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宇都宮ブレックスの「物語」を作ること (シーズン最終盤を迎えるにあたって)


 宇都宮ブレックスは現在21連勝中。CSのクォーターファイナルのホーム開催が決まるなど、破竹の勢いかのように見えます。
 それは、間違いではないのだろうけど。ここまでに至る過程に思いを馳せると同時に、宇都宮ブレックスとファンが望んでいるこの先にあるものを勝ち取るためにまだ必要なことについて考えています。

 先日のSR渋谷戦のあとの試合後会見で佐々HCが「物語」という言葉を使ったことに触れました(こちら)。あれから宇都宮ブレックスの2023-24シーズンの「物語」について考えることが増えました。


「起こったこと全てに意味がある」、とよく言われます。でも、これは必ずしも本当ではないと思うのです。
 起こったことに対して、解釈なり分析なり反省なり対策なりの行動を取ることで初めてその起こったことに意味が生まれるのだと思っています。

 そして、今年のブレックスは起こったこと全てに意味を持たせることができている気がするのです。


 プラスの出来事で言えば、真っ先に思い出されるのは天皇杯の名古屋Dとの試合。HCや選手から何度も試合後会見で話題に上がったことや、ファンの間でも一生こすられていることからもわかるように、本当に素晴らしいインパクトを残してくれた試合だったと思います。
 あのときはギャビンが離脱中で、アイクとDJがロスター外という、本来なら絶望してもおかしくないような状況でした。でも、出場したみんなが開き直って死ぬほど頑張ってくれた。そうしたら勝てた。キャプテンの、バイスキャプテンからのアシストによる得点でゲームを締め括ったのも最高すぎるクロージングだった。
 あの試合は選手だけではなく、ファンの心にも勇気を与えてくれたと思います。あの日やれたことを思えば、自信と勇気が湧いてくる。あれから幾度となく選手やHCが触れる気持ちがわかる。わたしにとっても大切なお守りのような試合です。
(観戦noteはこちら


 勝った試合の中にも反省点というのは必ずあるものだと思うのですが(わかりやすい例でいうと3ピリ問題とか)、負けた試合の方が「負けた」というマイナスの結果の分、うまく行かなかったことを反省しやすい、「意味を持たせやすい」と思います。

 これまでのシーズンでブレックスが負けたのは7試合。
 開幕戦を連勝できたと思ったら、圧倒的な強さに殴られたA東京戦game1。
 試合の入り方を間違えるとどうしようもなくなることを知った広島戦game1。
 A東京とは違った完成度の高さに慄いた三遠戦game1。
 粘り強いディフェンスと強い気持ちに屈してしまった12月の秋田戦。
 ハードスケジュールの中、アウェイの空間に圧されてしまった京都戦game2。
 一瞬の隙も見せてはいけないことを学んだ島根戦game2。
 あと少しのところで届かないことがこんなにも悔しいんだと思わされた琉球戦game1。

 そして、あの天皇杯準決勝。言うまでもなく、一生忘れられないトラウマだと思います。あんなに悔しいことがあるんだと初めて知った気すらする。
 でも、あの日の負けがあったから、4月7日の秋田戦の最後にDJニュービルが遠藤さんへのパスを選択したのだとしたら。
 この先も、そんなふうに思える試合が待っているのだとしたら。
 負けてよかったなんて思えるわけない。でも、あの悔しい試合が伏線となるなら、あの日の痛みもいくらかは和らぐのだと思います。


