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「鹿を逐う者は山を見ず(シカオウモノハヤマヲミズ)」~2019 J1 リーグ第26節 vs鹿島アントラーズ~【レビュー】

皆さんどうも、太古の森と漆黒の獣です。
初プレビューに続き、初レビューの投稿になります。
正直この試合が初レビューとかハードル高いと思ったんですが、やるからには頑張ろうと思って書きました(笑)
例によって戦術的な事は書けません!!(笑)
基本的には試合を振り返っていく感想レビューになります。
天王山として迎えた、鹿島アントラーズと一戦は0-2で敗戦となりました。
非常に悔しい・・・悔しい結果でしたが満足感も残る試合となりました。

ちなみにプレビューはこちら ↓

■明暗を分けた2分間の攻防

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今シーズン、初めてといって良い本格的な上位争いをしている1位東京。
序盤は苦しみながらも勝ち点差4まで猛追してきた優勝争い常連の2位鹿島。
この経験値に差のある2チームによる6ポインターがどういう立ち上がりになるのか注目していました。

鹿島ボールでのキックオフ直後、いきなり東京が仕掛けます。
右SBの小泉にボールが渡った瞬間、対面の東が猛チャージ、慌てた小泉が体勢を崩したところでボールを奪うとそのまま左サイドに侵入します。
キックオフ直後全体的に前へ姿勢をとっていた鹿島はいきなりショートカウンターをくらう形に、東の動きに連動したディエゴと永井がすぐさまサポートに向かい左サイドで3対2と数的有利な形を作ると、東から中央でフリーのディエゴにパス、永井が走りこんで鹿島DFを引き付けて作ったスペースを使ってミドルゾーンからシュートを放ちますが、ここは犬飼が落ち着いてブロックします。
それでもセカンドボールを拾った大森が再び左サイドにいる東へ、一旦大森に戻しつつ再び東に渡したところで落ちてきたディエゴへパス、釣られて前へ出た鹿島DF陣のギャップを付いて大森が抜け出した所にディエゴから見事なダイレクトパス、大森はクォンスンテとほぼ一対一の状況になります。
右足でシュートを打つタイミングはありましたが、大森はもう一歩ボールを前に運び、傍に寄ってきた永井へパスを選択します。
永井は右足を出しますが、寄せてきた犬飼にブロックされて惜しくもゴールには至りませんでした。
その後お互いにロングボール蹴り合い、再び東京ボールに。
セカンドボールを拾った橋本は伊藤のプレッシャーを受けて渡辺にボールを戻そうとしますが、体勢を崩し伊藤がボールを奪います。
ここから鹿島のボール回し、一度左サイドに展開し、レオシルバを経由して逆サイドの小泉がボールを受け、中央の三竿へボールを預け自らは前方のスペースへ、三竿から見事なパスが裏に通りますがトラップが乱れたところを何とかオ・ジェソクが対応しCKに逃れます。
このCKをレオ・シルバが蹴り、ブエノがマークに付いていた渡辺との駆け引きを制し、鹿島先制。
東京が仕掛けてから、鹿島のゴールが決まるまで1分50秒でした。
改めて試合を見直すとここがこの試合のターニングポイントになったのかなと感じました。

■いつもと違った東京、いつも通りだった鹿島

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東京は前半1~15分で決めたゴールが総得点37点中1点と、鳥栖と湘南と並んでリーグ最小です。
対して鹿島は総得点48点中7点、これは仙台と並んでリーグ最多。
東京としてはいつもであれば様子を見ながら試合に入っていくところでしょうが(アウェイなら尚更)、この試合はいきなりギアがトップに入ってる印象でした。
予期してなかった奇襲(?)に慌てた鹿島相手にいきなりゴール前まで侵入出来ました・・大森の選択については結果論になるので何とも言えません。
角度は言うほどありませんでしたし、ブエノもファーサイドのコースをしっかり消しにきていましたので、より確実に空いてる永井へのパスを選択したのは間違いとは思えないです。犬飼がよく寄せてきたともとれます。
いきなり鹿島陣地まで攻め込んだのに驚きましたが、同時に何か「普段とは違う」雰囲気を東京に感じたのも事実です。
逆に鹿島は最初こそ面食らったものの、直ぐに東京のミスから自分達のボールに結び付けると、そこから落ち着いてボールを回し、あっさり東京のエリア深くまで進むとCKを獲得します。
この一連の流れに特に気負ったものを感じませんでした、あくまで「普段通り」に戻したという印象。
そして得点に繋がるのですが、ここの渡辺の対応にも「普段とは違う」気負いが出ていた気がします。
ブエノと比較して渡辺が空中戦で劣ってるとは思わなかったので、ここであっさりゴールを許してしまったのはちょっとショッキングでした。
身体を当てていれば充分なタイミングで、焦って先に触ろうと前に出て目測を誤ってしまった様にみえます。
このあと22分のCKでも逆サイドからのCKから再びブエノに振り切られ、フリーでへンディングを打たれてしまい、あわや2失点目を喫する場面もあり、前半の渡辺は明らかに気負いから普段通りのプレイが出来ていないように感じました。
長谷川監督は「こういう試合の経験が不足しているというところが若干出てしまったかなと思います」とコメントしていました、ここは今年いきなりレギュラーを掴んだ渡辺にとっては良い経験になったのでは無いでしょうか。
東京は鹿島戦まで19失点中セットプレイで2失点(リーグ2位)だった訳ですが、ここで決めきってくる鹿島のデータ通りの決定力には脱帽です。
その後は良い形でボール奪って仕掛けたい東京に対して鹿島はサイドチェンジを多用しながらピッチを広く使って、東京の守備を拡げる様な攻めで応戦、東京は守備陣の開いたスペースを上手く使われてしまい、中々得意な形でボールを奪わせて貰え無かった印象です。
東京が保持した時には鹿島は中盤から強く当たりにきて、特に2トップボールが入った時には前後で挟み込むような形で容易に前を向かせてくれませんでした。
非常に運動量、強度が高く、後半の鹿島は相当疲労しましたがそれも納得のディフェンスでした。
結局ボール保持では上回ったものの、その後は決定機を作れず、立ち上がりを制した鹿島に終始ペースを握られてしまった前半という印象でした。

