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地方国立大学生がゲーム業界で内定を取るまで就活をした過程を紹介する

かつては賤業扱いされつつも今ではすっかり高学歴が前提となったゲーム業界。ゲーム業界に就職できるのは有名私大生とか旧帝大生、あるいは一部の専門学校生といった印象が強いですが、地方国立大生である筆者が2019年(2020年度)にゲーム業界入りを目指して戦った記録を今後の学生のために残しておきます。

筆者紹介:ぱソんこ(Twitter:@passonco)——VRとゲームを好む大学生。2016年11月にPANORA VRで翻訳記事を書き始め、同年12月にOculus Rift CV1 & Oculus Touchを購入したことによりVRレビュー記事を書くようになる。2018年にはIGN JAPANでゲーム記事を書き始めた。現在は大学の研究室で何かに勤しみながらゲームライター活動を継続している。

筆者がエントリーシートを通過して一次試験に到達した企業はバンダイナムコスタジオ、スクウェア・エニックス、タイトー、カプコン、ソニー・インタラクティブ・エンタテインメント(SIEJ)、コナミやモノリスソフトで、モバイル系ではG社がありました。本当に受かった企業のことは書いていません。

0. 前提として

・普段からビデオゲームやってますか?
一昔前は「ゲーム企業はゲームが好きな人はいらない」と噂されていた時期もありましたが、僕が様々な企業の採用試験に行った限りではゲームが好きな人じゃないと一時試験の段階にすら到達できないような雰囲気です。ゲームが好きじゃないけどなんとなく受けに来た人は確実に落ちます。その会社のゲームをプレイした経験のない人も落ちます。

1. ゲームの企画書

新卒の応募でゲームの企画書が不要な企業も一部存在しますが、基本的には必要です。企画書をゼロから考えて形にするのは結構時間がかかるので、就活が解禁される3月に間に合わせるためにも年明けから作り始めるといいでしょう。

そこで、某ゲーム企業のインターンシップで現役プランナーに教えてもらったことのメモを残しておいたので、まだ作っていない人はそれを参考に作るといいかもしれません。

企画書(内定者は平均6枚)
1.表紙(1枚)
2.つかみ(1枚) 一番重要
3.内容前半(2〜3枚)
4.内容後半(1〜2枚)
5.まとめ(1枚)
なぜ、この企画が世の中に必要なのか?
→目的・意義がセット
誰が?どのような視点?
→一番伝えたい要点をまとめる
1: ターゲット・対象
2: セールスポイント…そのゲームの売りは?
3: ゲーム内容 …何をするゲームなのか?
4: ゲームフロー…ゲーム画面の遷移
5: 機能説明
6: 収益方法 ←採用の段階では重視せず(プロは必須)
7: 公開後の運営プラン(モバイルゲームの場合)
8: モチベーションフロー(感情とゲームプレイのフロー図)
ゲームシステムに加えてそれが生み出すストレスや感情も大事だけど、ここまでやる新卒はいない
注意すべき点
1. 仕様を並べただけだと、何が楽しいのかがわからない
2. 文章だけでなく図を使う
3. 面白さとは関係のない情報やノイズは削るべし
4. 耳触りのいい言葉は不要

また、一つの企業に提出するゲームの企画書は3~4個が目安とのことなので、あらかじめ5個ぐらい作っておいて企業の傾向・得意ジャンルに合わせて送る企画書を変えると効果的です。RPGが強い会社にFPSの企画書を送っても効果は薄いでしょうし。参考に筆者が作った企画書の一部も載せておきます。

※追記(2019/08/15)…ゲームの企画書の書き方に特化した別の記事を書きました。筆者が実際に作った企画書も載っているのでぜひご一読を。

2. エントリーシート

ゲーム企業のエントリーシートに書く内容は志望動機が前提として、

・学生時代に力を入れていたこと
・ものづくりの作業に取り組んだ経験
・集団活動の経験
・最近プレイしているゲーム(の良いところ、悪いところ)

