四国八十八カ所に行ってきた①


久方ぶりの更新。
忙しいを言い訳にする。


実は31日から3日まで、中高の友達と四人で四国八十八カ所を巡礼してきた。
うち一人が今年で大学院を卒業し、春から晴れて日産ゴーンに就職なわけで、卒業旅行に付き合ってくれというのである。

二年半ぶり、二回目の巡礼だ。


もちろん僕らは水曜どうでしょうが大好きだ。
苦しみながら回らされる大泉さんとは打って変わって、能動的に回るのが我々。
まああるじゃない。
やってる最中は苦しいし理由はわからないし、終わったときは「二度とやるもんか」と思うけど
一年経ったあたりから「あれ、もう一度行きたいなぁ」って思い出すイベント。
ライブとか、受験とか、部活とか。


そもそも四国八十八カ所とは?

かつて弘法大師(空海)が修行のために四国を歩いて周り、各所で寺に滞在したり、建立したりしたそのゆかりの地を、のちに八十八カ所定めたものである。通常は徒歩で一か月以上かけて回り、自分を見つめなおす修行を行うのが趣旨である。空海は讃岐出身なんだそう。全行程約1300km。
お遍路には袈裟、菅笠や錫杖など必要な仏具を装備して回るのが通常で、手水場で手を洗い、本堂で参ってお経を読み、大師堂で同様にするのが作法である。

水曜どうでしょうでは試験に出るどうでしょうという企画の一環で行われた。テスト勉強をし、最終テストで不正解があった場合、大泉さんが受験生のために合格祈願を八十八カ所回るという企画。


二年半前にいったのは僕らからしたら八十八カ所巡礼であり、水曜どうでしょう聖地巡礼であった。

今回はしかしなんと
三泊四日という超弾丸スケジュール。
単純計算一日400km。
時速60kmでも7時間弱。もちろん山ばっかりなので60kmでいけるところの方が少ない。国道県道も多いし。
初日は飛行機でいくから到着が12時すぎ、高松駅に一人くるから合流してスタートが13:30。


真っ先に昼飯。

香川の昼飯といえばうどん。
一軒目は
「しんせい」
長崎に住む友人の上司の紹介。
もちろんうまかった。
こしが絶妙。しかもタコのから揚げと鳥からをサービスでくれた!なんと!釜あげうどんが面倒くさいから提供できないってわがまま言われたしそりゃそうか。お揚げがサービスなのも驚いたな。あと唐辛子。独自の練り唐辛子でちょうどよい辛味だった。

満足して一寺目。
実は二年前は逆うちの年だったので88番から巡礼した。正当に一番から始めるのは今年がはじめて。

15:00
一番 霊山寺
雨。
最悪のスタート。
本日の予定は24番最御崎寺まで。
23時までに旅籠屋にチェックインできれば車中泊決定。
鬼の形相で回る我々。

本当はよくないんだけど、駐車して、仁王門で礼をして、写真を撮って、車に戻る。
これの繰り返し。本堂まで行っている時間などない。

といいつつ一番は本堂にお賽銭、おみくじを引く。
中吉、大吉、吉、末吉。
全部の吉が終結した。

引いたおみくじを車内の取ってに巻き付けてる間に二番。
香川はほとんどすべてが密集しているので乗って一曲終わる前に次の寺になる。
しかし問題。
すべての寺でミニ三脚にカメラをセットし、10秒タイマーで写真を撮っていくのだが、なんと雨のせいで10秒のうちにピントがずれ、何度も撮り直すはめに。不運。カメラも濡れるし。服も濡れるし。いちいち撮れたか確認しなきゃいけないし。

あと買った菅笠がちょうど生え際ぐらいにトゲみたいなのあってすごく痛いし車内ですごく場所とる。うっとうしいったらない。ただでさえ山道を走れるようにと小さい車なのに。

ついてないことが重なる。
8番ですでに
「あぁもぅいやだ。もぉ。」
と嘆いているのが思い出される。


さて、最初の難所が10番切幡寺だ。
山である。
以上。

四国の難所はおおよそ

駐車場から歩く
駐車場までの道が住宅街で細すぎる
のいづれかだ。簡単に言ってしまえるがこれがまぁ泣かせられる。
山は当然カーブが多くてスピードはでないし、道が細いからすれ違いとなるとどちらかが下がったりしないとならない。後部座席なんてのは狙いの的でみるみる気持ち悪くなっていくのだ。携帯もいじれないし、寝るに寝られない、歌うか耐えるの二択だ。
駐車場から歩くのも最悪だ。往復40分あるところだって用意されている。山の上なために車でいける限界が早いのだ。
道が細いところもバンバンでてくる。今回最大の細道は壁と車の幅3cmだった。ひやひやした。脱輪しそうだったし。

これを耐え忍んでいくのが修行なのだろうか。

続けざまに11番藤井寺がくる。
そしていよいよ序盤最大の難所と言われる寺がくる。

12番焼山寺だ。
これがとんでもない暴れん坊。
前の藤井寺から43km。距離もさることながらその半分くらいが山道なのだ。
我々が昇り始めたのが17時過ぎ、気づけばあたりは真っ暗になり、ハイビームにしても物足りない闇。ライトを消したら前も後ろもわからなくなる。そのくせだんだん道が土まみれになってきたなと思っていたら、気づけば雪が降ってるではないか。土に見えたのは雪が積もってるんじゃないか。
そして駐車場について唖然とする。

