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「魅惑の心理」マガジンvol.199(コロナが私たちの心に残した爪痕)

新型コロナウイルス感染症は、これまで「新型インフルエンザ等感染症(2類相当)」から、2023年5月から「5類感染症」になりました。陽性者及び濃厚接触者の外出自粛や政府から一律に日常における基本的感染対策がなくなり、一般的なインフルエンザのような形になりました。

新型コロナウイルス感染症の世界への蔓延は様々な分野に大きな影響を与えました。コロナの扱いが変化し、このコロナ禍で何が変わったのか、経済や感染の視点からの話は多くされますが、人の心についての話はあまり見かけないので、ここでまとめたいと思います。そして、その状況を理解して、豊かな社会への一歩になればと思います。豊かな生活は豊かな心があってのものだと考えます。

1. 確証バイアスの増加

最初に触れておきたいのが確証バイアスの増加です。SNSを見ていると「ワクチン賛成」「反対」「マスク賛成」「反対」などの異なった意見が溢れていました。「賛成」でも「反対」でも、自分の意見が正しいと主張し、反対の意見の人の声には耳を傾けず、馬鹿にしたり、誹謗や中傷まで発展し、多くのシーンで戦いが起きていました。これには「確証バイアス」というものが影響していると思います。そこでポーポーの書籍『ゼロからわかる 行動経済学』の中で紹介した、下記の問題に挑戦してみてください。

左ページの4枚のカードを見てください。ここにある「1」「4」「赤」「緑」のカードは片面には数字が書かれており、もう片面には色が塗られています。そしてカードには「一方の面が偶数なら、その一方の面は赤である」という仮説があります。

この仮説を確かめるために、裏返す必要のある最小限のカードはどれとどれか、考えてみてください。答えが出たら次に進んでください。

これはイギリスの心理学者ウエインソンが製作したウエインソン選択問題をアレンジしたものです。この問題の解答としてもっとも多いのは「4」と「赤」のカードを裏返すというものですが、それは不正解です。この仮説が否定されるのは「一方の面が偶数であり、かつその一方の面は赤でない場合」です。「赤」の裏面は偶数、奇数どちらでもよく、「緑」の裏面が偶数でないことを確認しなくてはいけません。

正解は「4」と「緑」になります。この問題の正解率は10%と言われていて、多くの人が間違えてしまうのです。人は考えや仮説が正しいことを証明するために、合致するような情報を集めてしまい、仮説に反する情報を集めようとしない傾向があるのです。この思考の偏りを「確証バイアス」と呼んでいます。

コロナ禍では人のこうした確証バイアスが多くのシーンで見られました。コロナに関わる専門家の意見が割れ、自分が正しいと一度思った人の話を信じ、反対意見の中に学ぶこと、ためになることを探そうとするのではなくて、一方的に反対意見を拒否して批判するのです。本来ならば多様に意見を聞いて、自分の考えを修正していくことが最も賢い方法だと考えられますが、人はそれをしないのです。

そして、コロナ禍では確証バイアスを高めてしまう背景があります。それは「未知のウイルスの存在」と「自分の自信がなくっている人が増えている」ことです。一見、不思議に思える、この背景についてもう少し詳しく解説します。

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