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牛バラチーズとあまおう


 夜になって用事がおわった。

 予報通りではあるけれどかなり雨が降ってきてしまった。

 そういえば今日は両親が外にご飯を食べに行くから、夜ご飯は自分でなんとかしてねと言われたな。


 それならば行きたいお店リストのお店を消化しようと、渋谷にいた私は
人間関係cafe de copinにきた。


 お店に入ると、昼間はカフェらしい店内は既にbarになっていた。


 店員さんに、御目当てのスコーンについてきくと、毎日、開店からお昼くらいまでにはスコーンは売り切れてしまうらしい。


 うーむ、それならばここで
今日わざわざお酒を飲む必要もないしと私はお店を後にした。


 せっかく渋谷にきたから、渋谷でご飯食べたいよなぁ…と行きたいお店リストを見るが、表参道などばかり。


 最初の用事の時は表参道にいたのだけれど、今日2つ目の予定が渋谷だったしその前に銀行に行く必要もあったしさ。。仕方ないよね。


 御目当てにしていた宇田川町のお店から出て夜ご飯食べられるところ探すかぁ、と思っていると、ポムの樹を見つける。


 渋谷のポムの樹って、いつ入ったのが最後だろう……夜ご飯でもさほど高くないお店、かつ食べたいもの、お腹に溜まるもの、もうこれ以上この雨の中でそんなに歩かないお店、1人でも入れるお店。


 ポムの樹は満たしていた。



店内に入り、1人だと告げると
壁際の2人掛け席に案内される。


 前にきたのはいつだったろう。そのときは、メニュー表が置いてあったのに、代わりにタッチパネルが置いてある。


 ポムの樹に前に入ったのは、多分
2017年。ざっと4年前。それも、渋谷店ではなく多分吉祥寺かどこか。


 4年の間に、随分と世界は変わったのだと思う。


 ホールの店員さんはラテン系の方で、流暢な日本語と華麗な手捌きで綺麗な店内を巡回し、料理を提供している。


 タッチパネル操作に、タッチパネルでの注文にもなれていたはずだけれど、ポムの樹での食事と注文にはなれていない。少し戸惑いながら、
目に入ったオムライスのセットを注文する。



 そうか、今日は休日か。


昨日、仕事をしたし、最近の私は
もうずっと曜日感覚がない。

 レディースセットとやらで
牛バラチーズのオムライス
ラズベリーソーダ
ミニあまおうジェラート
を注文する。



 すぐに、ラズベリーソーダと、
サービスのお味噌汁が運ばれてくる。


 マスクを外す。

 普段、こういうソーダやジュースはそんなに飲まない私。スッと一口恐る恐る吸ってみた。

うん、ラズベリー、ソーダ、って感じ。

まあ、特段、好きでも嫌いでもない。


至ってまともなラズベリーソーダ。



 喉に、しゅわしゅわっという
刺激が通って、ラズベリーの甘酸っぱい香りが舌に残る。


 ぁあ、ラズベリーソーダ、だなぁ、


と当たり前の感想を抱き、サービスされたお味噌汁を飲む。


 冷たいラズベリーソーダだった口の中は、一気にほっとするお味噌汁に包まれる。


 お店で提供されるお味噌汁って
どうしてかすごく美味しいよね。


 あれは大鍋で作ることで、
家庭より美味しくなるって
どこかで聞いた。


 グッとお味噌汁を飲み干すと、
早速オムライスが到着した。


牛バラチーズオムライス



 贅沢だなぁ。
オムライスは、
デミグラスかビーフシチュー
またはケチャップ派。
オマール海老のソースとかあると
それもたまにはいいな、と思う程度だが、牛バラチーズのオムライスは、
よく考えてみても多分食べたことがない。




 到着した途端から、ふわっと
牛バラ肉の香りがたつ。


 一口分スプーンに乗せる。



 お肉が…お肉が…美味しいいい!

