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官民連携で“もっと”市民協働:公園における市民協働の実践 #04

前回までは、市民と行政の関係をベースに西東京市における市民協働の取り組みをご紹介してきました。一方で、公園をはじめとする公共施設の管理運営を、民間事業者と連携して行う取り組みも増えています。中でも広く定着しつつあるのが「指定管理者制度」と呼ばれる仕組み。西東京市の公園でも導入されていますが、そこでも主眼にあるのは市民協働の推進です。
今回は、市民協働推進のための指定管理者制度の活用とはどのようなものなのか、「市民協働推進型指定管理者制度」について西東京市の取り組みとともにご紹介していきます。

そもそも、指定管理者制度とは?

指定管理者制度は、公共施設の管理・運営を、行政に代わって民間の企業や団体が行うことができるというもので、地方自治法で定められている制度のひとつ。総務省の記述には以下のようにあります。

民間事業者等が有するノウハウを活用することにより、住民サービスの質の向上を図っていくことで、施設の設置の目的を効果的に達成する(総務省「指定管理者制度の運用について(平成22年12月28日)」より引用)

指定管理者制度の効果として期待されることは、公募による事業者選定となるため競争原理が働くこと、民間のノウハウが活かされることでコスト削減や市民サービスの向上を図れることです。また、単なる価格競争による入札とは異なり、公共サービスの水準をしっかり確保できる事業者を、議会の議決を経て指定するため、民間活力の導入によって創意工夫がある公園の“経営”が期待できます。

高井さん:指定管理者制度を導入していても、業務委託の延長になってしまう場合があります。しかし実際には「管理の代行」であり、公園管理者としての権限が与えられています。役所は報告を受けて、募集要項等に基づいた事業計画書を踏まえて、きとんと事業をやっているかどうかをチェックします。そして相談やアドバイスをすることはあっても、指示はしません。どう管理運営するかは、指定管理者が自分たちで考えるのです。その上で、西東京市では“パートナー”として、協力して市民協働などを推進しています。

実践10:指定管理者を「エリア」で導入、53公園を一括管理

指定管理者制度は、比較的規模の大きな公園単体で導入をされるケースが多いのが現状です。しかし、住宅地に小規模な公園が多数点在している西東京市では、一定の“エリア”に対して指定管理者制度を導入し、53公園を一括管理しています(2018年5月現在)。それも市民協働を推進しやすくするため。

高井さん:エリア全体を包括的に管理することで、公園をキーワードにした街づくりや、街の活性化が期待できます。さらに、維持管理経費の効果的な抑制が可能となります。また、西東京市では市民協働の積極的な推進を掲げていますが、より積極的に実践をしていくために、指定管理者に市民協働のノウハウを持った人材として、『市民協働担当』を副所長クラスでを配置してもらうことで、様々な市民協働の取り組みををさらに推進することができると考えました。

実践11:市民協働による、市民協働のための公募・選定

指定管理者は主に公募によって選定されます。西東京市では公募のための募集要項と仕様書(指定管理者に求める業務内容やサービスの質を記したもの)の作成、そして実際の選定も、市民のみなさんを交えながら行ったそうです。

高井さん:指定管理者制度を導入するために、まず西東京市の公園条例の改正から取り組みました。市民のみなさんの理解が欠かせませんので、導入前から市民ボランティアの方々と意見交換を行ったり、説明の機会をしっかり設けるよう努めました。また、募集要項等も市民のみなさんの要望等を参考に、また時には相談しながら作成し、選定委員にも公園ボランティアの方々に加わっていただくなど、導入のプロセスも市民協働によって取り組みました。

↑ 利用者=市民本位の窓口対応の実現

募集要項等にはある程度ノウハウも必要ですが、指定管理者に求める能力や役割などについて、市の考えを明確に示すことがとても大切だと言います。

高井さん:大前提は、市民協働の積極的な推進です。そのために先にも述べたとおり、市民協働のノウハウをもった人材を置いてもらうことを重視しました。市と連携して市民協働を推進してもらうための仕組みが必要です。また、パブリックマインド、つまり単なる金儲けのためではなく市民のための企画であるかどうかも選定においてはポイントとなりました。
市民の皆さんが求めていることは事前に調べてありますので、募集要項等にはそれを具体的に盛り込んでおくのです。たとえば、公園ボランティアの育成、相談業務の充実、小規模緑地等のコミュニティガーデン事業の推進などです。そうすると、事業者のみなさんもどのような提案をすればよいか分かりやすくなります。市民の皆さんが求めていることは事前に調べてありますので、募集要項等にはそれを具体的に盛り込んでおくのです。たとえば、公園ボランティアの育成、相談業務の充実、小規模緑地等のコミュニティガーデン事業の推進などです。そうすると、事業者のみなさんもどのような提案をすればよいか分かりやすくなります。

