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マイルス・デイビス 帝王日記

✖月✖日 月曜日
朝起きるとおれは白ン坊になっていた、なんてことだと驚いていると、
隣で寝ている名前も知らないビッチが「ゆうべアンタは頭からコカインを
袋ごと頭に振りかけていたわよ」と言うではないか、「黙ってろ、このクソアマ」と平手打ちし、シャワーを浴び5000ドル分のコカインを洗い落とす。
そのあと本物の豹の毛皮で作ったバスローブを羽織ったままジムで汗を流した、オーネット・コールマンのクソ野郎の写真を貼り付けたサンドバッグを2時間ばかり叩き続けて少し気分がよくなったので、ランボルギーニでハーレムに出かける、117丁目の角に顔見知りのハスラーがいたので「よおナンバーズの景気はどうだい」と声を掛けると「マイルス、ヤバイぜ、ミンガスがお前を探してる」「ミンガスがどうした」「デトロイトのギグのギャラが未払いだとよ、とっとと払わないなら、奴のベッドのシーツをクラッカーだらけにしてやると言ってたぜ」なにかの間違いだろう、ミンガスは少々狂っているが、ヒップでクールな野郎だ、シーツを台無しにするなんてことはヤクが切れたときのバードでもやらなかったからな。家に帰るとハービーから留守番電話が入っていた。聖教新聞を1ヶ月だけでも取れと言ってる、冗談じゃない、あの新聞はおれがトレーンを連れてカフェ・ボヘミアで大評判になったときも一度も取材に来なかったからな。

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