【ゲームレビュー】目につくもの全部ぶっ壊す!革命系爆発アクション「Just Cause 3」

このテキストは関西の大手ゲーム開発・販売会社Cの2020年度新卒向けの課題として提出したドキュメントを一部改訂したものです

概要

タイトル:Just Cause 3(ジャスト・コーズ 3)
開発:Avalanche Studios
販売:スクウェア・エニックス
発売日:2015年12月1日
対応プラットフォーム:PS4/XboxOne/Steam(筆者はSteamでプレイしたもの)
※このレポートでは本作のDLC及び続編『Just Cause 4』に対する言及は行わない。

Just Cause3は地中海の架空の島国を舞台にしたオープンワールドのアクションアドベンチャーゲームだ。主人公のリコ・ロドリゲスは独裁者ディラベロに乗っ取られた故郷「メディチ共和国」の平和を取り戻すために革命軍と協力し、破壊活動を通して政府と戦うことになる。このゲームにおけるプレイヤーの目的は「政府の施設」と「街に点在するプロパガンダ」を全て破壊することだ。

オープンワールドとしてどういう作りになっているか?

本作はいわゆる拠点制圧系のシステムを採用していて、敵軍基地を破壊したり街を解放したりすることでファストトラベルの拠点が増えていく。ただし政府軍から解放していない地域へのファストトラベルはアイテムを消費するので、大半のプレイヤーはメインシナリオの目的地へ移動しながら経路の近くの拠点を制圧するプレイになるだろう。そのほか、一部メインシナリオのミッションではプレイヤーが該当地域をどれだけ占拠できたかによって難易度や手間が変わることもある。筆者はメインシナリオ完了とすべての拠点制圧を28時間で達成したが、ミニゲームや実績のためにやりこむプレイヤーはプレイ時間が50時間や100時間だと推測する。

Just Cause 3のいいところ

1.目標が分かりやすい!
赤色は政府軍を、青色は革命軍を意味するのでプレイヤーはとにかく赤い色の物体をぶっ壊せば良く、拠点を探す時も赤色が見えたら突撃すれば間違いなしだ。政府の施設では石油タンクや衛星通信アンテナなど赤い色のオブジェクトクトを、街中ではプロパガンダのスピーカーや街宣車、独裁者の看板などの赤いオブジェクトと巨大な石像を壊すことが中心となる(稀に時間内にすべてのセンサーを解除するようなギミックも存在する)。また、街にある警察署では警察官や軍人を倒すことでゲージを溜めるノルマが課せられることがあるが、こちらは場所によってはターゲットを倒しきってもノルマに届かないような消化試合に陥るのでバランス調整が足りていないように感じた。

2.グラップリング移動が楽しい
主人公は「パラシュート」「ウィングスーツ」「グラップリング」の3アイテムを駆使することで空を飛ぶような自由度の高い移動ができる。パラシュートは安定しているが速度は遅く、ウィングスーツは不安定だが速度が出るといった対比になっていて、プレイヤーは自然と快適な移動のために試行錯誤を始める。地面や壁といった地形や建物・木などの物体にワイヤーを引っかけるとその方向に真っ直ぐ飛び、そこからパラシュートを拓いて一旦宙に浮いてからウィングスーツで滑空するがとても気持ちいい。ただしPS4のスパイダーマンと違って振り子運動のような移動はできない。
また、本作にはバイクや車といった乗り物が用意されているが、ウィングスーツとグラップリングを駆使すれば大抵の乗り物をわざわざ使わないほど気持ちいい上に快適な移動となっている(ただしヘリコプターは見つけ優先して使うほど移動速度が速い)。

3.爆発(物理演算)がすごい
本作は物理演算に力を入れており、あらゆる物体が爆発する。本作のストーリーにはエネルギー資源をめぐる争いが関わっているため、数多く登場するエネルギー開発の施設や設備を爆発させると勢いよく燃えるのだ。特に直径十メートルもあるような球形タンクを燃やした時は噴射で宙を舞ってから綺麗に爆発四散するし、直径数十メートルの超巨大アンテナを破壊した時のボロボロと崩れて爆発する様子も見ていてたまらないものがある。また、軍事基地では敵が使う大砲や戦車・ヘリといった武装を奪うこともでき、敵の機関銃やロケットランチャーで敵の設備をガンガンと壊していくのも爽快感あふれる行為だ。

4.愛すべきキャラクターたち
主人公のリコは故郷と仲間を救いたいという思いで行動しつつもジョークを飛ばす余裕を持つおじさんで、リコの旧友のマリオは革命軍として戦いつつもリコを心からの親友だと信頼しているおじさんだ。そのほかリコの仲間たちも魅力的なおじさんとおばさんが揃っているのでプレイヤーが不快になるような人物がいないのが良い点だ。また、主人公はCIAのエージェントという設定だが重厚でシリアスな要素はほとんどなく、終始むちゃくちゃなアクションやコメディで満ちているのでプレイヤーはいい意味で深く考える必要がない。また、大型の軍事施設の拠点を制圧する度に政府軍のプロパガンダ放送が流れるのだが、政府軍の施設が破壊されるたびにプロパガンダのアナウンサーの態度が変わっていくのが面白い。筆者はこのゲームの後半はプロパガンダ放送のアナウンサーによって支えられたといっても過言ではないほどである。

