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恋 (会話Ver)

 誰もいないカフェテラスに座り、カフェオレを頼む。もうアイスじゃなくてホットにするべきだったかな、と思っていると、彼を発見した。
「待った?」
友人が現れた。
「好きな人を見てたから、へーき。」
「ふーん、どの人?」
ちょうど届いたカフェオレのストローで彼を指す。
「指差すの反対。」
「ストローだもん。それに彼のことを言葉で表現したくない。」
「かなり遊んでそうなタイプ。遊びなら後腐れなくて良さそう。」
「お、さすが、わが親友。私も第一印象は同じ。でも、何度か見かけるうちに顔が見えなくなっていって気になるんだよねー。」
「ふーん、本気なんだ?どうして人を見る目はあるのに、好きになる男はダメなのかなぁ。」
「本当それ。でも好きなら会いたいし、触れたい。でも彼に対してそういう気持ちにはならない。ただあの分厚い仮面を外したい。」
「それにしてもこんなに見てて、大丈夫なの?」
「離れているし、彼は自分に好意を持っている人を大切にするけど、距離は持つタイプだろうからへーき。」
「そこまで分かっていてももまだ顔が見えないんだ?」
友人が笑う。
「行動である程度は分かるよね。でも心までは見えない。話したりすれば分かるかもだけど、今は観察で満たされてる。」
「見るじゃなく、観察って言っちゃうところが変態。」
「否定はしない。」
顔を合わせて笑う。
紙に包まれたストローの片方を破く。
「よし、このストローを吹いて、ストローの紙がカフェテラスの外まで飛んだら、彼の名前を聞きにいく。」
「ポイ捨て反対。」
「拾いに行くし。」
顔を上げ、ストローに思いっきり息を吹き込み、紙を空に飛ばす。放射線を描いて、空に飛ぶかと思ったら、風が吹き、ストローの紙は手元に戻ってきた。
「地球が汚れなくて良かった。」
友人が笑う。
「天罰?それでこの意味は?」
「諦めろ。」
「うむ、一理あり。でもこのまま観察しながら、他の人を探せ、だね。」
「都合良すぎ。浮気性め。」
「本気で付き合ったら浮気しないし。」
「じゃぁ、今までの人達は本気じゃなかったの?」
「全員本気。ということで、彼氏の友人以外で誰か紹介して。」
「息するように嘘つくよね。彼氏の友人以外ってところでもう本気になる気がないのがみえみえ。でも彼にぶつかったら紹介してあげる。」

 うーん、さすがは親友。全てお見通しか。あーだーこーだ言ってるけど、彼が好き。でも顔が見えない上にいつもまわりにたくさんの人がいて、私の存在すら知らない。吉と転ぶか凶と転ぶか、答えは分かりきっている。彼で泣くのはなんかイヤ。そうやってまわりをコントロールしているのかも?もうこの時点で惨敗。挑む気持ちは1ミリも生まれない。
 でも大丈夫。私は惚れっぽくて浮気性。このままでいれば彼のことなんてすぐに忘れられる。ここに来なければ、彼に会うことはないのだから。

カフェオレを飲むとじゃりっと砂の味がした。


【あとがき】
同じテーマで会話と詞?にしてみました。どちらかだけにしようかと思ったけど、自分的にはこう変わるのかーと発見できたから両方up(笑)読み比べてもらえたら嬉しいけど、なんか今回は書くだけでスッキリしたから結果は気にしないでいられそう。


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