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ハチとの遭遇


明日からようやくお盆休み。
今日はパートさんが休みなので僕の部署には社員である僕一人であった。
そんなわけで、少しのんびりした気分で休み明けの部署の予定などを考えていた。

職場は工房という名の小さな工場で、機械や材料、作りかけの商品などが所狭しと置いてある。予定がひと段落ついて、さて整頓でもしようかと作業場に入った時、黒っぽい何かがふわりと舞うのが目に入った。
ん、何だ?
しばらく注視していると、作業場の天井に向かってヘリコプターみたいにスゥーッと真上に上がっていく物が見えた。
ハチだ。どこから入ったんだろうか。
緊張が走る。
子供の頃のある記憶が蘇ってくる。



僕は子供の頃(8,9歳だったと思う)、ハチに刺された事があるのだ。
夏休みの日中、二階の窓から一階の屋根の上に降りて遊んでいた。何をしていたかは覚えていないが、歩いてちょっと段差のある所を越えようとした時、何かを踏んだ。パリッと乾いた音がした気がする。それは、まさかのハチの巣だった!
次の瞬間働きバチが数匹飛び出し、僕の両足のふくらはぎ辺りに3,4カ所針を突き刺した。 
当然、僕は号泣。その後の事は覚えていないが、多分親にメンソレータムか何か塗ってもらったんだろうな。。。


参ったなぁ。

そんなことを思い出しながら、呟いた。医学についてはよく知らないが、アナフィラキシーショックという言葉はブラックジャックを読んで知っていた。一度ハチに刺された人が再び刺されると、ショック状態を起こし、重篤な場合には命の危険もあるとか。

窓を開けて逃がす事も考えたが、ハチの向こうに窓があるので如何ともしがたい。
ハチは黒色に反応して襲ってくると言うし、頭など刺されたら、「痛~い」じゃ済まないだろう。やむなく、近くにあった殺虫剤をハチに向かって噴射した。


効かないなあ・・・。
それもそのはず、それは主にハエ・蚊に効果のある殺虫剤だった。よほどハチが頻繁に出る所でない限り、ハチ用の殺虫剤などそう常備してはいない。

いや、参ったなぁ。
こんな時に虫と話せたら、、、




ハチ「・・・んだよ、このくっせーしるは・・・。ペッペッ」

僕「?え?誰?」

ハチ「あんたなんなんだよ、もう、やめてくれよ。」

僕「ハチ?!お前話せるのか?」

ハチ「お?おー、あんたとは、はなせるみたいだな。」

僕「なら話が早いな。悪いけど出てってくれる?」

ハチ「え?やだよ。そとはめちゃくちゃあついんだよ。」

僕「ここでも十分暑いけど・・・。んー、じゃあ、涼しくなったら出てってくれるかい?」

ハチ「わかった。それまではいていいんだな?」

僕「うん。ただ、怖いから大人しくしててくれよ。」

ハチ「りょうかい。わりいな、にんげん。
・・・あ、そうだ、おれいにこれをやるよ。
ハチミツでつくっただんごだ。」

僕「え、いいのかい?!小さいけどうまそう。いただくよ。」

ハチ「おう、うめえぞ。ほっぺたおとすなよ。」

僕「ムシャムシャ。・・・ん、な・なんか苦い・・・」

ハチ「え、にげえ?あ、さっきあんたがまいてた、くっせーしるがてについちまってたかもしんねえ。へへ。

僕「ギョエーッ!」



・・・こんな空想(妄想?)をしてる間にハチはどこかに飛んで行ったみたいだ。


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