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みそ汁はまだですか

久々に怒りを覚えた。といっても、先月もあることに腹を立てていたし、先々月もそうだった。最近怒ってばかりなのかもしれない。

よく結果に納得がいかない、どうしてそうなったかが分からないことに対して腹をたてる。

どうして一ヶ月以上も猶予を与えたのに、期日を守ってもらえないのか。手元にある書類を送ってもらうだけなのに・・・

どうしてあの人は基本的な義務を果たさないのか。無断欠勤を続けているのに毎日遊んで・・・病気だから仕方ないのか・・・

「どうして」が分からないことに敏感なのかもしれない。私には、共感する力や見えないことを想像する力が欠けているのだろうか。

これは、もっとも嫌っていたはずの女性特有の正義感からくる怒りなのか。

人に「こうあるべきだ」という自分中心の勝手な常識を押し付けているのかもしれない。狭量な人間性が怒りとなって暴かれただけなのかもしれない。

ここまでが自己分析

「そういうこともあるよね。しょうがないね。」と、どんなことがあっても他人を許せる人になってみたい。気長に待つ、心の余裕が今はないだけなのかもしれない。


よく同期の話を聞いて笑っていた話がある。

以前勤めていた美術商の会社では、客観性を担保するために絵に詳しい専門家に作品の研究を依頼していた。

その中の一人に、90近くの大ベテランの研究者がいた。日本美術の権威だ。

その先生に毎日、お昼ご飯としてインスタントのみそ汁を持っていく係を同期は任されていた。だが、それを頻繁に忘れて自分のお昼ご飯に集中してしまうらしい。お昼を食べている時にふと、箸を止めて思い出す。

「あ!先生のみそ汁!」

申し訳なさそうにみそ汁を持って部屋に入ると、ドアの方を向いて静かに座っている先生がいる。恐る恐るみそ汁を渡すと、いつも「いいんですよ、いいんですよ。」と柔らかな声が返ってくるそうだ。

何十分、時には昼休みが終わるまで待たせたこともあったそう。それでも微笑みながら静かにみそ汁を待っている姿があった。

一度だけ、部屋から出てきて「みそ汁はまだですか。」と尋ねられたそう。

私もいつか、みそ汁を待つあの人のようになれるのだろうか。


朝起きた瞬間から元気な27歳女 九州で生まれ育ち、大学進学とともに上京 大学で日本の英学史を、大学院で博物館学を学ぶ 卒業後は美術商の世界に飛び込むも挫折し、八百屋の店長に そんな八百屋も店を閉じ、2度目の転職を経て現在に至る アート|食器|お菓子|ダイエット|読書|歴史|雑記