前半のスタッツ(football-labから引用)

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■猛攻を仕掛ける東京、たじろぐ鹿島

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前半を終わっての正直な感想としては「これは厳しいな…」というのが本音でした。
今季敗戦を喫した5試合とも東京は無得点に終わっており、先行逃げ切りをチームスタイルとしている東京にとってはアウェイで尚且つ前半をビハインドで折り返して、相手は鹿島。
逆転した試合はホーム清水戦を除いて前半の内に追い付いて逆転しています。
そんなこんなで後半に入りますが、鹿島は白崎→名古という交代がありました、これが戦術的な交代か負傷かは不明ですが、名古の投入によってより前への意識が強くなった様に感じます。
立ち上がり5分前半の流れ、鹿島は変わらず横幅使ってピッチを広く使いながら隙を伺います。対して東京はHTにどういう指示があったのか不明ですが、選手の動きを見るとまだ前半の流れを引きづっている様に感じました。
そんな流れを変えたのは橋本拳人。
50分鹿島は右サイドを駆け上がった小泉が中央のレオシルバにパス、バイタルエリアまで戻っていた橋本は小泉がパスの予備動作をとったタイミングで予測をして思い切って前へ、レオシルバに渡る寸前でスライディングしながらパスカットに成功します。
狙ってのクリアパスかどうかは分かりませんが、前線の永井に渡りファストブレイク発動!!永井、ディエゴ、東が一気に鹿島ゴールに迫り、最終的にフォローした東がクォンスンテと一対一になりますがシュートは正面、セーブされてしまいます。
前半の立ち上がり以来、久しぶりのカウンター発動がスイッチになったのか、ここから東京の猛攻が始まります。
イメージとしては全体の加速装置がonになった感じですね(笑)

53分オジェソクの縦パスに抜け出した永井がダブルタッチでブエノを交わして縦へ行くも惜しくもタッチラインを割る
55分中盤で橋本が落としたボールを拾った高萩が名古をワンタッチで剥がしてフリーの状態から中へ素晴らしいグラウンダーのパス、中央には永井、ディエゴ、東が走り込んでいて一番前の永井がシュートを打ちますが大きくバーの上へ…決定機。
59分左サイドでボールを受けた永井が犬飼に一対一を仕掛け見事に交わしてPA内へ侵入、逆サイドにクロスを上げると長距離を走り込んできた室屋が合わせますが大きく枠外へ…決定機。
63分今度は深い位置でボールを受けた永井が再び犬飼との一対一、素晴らしい切り返しで犬飼を転ばせPA内に侵入してゴール前の大森にパス、受けた大森は背後に走り込んできた高萩へ見事な股抜きヒールパス、高萩がシュートを打ちますが、戻ってきた三竿が懸命にブロック。
64分右サイドで上手く間のスペースへ走り込んできた室屋へ、高萩から絶妙なスルーパス、室屋はそのままシュートを放つもここはカバーに入った犬飼がブロック。
71分左サイドで高い位置を取っていたオジェソクがセルジーニョのパスを引っ掛けてそのままPAエリア内に侵入し、中央でフリーになっているディエゴにパス、受けたディエゴはシュートを打ちますがクォンスンテの正面で難なくセーブ…決定機。

20分の間にこれだけのチャンスを作りました。
鹿島側が守るのか攻めるのか意識がハッキリしない中で、何か攻め方を変えたというよりは、局面でのデュエルに尽く勝ち、勢いで前へ向かう、このシンプルなサッカーに鹿島は防戦一方でした。
個人的にはこれだけ攻撃に迫力を感じたのは今シーズン初めてだったかも知れません、これまでの敗戦を観ている身としては良い意味で予想を覆されてビックリしました。
それだけにゴールが……ゴールが欲しかった…。
1点でも決まっていれば試合の流れを更に東京側に加速させられたと思うので、この時間にゴールを奪えなかったのは本当に痛かったです。
逆に言うと鹿島側はこの時間を良く耐えきったと言うべきでしょうか。

