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鶴亀杯三句投句〜紫陽花〜

(注)俳句は物語の下にあります。俳句のみの方は下はお進みください^ ^

 窓を開けると紫陽花が咲いていた。大家さんが花好きで、アパートの庭は常に花が咲いていた。この紫陽花は何色に変わるのだろうか?忙殺している毎日の中で一つ楽しみを見つけた。

 ほぼ休みのない毎日の中、やっと得た休日くらい家でゆっくり過ごしたかった。しかし、親からお盆くらい実家に帰ってきんしゃい、孫もおらんし、この親孝行者め!というメールが届き、何年も親に会っていなく、親孝行したいときには親はなし、という言葉を思い出し、重い腰を上げることにした。

 実家に帰ると母親は嫌味を言いながらも嬉しそうにご飯を作る。
もう歳なんだから、そんなに食べられないよ、と言うもテーブルには隙間のないほどのおかずが並ぶ。
全くいつまで子供扱いしているのか……だが喜んでいるし、これも親孝行の一つだと仕方がないとぽっこり腹に目をつぶり平らげる。

 翌日も同じような食事は流石に辛く、花火大会に行くから、夕飯はいらないと言い、家を出た。友人に声をかけるか悩むが、みな結婚しており、祭りは家族と行くだろう。
そうは言っても田舎だから、誰かしらには会う。しばらく会っていない友人と会うのも億劫に感じ、人混みを避け、屋台を少し賑やかし、昔の特等席だった神社の階段に腰を下ろす。少し離れているせいか人は少なく、花火を観るには穴場の場所だった。

「ここから花火が良く見えるのよ。だからもうちょっと頑張れる?ママが昔よく行った花火がすっごく綺麗に観える秘密の場所なの。」
両親と子供の三人家族が階段を上がってくるのが見えた。その声に聞き覚えがあるように感じ、居心地が悪く感じ、階段から離れ、奥の神社へ移動する。
その瞬間花火が咲き乱れた。ドンと音が大きく体に響く。しかし、俺は花火を観ていなかった。周りが一瞬で明るくなり、母親の顔が見えたのだ。
あぁ、すっかりお母さんになったんだ。歳を重ねても昔の面影は残っており、昔よりも優しい顔をしていた。
俺と別れたのは正解だったな。秘密の場所か……
独り言ちり、複雑な気分となり、そのまま花火が終わるまでずっと神社の石畳を見つめていた。

 実家から戻るとまた忙殺した日々が戻ってきた。クタクタとなり、ベッドに横になると彼女の優しい笑顔が浮かぶ。俺の人生はなんなんだろうな。別に不幸だと感じたことはない。だが彼女の笑顔は幸せに溢れていた。子供も作らず、友人とも疎遠。仕事に忙殺され、趣味も楽しみもない。昔のように何か打ち込めるものが欲しい、彼女のような笑顔を取り戻したい、まだ遅くないよな?考えているうちに深い眠りに落ちていった。

 翌日目を覚まし、窓を開けると紫陽花はすっかり枯れ果てていた。

夕立よ君の隣をもう少しだけ
花火咲き君を見つけ顔背け
紫陽花の色の移ろいうつろい見逃して

【あとがき】
こちらに参加しております。忙しくてなかなか投稿できず、すっかり俳句大会のみに…しかも今回はなにを伝えたいのかが曖昧で良い句が思いつかず…とりあえず俳句を10句くらい書いて物語に繋げるか、と四苦八苦。ラストを後味悪くしたので、俳句は甘酸っぱい句と物語と関係ない句で、どちらにするかとても悩みました。百物語の句も落選(私の中で笑)したので、妖入れられなかったので、特に↓の句が捨てがたかった…
夏の夜に今宵こそはと君を待つ
(これは投句しません)

夏といえば幽霊!(笑)幽霊でも良い、会いたい想いの句を何個か書いたんですよねー。次の機会に。そんな物語の下書きあるし。とりあえず4時間で1から書いた(言い訳)ので物語も俳句も薄っぺらいので、まとまり良い方にしました。鶴亀杯は気合入れる気だったのですが(泣)
久々にnote開きまして、下書きたくさんあって、鶴亀杯落ち着いたら、ガッツリ投稿します。いや、今本当忙しくて、毎日ぐったりですが、読み返したら眠らせておくの勿体無いなーと。このままだと書き直す時間もないし、眠らせて終わるなら、上げて余裕が出来たら、直していく方が良いな、と。それに書きたい話が途中までなので、なんとかする予定です。多分…

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