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カンヌライオンズ2018 PR受賞作品に学ぶ【後編】

前編に続き、後編では4作品を紹介。

05 The Flip

アメリカのマクドナルドが「国際女性デー」に実施したキャンペーン。PR部門でゴールドを受賞している。

マクドナルドの象徴的な「M」のロゴを逆の「W」にしたというアイディア自体はシンプルなもの。

ただし、女性がオーナーをつとめているUSの100店舗で行われ、紙袋や包装紙、従業員のユニフォームや帽子まで「W」にしたという徹底ぶり。そして何よりファクトが強い。USのマクドナルドでは、実にマネージャーの6割が女性なんだそう。

この作品からの学びは「強いファクトを象徴的なシンボルに昇華する」ということではないだろうか。ファクトなければ、何を言っても信じるに値しない。ただ、そのファクトは普段目には見えないし、言の葉にも乗らない。そのファクトを、女性に敬意を表して逆の「W」にするという「目に見える」象徴的なシンボルに昇華したことで、ファクトを可視化し、人々に語られるものへと転換したことが秀逸なんだと思う。マクドナルドという企業への見方がちょっと変わりそうなキャンペーン。

ロゴをいじっているだけじゃないか、と思いがちだし、私も最初そう思ってしまったのだが、自社のロゴをいじるというのは相当な勇気が要ること。今回のキャンペーンでは、包装紙や従業員のユニフォームまで変えているので、影響の範囲は相当なものだし、社内外のタフな調整が背景にあったのではないかと想像する。それをやってのけるほどまでに、女性に敬意を表現する、その姿勢自体がアイデアより評価されるべきものかもしれない。

06 THIS COKE IS A FANTA

こちらはブラジルのコカ・コーラが実施したキャンペーン。これもゴールド受賞作品。

ブラジルではもともとLGBTの方を揶揄する言葉として「THIS COKE IS A FANTA」(このコーラは中身がファンタのようなものだ)という言葉が存在していたという背景がある。

そこで、LGBTの祭典である「プライドバレード」の日に、外見はコーラ、でも中身はファンタという商品を実際に発売し、「This coke is a Fanta, So What?」(このコーラは中身がファンタのようなもの、だから何?)というメッセージを発信し、LGBTの方に対する偏見に一石を投じた、というのが今回のキャンペーン。

こちらも自社ブランドの商品の中身を入れ替えた、というアイデア自体は至極シンプルなものではあるが、グローバル規模のメガブランドが実施すると、「意味合い」が大きく変わってくる。

この作品からの学びは「生活者に定着していた言葉を逆手に取り、問題提起する文脈をつくる」ということと「特定のコミュニティが支持されることで、ムーブメントをつくる」ということではないだろうか。

グローバル規模の環境問題のような壮大なことではなくても、日常に潜む、生きづらさの要因となっている偏見や慣習にフォーカスし、その問題提起を行うことで救われる人たちがいる。今回のキャンペーンはまさにコカ・コーラでないと出来ないことだった。自社ブランドと社会の接点の中で、自分たちが解決すべき問題を発見する、その出発点が優れたアイデアとなったキャンペーンだと思う。

07 Pay With Views

こちらはオランダのオペルが実施したキャンペーン。ゴールドを受賞している。


ユーザーに新型車種の試乗運転を動画にしてもらい、YouTubeに投稿してもらう、一定のPVに達した人には新車をプレゼントというもの。

「車タダでほしい!」というだけでなく、ユーザーの創作意欲というインサイトを捉えたのが秀逸だと思う。

この作品からの学びは「自社のプロモーションに生活者を巻き込む」ということではないだろうか。ユーザーの創作意欲に火をつける→あの手この手で面白い動画を作る→せっかく作った動画をより広めたいと、今度はあの手この手で宣伝する→お金をかけなくても自社のプロモーション動画が大量に作られ、広まっていく、という羨ましすぎるフレーム。

一億総クリエーター時代、いかに生活者の創作意欲を掻き立て自社のプロモーションに巻き込んでいけるかが、多くの人にリーチし、自分ごと化されるプロモーションのひとつの解なのではないかと思う。

08 Turning Beer into Water

こちらはアメリカのバドワイザー、ゴールドを受賞している。

自然災害に見舞われた際に、ビールの製造ラインをストップし、緊急用の飲料水製造ラインに切り替え、被災地に配布したというもの。

この作品からの学びは、コカ・コーラの「THIS COKE IS A FANTA」と同じではあるが「自社が解決できる社会課題の発見」ということではないだろうか。ビール会社がビールの製造ラインを止めるなんてなかなか出来ることではない、多くの利害調整が絡みそうだ。勇気ある行動をスピーディーに実行する、その姿勢に人々は感銘を受け、バドワイザーという企業への見方が変わっていく、そんな事例ではないだろうか。

後半のまとめ

・強いファクトを象徴的なロゴへと昇華する
・自社が解決できる社会課題の発見がアイデアの出発点
・生活者に定着していた言葉を逆手に取ることで、
 問題提起しやすい文脈をつくる
・特定のコミュニティに支持されることで、ムーブメントをつくる
・ブランドのロゴをいじる、商品の中身を入れ替える
 アイデア自体はシンプルだが、グローバルブランドがやると
 意味合いが大きく変わる
・アイデアはシンプルでも、象徴的なシンボルの存在が
 ブランドメッセージやファクトを体現し、人が語りたくなるものへと
 昇華するポイント(ただし、メガブランドに限る)
・自社のプロモーションに生活者を巻き込む
・生活者の創作意欲を掻き立てるキャンペーン
・アイデア自体はシンプルだが、実行力が試されるものは評価される
 (賞だけでなく世の中からも)







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