パフォーマンス「パサレラ〜小夜鳴き鳥の声がする」について

仮屋浩子(DAYA)

「パサレラ」とはスペイン語でファッションショーのランウェイを意味する。原案者のパトリシア・アリサ(コロンビア)は、ランウェイの枠組を踏襲しながら、身体が商品化され客体化されるに等しいファッションショーを逆手にとり、あらゆる女性が声をあげられる場となるような、非日常の変幻自在な空間の創造に焦点を定めた。コロンビアの平和の実現を目指し、十年以上にわたり「パサレラ」の上演は続いている。

さて、私たちDAYAが「パサレラ」の枠組を用いて、このパフォーマンスのテーマに据えたのは性被害である。副題につけた「小夜鳴き鳥...」は姉妹ピロメラとプロクネの神話から援用した。義兄に強姦され舌を切られたピロメラは、のち神々によって小夜鳴き鳥に変身させられたという。

メンバーの大半が性被害の当事者、もしくはそれに近い存在であることから、それぞれの体験を言語化し、皆で読み、聴くことから作品創作は始まった。共感。辛くも貴重な時間であった。その後、稽古場で言葉は削ぎ落とされ、熟していき、仲間の身体、声をとおして空間をみたしていく。

ランウェイで語られるのは、酔った勢いで同意のないセックスをした友達の噂をする女子大生が、社会人になり同じような経験をすると、それをなかったことにしようとする話、子供の頃大人の男性から受けた性被害の記憶がフリーズ、でも自分の身体に何が起こったのかを知りたいと思う女性の話、職場で上司から受けたセクハラで逆に訴えられた話、電車の中で白いねばねばした液体を引っかけられた話、夜道いきなり襲われた話、夫からDVを受けた女性が持ち続けた希望、十代の頃年上の男性からセックスを強制された男性の話など。証言としてそのまま語るのではなく、被害の背後にある既存のシステムを示唆しつつそれを部分的にメタファーにしながら、舞台という非日常空間をとおして私たちのことばは受肉された。

世の中には同じような体験をしても、恥ずかしいと思ったり、なかったことにしなければと思う人がいるかもしれない。自分が被害者であると気付いていない人、もしくは自分が加害者であると気付いていない人もいるかもしれない。

私たち小夜鳴き鳥の声が多くの人たちの耳に届き、性暴力のない社会構築のための一歩につながりますように。そしてあらゆる分野でのジェンダー平等が早く実現しますように。

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