 怪我のことだってそう。

 ギャビンの離脱は確かに痛手だった。
 でも、竹内公輔さんが日本を代表するビッグマンであるということを痛いほどに再認識させられる機会になったこと。わたしは正直感謝すらしそうになります。もしギャビンがずっと万全だったら、わたしはこんなにも公輔さんを好きになれなかったかもしれない。
 公輔さんが元日本代表ですごい人だというのは知っていたけど、ここまで、本当にここまで大活躍してくれるような人だとは知らなかった。
 横浜BCとの試合のあと、公輔さんは「こういうときのためにいつだって準備してきた」ということを言っていた。でも、もしかしたら、公輔さん自身も確信まではなかったかもしれない。いくら準備をしていたって本当にうまく対処できるかどうかなんて実際にやってみないとわからないし、公輔さんだって38〜39歳のシーズンをプレイするのは初めてだから。だけど、自分を信じて準備し続けてくれていたおかげでブレックスはギャビン不在の間も勝ちを伸ばすことができた。
 今、わたしは公輔さんの活躍を当然だと思っている節がある。だって公輔さんはこのくらいできて当然だから(何様?)。そして、そう思ってるのは絶対わたしだけじゃない。(この間のVRでみんながあまりにも褒め称えるもんだから、公輔さん「なんですかこれ、僕をヨイショする会ですか?」って笑ってたね。でもね、本当に本当にかっこいいんだよ。今シーズンの公輔さんしか知らないけど、こんなに献身的でスリーも決めてくれる公輔さんを大好きにならないわけない!)
 公輔さんの努力のおかげで、もしかしたら公輔さん自身を含めた誰もが「竹内公輔は現在進行形でこれだけできる人だ」と知ることができた。誰もが竹内公輔を心の底から信じることができた。
 ギャビンの怪我と離脱を喜ぶつもりは一切ない。12月はかなりのハードスケジュールでインサイド陣は本当に大変だったはず。でも、どうせ起こってしまったのであれば、その結果手に入れることができた「誰もが竹内公輔を信じている」という事実は、2023-2024年シーズンのブレックスにとってかけがえのない財産だと思うのです。


 12月の川崎戦、誠司くんの体調不良での欠場も確かに痛手でした。ただでさえギャビンが離脱していたのに、さらには誠司くんまでいないなんて……とショックは大きかった。
 あの日を境に遠藤さんはスターターに復帰した。今シーズンのブレックスしか知らないわたしは遠藤さんのことを「3&Dの人」だと頭ではわかってるつもりでしたが、その魅力を本当に知ることができたのは遠藤さんがスターターに復帰してからだと思います。
 シュートを打ち続けること。今まで見てきた遠藤さんとは輝き方が違うような気さえした。ハドルを組むときに見せるリーダーシップ。遠藤祐亮って、本当に、本当に、かっこいい。
 みるみるスリーの成功率は上がって、今ではトップスリーに入る成功率。DJニュービル、比江島慎、そして遠藤祐亮というスターター3ガードのおそろしさよ。3人ともスリー成功率トップ10に入ってるなんて怖すぎるでしょ……
 どうせ誠司くんが欠場しなきゃいけなかったなら、その中では最高の未来を手に入れられたと思います。
 もちろん、誠司くんは不本意な離脱だっただろうし、その後しばらく調子が上がらないのかな、と思うこともあった。でも、近頃の2ndユニットで誠司くんが出てきたときの心強さは誰もが知るところだと思う。誠司くんのハートの強さはゲームチェンジャーとして本当に心強いし、そういう姿を見るたびにわたしはA東京GAME2でこれからもこの人を信じようと誓ったのをいつも思い出します。どんなときも冷静で心身ともに動じないでいてくれる鵤誠司くん、本当にありがとう。
 4月10日の群馬戦でも本当にかっこよかった。いつも天敵だビジネス不仲だなんだって言われているひえじまさんとの仲だけど、あの日誠司くんがリバウンドを取りまくりスリーを決め続けて、ダブルダブルを達成してくれたことが全ての答えだと思っています。誠司くんが比江島さんの後輩でよかった、なんて思っちゃったりしてます。


 紳司の怪我も本当に悔しい。シーズン最終盤のこの時期に紳司が経験できたはずのことを思うと残念としかいいようがない。高島紳司というバスケットボール選手にとって、あまりにも損失が大きいと思います。
 でも、それによって村岸航が3番としての飛躍を遂げるなら、という気持ちがあって。そう考えることでなんとか持ち堪えられてるような気がします。
 一昨日のnoteに書きそびれたけど、起き上がれない比江島さんに駆け寄ったのは佐々HCのみならず、きしくんもだった。コートの半分を駆け抜けたスピード、試合中のどの場面よりも速かった気がする。
 愚直とも言えそうなくらいに実直なきしくん。まっすぐに努力する姿勢、いつだって準備している姿を見て、応援するしかないと思わされる人。
 きしくんがスリー決めたときのブレックスベンチを含めたブレアリの揺れ方よ。Twitterで「きしのスリーでブレアリ総父兄化」みたいなのを見かけた気がするんだけどほんとそう。いつもみんな心底喜んでいて、そうさせるのはきしくんにアスリートとしての魅力があるからに他ならないと思ってます。
 これまでは外国籍の代わりに出ることが多かったけど、紳司の怪我が発覚してから本来のポジションでの出番が増えた。ヒロインで本人が話していたように、これまで紳司が担っていたディフェンスのところを任されることが多くなるのだと思う。
 アリーナグルメの「キシのハッスルカレー唐揚げ」(カレーはカレーでもスパイスカレーのような味わいでとても美味しいです)からもわかるように、きしくんの持ち味はハッスルディフェンス。ハッスルする分、どうしてもファウルが嵩みがちになってしまうのだけど。琉球game1よかったなあってずっと思ってたのですが、この間の群馬戦もよかった!(スリーは来なかったけど、そういう日もあるからね!これからも臆せずに打ち続けてほしいです!)
 どうせ紳司が骨折しなければいけなかったのなら、それはきしくんの覚醒のためだったんだと思わせてほしい。もちろん等価交換には決してならないけど、もし、これから先村岸航の活躍を見られるなら、あまりにも悔しい紳司の怪我を飲み込めるようになると思うから。


