食べもねんたる2

そんなこんなでアメリカはめっちゃ怒っていた。
アングリっていると言ってもいい(言わなくてもいい)(そこはいい)
 
 鳴り物入りで『全米が泣いた』映画が日本で全然当たらなかったからである。
 なんなら同じ時期に上映された『森脇健児をコマ送りで見る』の方が売れた勢いだった。

「おい、俺たちがアメリカを上げて泣いた言うてるのにお前ら無視てどういう了見よ?お?お?」

 大統領はオカンムリだ。
 もう一回足しておくか、アングリってると言ってもいい(やっぱこれはいいや)
 これはやばい。どうにかしないと国際問題になってしまう。

「これはもう最終兵器に頼るしかないな」

 首相沢総理大臣は決意を固めた。

「ノブ子を呼べ」

 秘書がごくりと唾を飲む。
 スクランブルだ。
 そんな訳で首相官邸にノブ子が呼ばれた。

「繰り返すがそんな訳でだ。ノブ子さん。力を貸してほしい」

 首相沢は殊勝な顔で頭を下げた。
 黙して腕を組んでいたノブ子がくわっと目を開く。

「話は分かったわ。要するにどういうこと?」

「要するに分かってないじゃないか。あのね。今『おちゃらけダンディ ずっこけ作戦』て映画が上映してるのね」

「凄まじいタイトルね。絶対観たくないわ」

「そう。だから日本人は誰も観なかったの」

「泣けてくるわね」

「でもこの作品『全米が泣いた』だったの」

「あら、観ないから泣くんじゃなくて、観て泣く方だったのね」

「そんな訳でメンツを潰されてアメリカはカンカン」

「ああ、そういうこと。だから、あたしに『仕事』を頼みたいってわけね」

 ノブ子がゴト師の顔になった。
 ゴト師とはその道のプロ中のプロ。
 その道の説明はおいおいだ(ならなんの説明だったんだ)
 そう、彼女の通り名は『玉ねぎ刻んだら、そらもうムッチャ号泣するのノブ子』
 平たく言うと泣きのプロだ。

「『全米より泣く』・・・・・・なかなかどうして、腕が鳴るじゃない」

「やって、くれるか?」

「もうはじまっておる」

 ノブ子の言う『腕が鳴る』は慣用表現ではなく、実際玉ねぎを刻む音だった。
 
「いや、まだアメリカになんのアポもしよらんし、今ここでやられても!」

 首相沢は主唱したが時すでに遅かった。
 涙腺が爆発した。
 その洪水を超す涙の量に首相官邸も爆発した。

 無駄遣いにより涙が枯れたので「また日を改め」ることとなった。
 
 その晩、対応の遅れに業を煮やしたアメリカから飛び立ったミサイルで、首相官邸は再び爆発した。 

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