5.遊び甲斐のある自由なギミック
プレイヤーはグラップリングを使って2つの物体を互いに引き寄せたり、噴射機能のある爆弾をあらゆる物体に設置したりできる。そのため、プレイヤーの発想次第で「2つのパラソルを合体させたパンジャンドラム」「爆弾でブーストして宙に浮く車」といった他人に見せたくなるような物理演算の遊びができ、ゲームの発売当初はこれらを目的とした動画サイトやSNSでの動画投稿が人気となっていた。

6.いい意味でおおざっぱな戦闘
本作はTPSとして作りこまれてはおらず「あくまでグラップリングを活用したアクションを活用してほしい」という設計意図が強く感じられる。本作には体力ゲージの概念がない自動回復システムなのだが、グラップリングを使って敵の猛攻を避けようとしつつもあっさりとゲームオーバーになってしまう。しかし、拠点の設備はゲームオーバー前の状態が引き継がれるので何度やられても地道に攻撃を続ければ全ての設備を破壊して制圧することができる。もしこのゲームがゲームオーバーで拠点制圧をやり直すような設計になっていたら筆者は確実にクリアを諦めて投げ出していただろう。また、制圧拠点ではプレイヤーが使う武器を補充できる棚も必ず用意されているので弾切れを心配する必要もない。本作の開発元は本作をあくまで爆発を楽しむゲームであってシビアな攻略を深く考えさせないようにしているのだ。

Just Cause 3の悪いところ

1.最初から最後まで似たような拠点制圧を繰り返すので飽きる
このゲームはひたすら移動と爆発に特化している所が魅力なのだが、逆に言えばそこに快楽を見いだせないとプレイする意義を失って早々に飽きてしまう。ゲームの舞台の地中海の光景は美しいがどこの街も名前が違うだけで見た目に個性はないし、軍事基地はいくつかの種類があるものの破壊対象のオブジェクトはほとんど同じなので新鮮さや驚きを感じる頻度が少ない。このゲームのフィールドは確かに広いのだが、広い土地のほとんどが山の斜面に生える木で占められているのでフィールドと拠点を水増ししているように感じられる。
また、政府軍に関わるオブジェクトを破壊すると「カオスポイント」というスコアが溜まるのだが、このスコアの数値は高くなってもプレイヤースキルの成長に全く関わらない。拠点制圧のメリットが「ファストトラベルの場所が増える」だけではプレイヤーに対する報酬や動機として物足りないのではないか。

2.プレイヤーのスキルの成長のためにミニゲームを強制させられる
本作はプレイヤーのスキルを成長させることでグラップリングや乗り物などの機能を強化できるのだが、これを強化するにはスキルに対応したミニゲームをこなさなければならない。そのため、メインクエストと拠点制圧のみ行うようなゲームプレイではほとんど成長の実感が湧かないのだ。
また、ミニゲームの品質は高いがリトライのロード時間も短くないので快適とは言いづらい上にミニゲームのスコアが高くないと獲得できないスキルも存在するので、何度も挑戦しているうちにストレスが少しずつ溜まっていってしまう。これはゲーマーの好みに依存する問題かもしれないが、少なくとも私はゲーム側からプレイヤーにミニゲームを強制するような設計は控えるべきだと考えている。

どのような改善の余地があるか?

1.スキルの成長でミニゲームを強要せず、自然と成長できるようにする
筆者が他のオープンワールドのゲームで良いと思った成長システムを挙げると、FAR CRY 3ではほとんどのスキルや武器が拠点制圧をこなすだけでも自然と獲得でき、金銭による武器の購入は「武器の解放を少し早める」程度に収まっているのでプレイヤーに進行の選択余地が残されている。また、MARVEL’S SPIDER-MANは特殊武器(ガジェット)やコスチュームの解放にはミニゲーム必須なものの、移動や通常攻撃などの基本的な要素はレベルアップ時のポイントで解放可能であり通常の進行だけでも自然と成長を実感できる。そのため、筆者は今までの経験を元にプレイヤーにとって優先度の高いスキルは寄り道せずとも自然と解放できるような仕組みが望ましいと考える。
そのため、Just Cause 3の場合はこのゲームの一番で楽しい部分であるグラップリングやパラシュート、ウィングスーツや重火器スキルのスキルを拠点制圧やメインシナリオの進行によって溜まる経験値を使って獲得させ、他の乗り物などのオマケ的なスキルはミニゲームによるポイント制で解放できるようにするべきだ。

2.ロケーションのバリエーションを増やすか、それができないならボリュームを削る
ゲームの世界の景観も魅力になるオープンワールドというジャンルにおいてどこに行っても似たような景観というのは重大な問題だ。本作は元々おおざっぱでバカっぽいノリなので「夏の地中海の街」という舞台設定に縛られないロケーションが用意してあってもよかったのではないか。
また、グラップリングやワイヤーを使った移動は高低差が激しくて明確に足場が確保されている都市部だからこそ活きるギミックだ。そのため、森や山の斜面のほか、建造物が何もない荒野などの大自然とは相性が悪い上に、残念なことにこのゲームのマップの3分の2はそのようなロケーションも何もない不毛の地で埋め尽くされている。このゲームの後半は広大な不毛の地に点在する拠点の間をだらだらと移動することに時間を使うので、不毛の地で埋め尽くすぐらいであれば島のスケール自体を縮小してゲームプレイの進行のテンポを上げるべきだった。

支援していただけると、そのお金が私のゲーム購入資金となります