銀世界。

とんでもないところに来てしまった。

そしてさすがは難所の焼山寺、駐車場から仁王門まで片道10分弱。
スマホのライトだけを頼りに男四人手をつないで仲良く歩いていく。おびえながら写真をとる。入口でも写真を撮ったが、戻ってきたとき、そこでポーズに試行錯誤した足跡を見つけ笑った。一瞬笑って、すぐ脅えた。全く夜が暗すぎる。

そしてここでプチイベント。
西野七瀬卒業コンサート楽天チケットの当落発表だ。
これが終われば一般発売。もうほぼとれないといってよい。
四人中三人が応募。一人はすでに三日目のライブを当てている。西野七瀬の卒コンは四日目のみ。
まずは私。

開票。

厳正な抽選の結果。残念ながらチケットを用意することはできませんでした。
「あああああああああああああ!!!!!!」

次は長崎住まい。

開票。

厳正な抽選の結果。ご希望のチケットをご用意することができました。
「あ。」
「うわあああああ!!!!!!!」
「ええええええええ!!!!!」

当てやがった。卒コンを。しかも二枚!
「彼女といくのかよ」
「そう」
「くっそ!!!!!!」
なんでこいつなんだ。俺の方が西野七瀬への思いは強いはずなのに。

最後におばかのっぽくん。

開票。

厳正な抽選の結果。チケットをご用意することができませんでした。
「はああああああ。」


こうして最悪な焼山寺は最悪に拍車をかけて幕をとじた。


逃げるように焼山寺をあとにし夜飯の相談をしながら大日寺へ。

その後14番常楽寺で友人が転ぶ。
車までの坂道を走るノリになり駆けていったら突然ズアァァッ!と音がし、車の後ろにある溝に頭をもたげる形で友人が倒れた。暗がりのせいで友人の頭がみえず、一瞬「死んだ」と思った。呪われたと。本人もあとで「頭が割れたと思った」そう語っている。
しかしよくみると倒れているだけで、特に頭は怪我なし。
今日一日いそいそと礼もせずに寺を回って、焼山寺でそそくさしてしまった我々におしおきがくだったのだ。
「俺だったかぁ・・・。」
転んだ友人の悟った一言を忘れない。引きずっていた足は、よくみたら血がでてた。


そして

17番井戸寺を回って事件は起こる。



「今から旅籠屋に向かって間に合うのか?」
一人がそうつぶやいた。
「(・・・・いや、さすがに間に合うだろ・・。)」
この時点で時計は20:10。
「・・・2時間30分。」
「「「!!!!???」」」
ということは今からホテルに向かったとしてちょうど23時。いや、下手したら間に合わない可能性すらある。

「どうする?」

むなしく響く決死の問い。
黙りこくる我々。

「いや、全部回るか。あきらめてホテル向かうか。」
「明日朝戻ってくるってこと?」
実際行くはずの19番あたりからホテルまでは100km近くある。朝戻ってくるとしても2日目の行程が大幅に押しかねない。
「とってる旅籠屋をキャンセル料払って、近場に別のホテルをとるとか。」
「いや金ないだろ。」
「漫喫?」
「ないだろさすがにこのへん。」
「・・・・」
誰にも当たれぬイライラが溜まっていく。
「いや、俺は回ってもいいよ。」
「え・・。」
「あ、じゃあ二人宿に残して、二人が寝ずに回ってくるっていうのは。一回チェックインしちゃえばいいわけだし。」
「いや、その時二人ホテルに残れるか?」
「んん。・・・。」
「終わったときに、俺たちは全部回ってるって思う二人でないか?」
「うう・・・。」
全員、全部の寺を回りたいのだ。ただ、徹夜して、初日に徹夜して運転できる自信もないのだ。ましてや後部座席ならいいが自分に白羽の矢が立ったとしたら。
そして何より初日が思っていたよりダメージのでかい日だったのだ。
雨にぬれ、写真をとるのも苦労するし、体も冷えるし、そこにとどめを指すような戦慄の焼山寺。心は折れかかっていたのだ。
「もう飯は吉野家でいい?」
「いい。」
「入れ。」
「よし。」
店内では、袈裟を脱ぐのも忘れ呆然と飯を食べる四人。人生でこんなに疲れておいしくない吉野家は後先ないだろう。
「旅籠屋向かうか。」
「んんー、でも。」
踏ん切りのつかない押し問答の繰り返し。四人とも気づかぬうちに会計を終え、意識なく車にのり走り出す。
「・・・。」
そして一番小さいあいつが言う。
「いやあ俺はもうあきらめていいと思うなぁ!今日きっぱり負けて、明日からリセットして勝ちにいかないと。今日の残しても結局明日にしわよせいくだけだしさ!」
今日は負け。明日勝つ。あっけらかんとこいつが言い放った明確な敗退宣言に全員はようやく納得した。この納得は本当にタイミングが一致だった。あぁ、もうこんなに笑ってそういうやつがいるなら、もう負けたんだ。認めてるもんな。疲れて眠るような決断だったな。

こうして我々は初日21時前に敗北を期し、六個の寺を秘密裏にすっとばしたのだ。

チェックインは遅れるかもしれないと宿に交渉。「困るなぁ」と言われつつも小さいあいつのネゴシエーションでなんとか部屋の鍵をあけておいてもらうことに成功、ありがとう旅籠屋。

そんなこともあったが無事23時には到着。
しんどい。疲れた。厳しい。あー。
そんな言葉を吐いて捨てるほど出して初日がなんとか終わったのだ。

煩悩の塊で
文句の鬼だ。
修行なんてまだまだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?