■交代策で生まれた一瞬の隙

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77分前線の選手の動きが少し鈍ってきた東京は更に畳み掛けるべく、ジャエルと田川を準備します。
鹿島の選手は体力的にも精神的にも防戦一方で消耗していた様に見えるので、スピードとパワーのある選手を入れて更に圧迫しようという意図は感じました。
しかし、ここで一瞬ピッチに均衡が訪れた隙を鹿島は見逃しませんでした。
右サイドを持ち上がった名古が、中央のレオシルバへパス、名古は縦方向に行くと見せかけたフェイントで中央へ、釣られたオジェソクのマーク外して中央でフリーになり、レオシルバからのリターンパスを受けます、セルジーニョのマーク付いていた高萩が慌ててマークを捨てて寄せに行きますが、それによってフリーになったセルジーニョへ名古はパス、受けたセルジーニョはこの一瞬前が空いた隙をついて見事なミドルシュート、両チームにとっては決定的な2点目が決まります。
直後に東京はジャエルと田川を入れましたが、当初予定していたタイミングとは違って、完全に息を吹き返した鹿島相手に連携が乏しい、単騎での突破では既に厳しい状況でした。
その後も鹿島ゴールに何とか迫ろうと再度ギアをあげようとしますが、完全に落ち着いた鹿島は東京の勢いを上手くいなして時間を使っていきます。(それでも田川のヘディングパス、渡辺のゴールカバーなど意地はみせていたと思います)
結局試合はそのまま終了し、天王山に破れた東京は2位鹿島とのポイント差が「1」となりました。

後半のスタッツ(football-labから引用)

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■どう捉えるべきか

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試合後の長谷川監督のコメント
「鹿島らしい試合をされて、負けてしまった。」
「今日は鹿島のほうが決定力、したたかに戦うことでは1枚上だった。」
「選手は持てる力は出してくれたが、鹿島のいわゆるなんなんですかね、鹿島らしさに今日はやられてしまったと思います。」
まぁ…これが率直な感想でしょうね、僕も同じ気持ちです。

試合通してのスタッツ(football-labから引用)

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スタッツからみても、ポジティブな部分が多かったと思います、シュート数、パス数、クロス数は上回り、PAエリア内の侵入回数に至っては鹿島の7回に対して東京は26回、しっかり侵入出来ていますし、あとはホントにゴールだけだったというのがデータを通してもよく分かります。

football-lab算出のチャンスビルディングポイント

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こちらも今季の平均数値を大きく上回っており、良い内容だった事が伺えます、あとはホントにゴールだけ!(しつこい)
データからみればそれこそ今シーズンの中でも良い内容の試合だったというのは見えてきますし、アウェイ鹿島でこの内容の試合を出来たというのは自信にして欲しいなと思います。

「内容が良くたって勝たなきゃ意味無い」「こういう試合で負けるからダメ」今季の東京は優勝を目指していて、更にこういった大一番こそ結果を出さなければ意味が無い。
タイトルにある様に「対鹿島」を必要以上に意識せず、「1/34」単なる上位相手のアウェイゲームと捉えて、引き分け上等であわよくば勝ち点3をとる試合運びが必要だった。
もの凄くごもっともだと思います、優勝するにはそれくらいにリアリストに徹せないとダメだと。

それでも僕はリーグの中でも特別なチームである「鹿島アントラーズ」というチームに、アウェイで真正面から勝ちにいった東京の姿勢を評価したいし、本気の鹿島を相手にこれだけのガチンコ勝負が出来たチームの成長に満足感すら覚えています。
「挑戦者」らしくアグレッシブに闘ってくれたチームを誇りに思いますよ。
長谷川監督が言うように勝負を分けたのは「ゴール」だけ、それ以外ね部分では、万全の鹿島相手に互角に勝負が出来た事をしっかり認識しておきたい試合でした。


■まとめ

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この試合に破れた事により、順位こそ首位ではありますが1ポイント差です。
これはもうほぼ並ばれたと言っても差支えは無いでしょう、更にこういった天王山に破れる事は数字以上のショックや悔しさも覚えると思います。
ただ、まだ残り8試合です。
数字を軽く考えれば東京が次勝って、鹿島が負ける様な事があれば状況は鹿島戦前の状態に戻る訳です。
それに東京は未だに自力で優勝を目指せる立場には変わりありませんし、変わらず目の前の試合だけ考えていれば良い訳なんですよ、どうですか?幾分気持ちが楽になったと思いませんか?
残す8試合、上位チームは最終節の横浜だけで中上位のチームか続きます。
勿論、油断や慢心は絶対にダメですし、残留争いをしている下位チームこそ怖いという考えも出来ます。
ですが彼らが本当に怖い存在であれば残留争いを抜け出している筈ですし、東京が上位にいるのは彼らより多く勝ってきたからになりません。
必要以上に恐れず、鹿島戦のような内容で戦えれば結果は付いてくる、自信を持ってこのあとの試合に臨んで欲しいと思います。
悔しい、非常に悔しい結果ながらもチームの成長も感じれた新鮮な気持ちにさせられた一戦でした。

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