の4点が中心となります。基本的には大学生活で今まで何をしてきたのかが問われますが、企業によっては小学校~高校まで書くこともあります。

ゲームに関する質問も基本的にはその会社のゲームを例に出して答えるべきですが、その会社のゲームについて一切触れなくても雰囲気で通ってしまうかもしれません。また、エントリーシートに書くゲームの話題は可能な限りNintendo SwitchもしくはPS4の世代(もしかしたらゲーミングPC)であるべきで、それより古いと「ゲームのセンスが前の時代で止まっている・古い人」として採用側への悪印象に繋がります。ゲーム会社の説明会でも言っていましたし、企業によっては現在使っているゲーム機やPCの申請も求められます。(でもSIEJの新卒試験でPS4を持ってない人がいたのは内緒)

また、集団での作業経験が重視されてているように筆者は感じました。これは面接でもたびたび質問されます。大学生の多くはサークルやらアルバイトやらで集団行動を経験しているかもしれませんが、筆者のように個人で行動してきた人はエントリーシートで困ることになります。そういった場合は大学の授業やゼミ・研究室の話だけではなく、機会があれば遠隔でもいいのでハッカソンやゲームジャムなどに参加して経験を積むといいでしょう。

3-A. 筆記試験

筆記試験は会社によって内容が全く異なります。そもそも企画書が筆記試験側面を持っているためか、エントリーシート後の筆記試験がないところも多いです。適性試験のような計算問題は少なめで、ゲームのお題に沿って設計する問題や発想力を試す記述問題がほとんどを占めます。

筆記試験の具体的な例としてはRPGが強い会社では即興でRPGの設定を作る問題が、激ムズに定評のある会社ではソウルライクのステージを作る問題が出題されていました。また、とある品川の企業では筆記試験+プレゼンテーション+グループディスカッション+集団面接をぶっ続け6時間でやっていて、めっちゃ疲れました。関西のC社では特定のゲームに関する具体的な問題ではなく「オリジナルのバーチャルYouTuberを企画してください」といった流行を取り入れた面白い問題も。

また、会社の特色がある問題とは別に「鬼ごっこやじゃんけんなどのシンプルなゲームのルールをアレンジする問題」もいくつかの会社で見かけました。ゲーム会社の筆記試験を受ける前にじゃんけんのアレンジルールを考えておいて損はしないでしょう。

3-B. グループ活動

採用試験でのグループ活動はディスカッションが主となる。これは空気を読まない奴から死ぬデスゲームで、筆者はこれが本当に嫌い。筆者が実際に経験した議題としては「その会社の有名なキャラクターの活用方法」や「なぜNintendo Switchはヒットしたのか?の分析」などがあった。グループディスカッションは予定調和で耳障りの良い言葉をひたすら並べるのが必勝法なので、こういった場所でガチ持論を述べると落ちる。「キャラクターの活用方法」のディスカッションはだいたい若者ウケから考え始めて女子高生ウケにシフトチェンジし、おそらく食品系のアイディアに落ち着く。みんなもやってみればわかる。

4-A. 一次面接

どこの会社でも聞かれるのが、仕事と人生として真面目に考えているかということです。ゲーム業界ではプログラマーやグラフィッカー、サウンドなど技術系やアーティスト系のように実力がわかりやすい人が多いですが、プランナー志望の場合はほとんど実績を示せるものがありません。そのために面接でプランナー志望は人柄やチームワークが重視されるのでしょう。ゲーム系の質問もありますが、それと同じぐらい

・志望動機は?
・会社に入ったら何がやりたいのか?
・キャリアアップはどのように計画しているのか?

といった仕事やキャリアとしての点が多かったように思います。面接で質問されることはエントリーシートと内容はやや被りますが、企業によって聞いてくることが全然違うので就活会議などの新卒向けサービスで過去の例を調べるとよいでしょう。

自分が受けた質問で印象に残っているものとしては、「人生で一番自慢できることは?」「大学の授業で一番印象に残っているものは?」などがあります。任天堂系やSIEJ系ではゲーム機に関わる質問もあるかもしれません。東京のM社の面接ではちょうどNintendo  Switch Liteの発表直後だったので「Nintendo Switch Liteのメリット・デメリットをユーザーと開発者の視点からそれぞれ語ってください」と聞かれました。