 そしてナベさん。渡邉裕規さんがお誕生日を迎えてからというもの、ナベさんの輝きに心を奪われっぱなしです。年男のナベさん、ずっとナベタイム。
 群馬との開幕戦で見た5本のスリー。比江島さんのファンになってから見た公輔さんとの動画。イカでいい会での名司会?ぶり。バスケはもちろんのこと、べしゃりも上手いし気遣いも素晴らしいし、本当にすごい人なのだとわかっていたつもりだった。
 4月10日の群馬戦。渡邉裕規がブレックスにいなかったらという仮定がすでに絶対ありえないけど、もしあの日ナベさんがいてくれなかったらどうなってたかわからないなと思うのです。いつもチームを鼓舞してくれるナベさん。プレイでチームを牽引するってああいうことを言うんだと思う。この人がブレックスにいてくれること、バイスキャプテンでいてくれることのありがたみをあの日何度噛み締めたことか。
 あの日の比江島さんの怪我で、ナベタイムにさらなるブーストがかかったのだとしたら。
 比江島さんに怪我なんてしてほしくない。でも、怪我をしてしまった事実が変わらないのであれば、ナベさんのハイパーナベタイムが今シーズンの優勝に向けてのラストピースだったんだと思える日が来てほしい。
 そして、ナベさんであればそう思わせてくれるんじゃないかと信じています。



 平坦な道なんてない。
 確かにブレックスは今21連勝しているけれど、間にどでかいトラウマも挟んでいるし、結果的に勝ってはいても反省しなきゃいけないこともたくさんあった。
 漠然と過ごしていたら勝ちはただの勝ちで、負けはただの負けになってしまう。傷だって傷のまま、癒えることなく残ってしまう。

 でも、佐々さんはわかってる。人の心の弱さも、強さも、勝ち続けることの怖さも、全部わかった上で指揮をとってくれている。
 人は弱いし、調子に乗るし、失敗もする。でも、そのことを自覚して努力すれば、「物語」として昇華することができる。
 佐々さん自身がそう思っているからこそ、あの渋谷戦のあと、「物語」という言葉を選んだのかなと思っています。

 そもそも、(2023-24シーズンのブレックスしか見ていないわたしが書いていいことなのかわかりませんが)去年初めてCSを逃したところからこの物語は始まっていたのかもしれないと思っています。直接は見ていなくても、YEAR BOOKなどで去年の悔しさを目にする機会はありました。それは想像を絶する苦しさだったことでしょう。
 WINNERのCMでも使われている昨シーズンのブレックスの最終戦。比江島さんのブザービーターで劇的逆転勝利を飾ったこと。あのCMを見るたびに、昨シーズンの最後の試合を反撃の狼煙として迎えたのが今シーズンなんだなとしみじみ思うのです。

 必要な伏線を張り終えて、準備は整いつつあるはず。
 選手、コーチ、スタッフ、そしてファンみんなの手で、これまでの宇都宮ブレックスに起こった全てを最高の物語に作り上げられると信じています。


 レギュラーシーズン、残り9試合。
 愛と感謝を込めて、心の底から黄援させていただきます!

 GO BREX!!


(こちらのnoteは比江島さんの怪我を自分なりに受け止めるために書き始めましたが、日刊スポーツさんのこちらの記事を拝読してそこまで重い怪我じゃなかったのかなとほっとしておます。でも、やっぱり無理はしないでいただきたく……)

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