 お肉が美味しい。


 今までこの手の、ソースのないオムライスはおそらくあまり食べたことがないけれど、これは、アリだ。


 たまに食べるならアリだ。



オムライスのライスは、お肉の味付けに合わせて、バターライス。


そのバターライスのとろんとした
香りがたつ。


 口に入れるとすぐに
とろけてくるふわふわたまごに
チーズのかかったお肉、バターライスのこのバランスが、しっかりとした夜ご飯、にぴったりだった。


 これは間違いなく夜ご飯用のオムライスだ。


 食べているとバターライスのなかからしめじがプリッと出てくる。


 しめじって、バターと合わさると
途端に存在感を発揮して、なくてはならない脇役になるわよね。



 濃厚で、しっかりバターライスと牛バラ肉、そしてチーズのアクセントが合わさってとても美味しい。


 一口一口、ゆっくり味わいながら
一人夜ごはんを楽しんだ。


 ほとんど食べ終わって、残った
ラズベリーソーダを飲むと、
オムライスとラズベリーソーダという
普段は絶対にしない組み合わせの
おかしさに笑ってしまう。


 ラズベリーソーダを飲み干して、
オムライスを最後まで食べた。


 口の中にしめじの香りと
バターライスの香りが強く残る。

 店内ではラテン系の店員さんは
見えなくなって別の小柄な女性が
巡回している。



 食べ終わってゆっくりぼーっとしていると、女性店員さんが
「こちら下げますね」といい、
食後のデザート提供の札を見て
「デザートお持ちしてよろしいですか」と聞いてくれる。



 人員の減らされた店内で
なんとなく、お店の方を呼ぶのは
恥ずかしいなと思っていた私は
好タイミングに感謝して
お願いします、という。


 noteを開いて記事を書いていると
すぐにジェラートが運ばれてきた。



 春らしいピンクのお口直し。



 上のLotusをさしかえた。


 左手でビスケットをもち、
あまおうのジェラートを一口いれる。


とろんとオムライスのバターライスの味を引きずる私の口の中を一気に爽やかな春にしてくれた。


 あまおうのフリーズドライっぽい
果肉粒が良いアクセントになっている。


 刺さっていたLotusの上に
ジェラートをのせてかじる。

 甘いビスケット味に春の甘酸っぱいジェラートがマッチして、プチ贅沢感が増大する。


 しっかり、フリーズトライあまおうの味が残って、口の中も私の身体もバターライスを引きずっていたはずなのにどこかへ行ってしまうくらい爽やかになった。


 ひとりご飯、やはり贅沢で好きだな。



 今日は「行きたいカフェリスト」消化とはいかなかったけれど、たまにはこういう思いつきの通りすがりの予想外の贅沢もとても良い。


 一人ごはんが好きだ。


 誰とも何も話さず、
誰にも気を遣わず、ただ黙って一人で目の前のご飯の味に、自分の気持ちや気分に向き合うことができるこの時間がとても好きだ。


 コロナ禍になって、
人に会わなくなり、
昨年の自粛期間以降、
外でご飯を食べる機会がほとんどなくなった。自粛明けからしばらくして少しずつ、ひとりでカフェに入ることが増えてきたが、人と会うことがとんとないので、ご飯を外で食べる機会はめっきり減った。


 だからこそだろうか。外で一人でご飯を食べに行き、それも一昨年までとは違って勉強しに、頭の整理のためについでにカフェに入るのではなくて、ご飯を食べることを目的にして外ご飯をするようになって、この時間がとても贅沢であることを強く感じられるようになった。


 お腹いっぱい満たされた私は、
ご飯を食べ終わってからこの記事を書いている間の30分ほどを、十分にゆっくりして席をたった。


 コロナ禍で、今まで何も考えずとも
外ご飯に行けていた日常を強く実感し始めた。


 自分の幸福度を上げるお金の使い方が何かを考えるようになった。


 誰とも会わなくて済むようになって
ひとりの時間を贅沢に生きることができるようになった。


 そして、牛バラチーズオムライスとあまおうのジェラート、ラズベリーソーダは私のお腹と心をたっぷり、タプタプになる程満たした。


 これからもこの感覚を、
美味しいものにむきあって、ただその目の前のご飯を味わい、ひとりで楽しめるだけの余裕を忘れないでおこう、そう感じた。


 外に出ると、雨は強くなっていて
傘をさしているのにジーンズもコートもリュックもずぶ濡れになってしまった。雨が降っていなければもっといい日だったのにな…

 お昼に家を出る時に腕の内側に
吹きかけたMON PARISの甘い爽やかな香りが、雨と夜風にのってマスクをしていても、ふわっと微かに薫った


#ポムの樹

#オムライス

#牛バラチーズオムライス

#あまおうのジェラート

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