流しが増えたほうが街は面白いはず!

私はプロを志して、音楽をやってきました。

青春時代は

音楽を聴く時間も足りないし、練習する時間はもっと足りない!

というくらいに音楽と触れ合ってきました。

世間の心理、流れはなどに鈍感でした。

流行り廃りも構わず自分の趣向に埋没していたからです。

幸い音楽業界に私の個性を認めてくれる人がいたから

目をかけてもらえ、プロになれました。


さて、オリジナリティを求められるのはプロになるまでで

プロになると今度は売上を求められます。

チャンスの数は資金源のキャパシティによりけりで

まず赤字が続けばプロ契約の終わりは早くなります。

といってもこちらは一生懸命に作り

ステージを務めていくし、所属事務所もレコード会社も

プロモーションのために骨を折ります。

ただ、どんな過程があっても

会社がよほど好景気でない限りは、良し悪し好みを問わず

やはり数字で判断していくしかないのだと思います。

基本はできるだけ売れるものを売るのです。

私も売れそうだったから、お金をかけてもらったと思うし

実際に売れた作品もありました。

だからこそ「売れ続ける」といのは並大抵でないことがよくわかります。

身のまわりの人に「その歌いいね、買うよ」と言われて売るような

足し算の商売ではないのです。

一つの仕掛け花火を成功させるために

人が人を説得し動かし、奔走に奔走を重ねなければ

全国津々浦々に商品がいきわたることもないし、

その音が人々の耳に入ることもありません。

音楽家はなかなかここに関わることはできず歯がゆく見守ります。

音楽家を連れてプロモーションにいくのだって大変な費用がかかります。


掘り出すと話はどんどん長くなってしまいそうです。

詳細はエピソードゼロの方で詳しく語りたいと思います。


さて

私が亀戸で流しをはじめたとき、一番感激したのは

世間で歌が驚くほど愛されている、という事実でした。

亀戸の飲み屋街は、特別な音楽の街でも何でもない弱冠ディープな下町。

まさに世間です。


私は

どうしたらヒットするのか?CDは売れなくなっちまった!

指をくわえて悶悶とし、音楽すべてが衰退している!

そんな気分になっていたところでした。


しかし

それを嘲笑うかのようにあっけらかん歌を楽しむ亀戸の人たち。

ただ歌を楽しむ人たち、と、それを提供する流し、

今思えば、当たり前で、シンプルな構造です。

流しを始める前に、これは果たして成り立つのか?

など懸念したことさえバカらしくなるほどで、

これを二十歳くらいからやっていれば達人になれたはず!

くらいにまで考えました。


かつてはあらゆる街に流しがいて、生演奏していた。

カラオケがどんどん出てきて流しが廃れた、と言われるが

廃れすぎでしょう!全然いない。

20年後を考えてみますと、

流しを知っている人はほとんどいなくなるでしょう。

お店で生演奏をしようと思ったら

もう得体の知れない存在になってしまいます。


亀戸のある店主は「歌が嫌いな人なんていないんだからさ!」

と、言いながら自ら流しにリクエストをしてくれるのでした。

私も歌を愛する者として、決まった場所だけでなく

「どこにでも」歌が溢れている社会がいいと思っています。


こんなに歓迎されるなら、流しはもっと多くいた方がいいんです。

この「流しの仕事術」で、こんなのアリかも?

音楽家から流しを始める人が出たり、

お店の方で流しを求めるようになったりで増えるはずです。

そう、この本は、まず流しを復活させるための布石です。

続く



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