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「焼き立てカフェ」ってネーミング…そりゃそうだろうねぇ〜!?の話



「焼き立てカフェ」という名前で間借りカフェを始めたのは、ただ焼き立てのお菓子を提供したいという単純な理由ではありません。

パン屋さんは基本的に当日の朝から焼いているのが日常で、必然的にパン屋さんで売ってるお菓子たちは当日の焼き立てです。
工房がある場所で売られてるなら、買う方も普通に焼き立てだと思ってお店に入ると思うんです。
パン屋さんがわざわざ焼き立てってアピールしないのは、みんながわかっているからですよね。
パン屋さんの焼き立てのパンやお菓子は日常であり、珍しいものではない…そして、みんなもそれが美味しいって知っている。

私自身もこの「焼き立てカフェ」という出店名を普通に聞いたら、そんな珍しいものでもなく、まあそりゃそうだろう…ってツッコミたくなるネーミングです。

ただ…これはベーカリーの感覚のお話で、パティスリーの焼き菓子となると焼き立てって、ちょっと珍しいものになってしまいます。


ケーキ屋さんの朝の開店前は、生菓子の仕上げに追われるのです。
パティスリーの主役はやっぱり華やかな生菓子たちなんですよね。

そして、焼き菓子の中にもちょっと寝かした方が美味しくなるものもあったりします。

必然的に焼き立ての焼き菓子は、お菓子屋さんの中でも専門店に限られてくるわけです。



洋菓子るぽは焼き菓子専門店というわけではないので、"洋菓子"という言葉を使っていますが、やはりまだ自分の工房がないシェアキッチン利用では焼き菓子が中心になります。

であれば、自分が今の環境でできることで、みんなが普段なかなか食べられないものって考えた時、真っ先に思いついたのが焼き立てのフィナンシェだったんです。

簡単そうに見えて、実はやってるお店は本当に限られてきます。
なぜならフィナンシェ生地は、なかなかの繊細さん。
きちんといい状態で焼き上げるには、仕込んでからオーブンに入れるまでの時間が勝負だったりします。
生地が出来上がると、時間が経つほどにみるみる劣化していくんです。
焼き上がるまで、生地のお世話に手がかかるコたちなんですね。


その分、状態のいい生地が焼き上がると、キメも細かく中までじゅわ〜っとしっとり。
それなのに油っぽさが気にならないフィナンシェになります。
それに加えて、焼き立ては外がサクサクです!

この状態は次の日には味わうことができません。
リベイクしてもフィナンシェは焼き立ての味に戻ってくれないんです。

シンプルな分すごく奥が深いお菓子。
パティシエの技術や解釈の度合いも見えてしまう…
というよりバレてしまう…
ちょっとハードルの高いお菓子だと思っています。

スティックタイプのフィナンシェ

サイズが大きくて厚みがある分、
フワッとサクッのバランスが気に入ってます。


とはいえ、人の味覚は千差万別。
違いを感じない人もいるし、焼き立てよりもしっとりした普通のフィナンシェが好きな方もいるでしょう。
コンビニやスーパーで売ってるフィナンシェの方が美味しいと感じる人もいるかもしれません。

でも、それはそれでいいんです。
人は食べ慣れているものを美味しいと感じるようにできている…


余談ですが…

以前レストランで一緒に働いていたネパール人の方達は、キューピーのコブサラダドレッシングが最高に気に入ったらしく…まかないに美味しい食事があってもそれは食べずに、白いご飯とドレッシングという組み合わせで食べておりました。
でも、嬉しそうに食べているのを見たら、微笑ましくもあり、それでOKなんだよなぁと思い…
それぞれに美味しいと思うものを食べるのが一番幸せなんですよね!


はい。そういう意味で、美味しいと感じるものは人それぞれなんです。


話はそれてしまいましたが、私は自分が好きな焼き立てフィナンシェの味を周りの人達にも味わってみてほしいという想いで、今までのパティシエ経験の中で一番気に入っているこのレシピの焼き立てを提供しています。

こういうフィナンシェが美味しいと感じてくれる人達…共感してくれる人達にちょっとした癒しの時間が届けられたら、それだけで私は満足で嬉しいのです。

これが焼き立てカフェという名前をわざわざ付けた理由です。
まわりくどくて、伝わらない…ちっちゃいこだわりでした^^

そんなわけで、もちろんフィナンシェが看板メニューなのですが…
マドレーヌもパイもシューも…焼き立てが美味しいフランス菓子を中心に…
パティスリー仕込みのお菓子を焼き立てでご用意しています。



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