ラスボス 佐野史郎

いい感じに満腹になるまで食べるなら食べ放題よりも単品で注文した方が安くあがる身体になった。歳をとるってのはそういうことなのかもしれない。

若い頃は焼肉を心ゆくまで楽しむならば食べ放題一択だったし、絶対に安上がりだった。
体感としてはラテンのリズムに乗って仔牛一頭くらいは食べているような気持ちだったと思う。ちなみにこれはドラマ『フードファイト』に羽賀研二が出た時のキャラ設定である。

私と同世代の人間なら小学生の時に『フードファイト』を観ているはずで少なくとも私の友達はみんな観ていたので、大人になって知り合った同世代にフードファイトの話をすると、高確率で「覚えてないなぁ…」と言われる。
特盛無料のつけ麺屋さんに友人と行って、すごい勢いで食べる友人に手のひらを見せたら「なに?」って聞かれたので、「いや、フードファイトの浅香光代だろ」と言ったが「?」といった様子だった。

元孤児でフードファイトのチャンピオンである草彅剛のお母さんとして現れて、「お母さんにフードファイトで勝たせておくれ。ほら、この手のほくろを覚えているだろ?」などといい、正三角形の頂点のように規則正しく並んだ手のひらのほくろを草彅くんに見せるミッチー。
草彅くんはチャンピオンとしての意地と母を思う心で葛藤するが、思い出の中の母親は手の甲にほくろがあることを思い出してニセお母さんことミッチーを圧倒的に突き放して勝利するという話があり、それのオマージュとして手のひらを見てることで友人がつけ麺を食べるのをやめるかと思ったが、友人は一切攻撃の手を緩めなかった。

かく言う私も、かつてはフードファイトの真似をして「オレの胃袋は宇宙だ」と言いながら大食いをしていた。かつて宇宙だった私の胃袋も、今では北中米カリブくらいになってしまっていることだろう。「オレの胃袋は北中米カリブだ」って言ったら、胃の容量の話ではなく味の嗜好性の話だと思われそうだ。
「オレの胃袋は北中米カリブだ」
「あ、じゃあご飯タコスにする?」
「いや、そういうんじゃなくて…」
みたいになるだろう。

いろんな理由により志半ばで終わらざるを得なくなった伝説のドラマ、フードファイト。確かチャンピオン草彅が萩本欽一に負けて、「お前の妹はもっと食べるぞ?」みたいなこと言われて終わったスペシャルドラマの後に問題が起きて、全然続編が作られなくなってしまったと記憶している。

大食いという文化自体はほとぼりが冷めてまたテレビ放送しているが、フードファイトの続編は一体いつ始まるんだろうか。

始まらないんだろうなぁ…

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