ちなみに、筆者があらゆるゲーム会社に行った限りではゲームプランナー志望の学生は「レベルデザイナー希望」と答える人がほとんどでした。ゲームプランナーを志望するも具体的な役割を知らない場合は、まずはレベルデザイナーについて調べてみましょう。

4-B. 適性試験

一般的な就活においてはほとんどの企業が適性試験を真っ先に行うらしいが、ゲーム業界ではほぼ面接の後の後回しとなっていました。理由としては新卒のふるい分けがゲームの企画書の段階で既に行われているからではないでしょうか。とはいえ、コナミやバンダイナムコ・アミューズメントなど一部企業は面接前にWebで適性試験の受講が求められました。とりあえず、ゲームプランナー志望の学生は適性試験についてはあまり急がず必要に応じて勉強すると効率的だと思います。

5. 二次面接

筆者はこの段階まで行ったことがないのでわかりません。なぜかというとい、筆者が内定取った会社は面接が一回しかなかったからです。

6.その他反省点など

・学校の成績は重視されない
成績証明書や健康診断書はエントリーの段階では求められません。また、筆者はエントリーシートでTOEICやTOEFLなどの英語系の資格をほとんど申請しませんでしたが、特に問題はなかったです(英検は書いたかもしれない)。ゲーム業界では学校での成績についてあまり関係ないと考えてもよさそう。

・大手だけではなく中小も調べておくべき。
大手企業は自分よりも優秀なライバルが腐るほどいるので、ぶっちゃけ受かる見込みが薄いです。あなたが過去1~2年にプレイしたゲームの開発に関わっている企業を洗いざらい調べておくと後々助かるでしょう。

・「ゲーム」以上の魅力をアピールしよう
冒頭でゲームが好きじゃない人は落ちると言いましたが、ゲーム会社に受けに来る新卒はみんなゲームが好きで当然なのでゲームが好きであることに並ぶ自分の特徴を見つけないと他人と差別化してアピールできません。幼少期の頃から続く趣味や部活・サークルの経験を活かしたエピソードがあるといいかもね(筆者はなかった)。

・スケジュールと服装はちゃんとチェックしよう
筆者はセガの説明会(エントリーするために必須)の日程を間違えたために受験できませんでしたし、タイトーの一次試験はスーツ指定なのに間違えて私服で行ってしまいました。一部企業(主に関西のC社派生系)ではスーツ禁止の場合もありますが、服装の指定が書いてなくて困ったらスーツで行けばいいと思います。コナミは公式ウェブサイトに「ビジネスカジュアルもしくはスーツ」と書いてあったので、まずは公式FAQを見ましょう。

また、モバイル系の企業は締め切りが2月段階で終わったりSIEJは書類が全て手書きな上に応募締め切り3月上旬と早い場合も多く、志望の会社の締め切りは事前に全て確認するべきです。とはいえ、大抵の会社は春先の1次応募の他に夏ごろに行われる2次応募や3次応募も受け付けているので諦めずに応募し続けることもできます。

・インターンシップの検討も悪くはない
筆者も大学3年生の頃にセガやコナミなどのインターンシップに行きましたが、別にインターンシップに行ってようが落ちる時は落ちるので「インターンシップ・説明会参加組は新卒採用で有利」とかそういうのは気にしなくてもいいです。だって落ちるもん。

とはいえ、インターンシップの経験そのものは刺激的で面白いですし、エントリーシートを書く練習と考えて応募してみると良いでしょう。新卒採用が始まった3月からいきなりエントリーシートを大量に書き続けるのは結構しんどいですから、インターンシップの応募を通してある程度テンプレートを作っておくことができます。

・地方住みには交通費がつらい
筆者は新潟の大学生で、東京に行く場合は学割を適用しても新幹線で往復2万円かかります。深夜バスを使う手もありますが、諸々の事情で体力を消耗するのでお勧めはしません。保護者とよく相談して交通費を捻出したり、都会に住む友人などを頼りましょう。

7.まとめ

エントリーの段階では大学生活で積み上げてきた経験でふるい分けられ、面接では人柄やコミュニケーション能力が問われます。大学生の半分は6月までに内定を得て就職活動が終わるらしいですが、自己反省を繰り返して内容を研磨しながら諦めずに受け続けることが肝心です。みなさんも頑張ってくださいね。

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