実践12:民間の強みを活かした「自主事業」で市民サービスの充実

高井さん:指定管理者制度の導入は、行政にとっては維持管理経費の抑制が大きな狙いのひとつです。つまり指定管理者は限られた指定管理料の中での維持管理を求められるわけですが、それだけでは事業者も厳しく、意欲も減退します。そこで指定管理者は、自動販売機の設置や様々なイベントなどを「自主事業」として、公園を活用して独自に行うことができ、その事業収入によってどんどん収益をあげることが許されています。さらにその収益を、人件費も含め自由に管理運営の費用に充てることができるのです。そのことによって、「安かろう悪かろう」は排除できると考えました。

↑ 指定管理による維持管理経費の抑制と自主事業

高井さん:自主事業ではいろんな事業ができるため、税金を使うことなく市民サービスの向上になる可能性を秘めています。まさに、企画力や営利事業を強みとする民間事業者の腕の見せ所であり、指定管理者制度の効果を高めることができるポイントですね。たとえば、企画趣旨に沿った企業・団体と連携したり、スポンサーとしてつけることも可能です。そうすると外部のノウハウを取り込むことで、企画の質が向上したり、スポンサー料としての収入が期待できます。
ここで肝心なことは、質の高い企画と収益は、表と裏の関係にあるということ。「収益を上げずにいい企画をしろ!」とは、民間事業者にも無理な話です。収益が期待できるからこそ、いい企画を作れるというものです。

いくつか西東京市での自主事業の例をご紹介します。

◆スポーツフェスティバル

スポーツ施設の指定管理者とコラボして実現した企画。スポーツ施設の指定管理者が持つ、スポーツ教室開催等のノウハウやインストラクターのネットワークを活かして、公園でさまざまなスポーツ体験企画を実施。

↑ 大人から子どもまで公園でヨガを体験

◆ファーマーズマーケット

地元の農家が、公園で野菜を販売する企画。指定管理者を構成する事業者の中に、西東京市内の造園会社が含まれていたからこそ、地域の農家さんを呼ぶことが実現した企画。

高井さん:通常、役所がファーマーズマーケットを主催すると、収益をあげられないため、出店者は無料で出品物は役所の「買い取り」となるのが一般的です。しかし、それだとお金の流れがどうしても不自然ですね。西東京市のこの企画は指定管理者の自主事業として行ったたため、出店料も取り、農家さんにはしっかりと商売をしてもらいました。

◆ドッグフェスタ

スケートパークのスペースを利用して、ドッグランを開催。こうした指向性の高い企画は、マーケティングの機会として有効なため企業のサポートも集まりやすい事業になります。一昨年、昨年とドッグカフェやドッグマーケットなどの同時開催も実現し、集客性の非常に高いイベントとなりました。

◆手ぶらバーベキュー

ユーザー視点に立ったサービスとして人気を集めているのが「手ぶらバーベキュー」です。事前予約しておけば、機材や食材を公園で準備してもらうことができ、その名の通り「手ぶら」で手軽にバーベキューを楽しむことが出来ます。

高井さん:市外からの利用者も多く、収益にもつながっている事業です。収益は、他の市民協働の推進につながるため、利用者にも喜ばれ安定的に収益も出る、こうした事業も大事な存在です。

実践13:主役の市民を、指定管理者が支える

前回の記事で、市民の方が主体的に活動に取り組んでいる事業をご紹介しました。そうした、アクティブな市民のみなさんと指定管理者が協働することで、より市民協働が力強いものになると言います。

高井さん:指定管理者は、すでにアクティブに活動している市民と協働して事業を行うことができます。宣伝などの指定管理者のバックアップがあることで企画の質も集客も向上しますし、指定管理者にとってもすでに顕在化したニーズがあるわけですから、事業としてもうまくいくことが多いのです。

◆プレーパークキャラバン

市民が自主的にやっていたプレーパークに、告知・宣伝などの指定管理者のサポートが入ったことでイベントの質が上がり、参加者も増えた事例。

#04のまとめ

公園における官民連携、指定管理者制度の役割・位置付けを図にまとめるとこのようになります。

ただの業務委託の延長ではなく、指定管理者の創意工夫によって、より質の高い市民サービスにつながるという点がポイント。実際に行政の力だけでは実現が難しい数多くの企画が、西東京市の公園で実施されています。そして西東京市では公募・選定を市民協働によって取り組んだことで、市民のニーズをしっかり理解した指定管理者が選定されました。市民を主役とするための『市民協働推進型指定管理者制度』の導入によって、行政と指定管理者が互いをパートナーとして認め合いながら連携して取り組む体制ができています。

◆ 連載「公園における市民協働の実践」これまでの記事


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