動見学

【活動内容】
・現地の調整員、PT、日本のPTや保健師が山奥の集落を訪問し、病院に行けない村の住民のリハビリや生活状況、物資の提供、障害者の発掘を行う
・村の地域リハと町の病院との連携で病院へ行くことの啓発や、車イスの採寸を行い車イスの提供や薬の提供をしている
・15地区を3ヶ月のルーティンでまわっている

【現状】
・村の人はずっとこの地に住んでおり、今の生活で困っていると思う人が少ないため、病院に行く人が少ない
・病院に行くことの啓発も行っているが実際、すごく険しい道のりのため病院に行くのが難しい
・村では集落での生活のため、親近者同士で結婚し子どもを出産するため、障害を持って産まれる確率が高い。また、自宅での出産等で助産師がいないため、障害を持ちやすい。

【疾患】
疾患は小児麻痺や知的障害、生活習慣病など

【日本のPTさんの活動】
・現地PTへの技術指導
・現地のPTは主にマッサージだけで評価や効果判定がない。
・評価の必要性を伝え、評価用紙を作成し、定期的に効果判定をしている。
・家族へのリハビリ、生活指導

【月1の研修】
・毎月1回、各集落の代表が勉強や情報共有のために研修に参加している
・医者やPTからの講習など
・村の代表者は障害者の自宅に訪問し、生活の把握やリハビリをされている
そのため、ストレッチやマッサージの方法を習得しようと意欲的である
・各村から村の障害者の状況や新しい障害者の情報を共有する


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