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「魅惑の心理」マガジンvol.51(アイデアを生む企画脳を作る〜新ビジネスのヒント〜)

これから様々な業種が傾く深い不況が見込まれます。政府の支援を期待したいところですが支援はあくまでも「支援」であり、自分の仕事を作ってくれたりはしないはずです。結局は自分で何かやるしかないと思います。私たちは今をなんとか乗り越えなくてはいけませんが、そこで終わりではありません。長引きそうな不況の中で、会社員の人は副業や転職を考える人が出てくるかもしれませんし、自営業の人は今の仕事をアレンジして収入を上げていくか、新規ビジネスを作っていく必要があるでしょう。苦しみの今を乗り越え、仕事が回るように考えなてはいけません。

今回の「魅惑の心理」マガジンでは2回にわけて、皆さんが考えている副業や新ビジネスを心理面と脳科学からフォローし、新ビジネスや副業を広げるヒントにつなげていこうと思います。具体的に「儲かるビジネスを紹介します」のような何かの商材を紹介するものではりません。1回目は柔らかい頭を作るトレーニング方法です。ベースになるのはポーポーが2018年に発行した「アイデアの科学」。これを新しいビジネスを生み出すことに想定して再編集しました。アイデアを生み出す企画脳作りに役立てていただきたいと思います。2回目は方向性や具体的な手法を解説していきます。皆さんが持っているビジネス能力をどう生かしていくか、時代に適したアレンジ方法を説明していきたいと思います。

○記憶力を鍛える

「こんなアイデアがビジネスに使えそうだ」と考える材料となる情報は頭の中(記憶)にあります。その情報を適切に保存し、整理して取り出せるようにしておかなくてはなりません。あまり知られていませんが記憶力を高めておくことはアイデア作りにおいて重要な要素です。「アイデアを作ろう」と考えているとき、脳内では「思い出そう」と同じような動きをしているのです。脳科学の解釈では「創造」は「記憶の一部(再利用)」とも言えます。

記憶はコントロールが難しいものです。私たちは日々感覚器から様々な情報を得ますが、その情報のほとんどはすぐに忘れてしまいます。これを感覚記憶といいます。意識を向けた情報はワーキングメモリ(作業台のような場所)に短期記憶として短い時間保持されると考えられています。そして、その記憶の中で重要なものや繰り返し見るもののごくわずかなものを長期記憶として定着させているのです。

記憶の中でも個人の経験にもとづいた記憶をエピソード記憶といいます。どこに誰と旅行に行ったとか、いつどんな食事をしたという記憶のことです。また自分が体験していなくても映像や書籍から得た知識を意味記憶といいます。アイデア生み出す下準備として私たちは体験したエピソード記憶や本などから得た知識の意味記憶を長期記憶として脳に保管していく必要があります。

記憶には大脳辺縁系にある海馬という器官が重要な役割を果たしています。効率よく記憶するには記憶に感情をともなうことが重要なのです。エピソード記憶の場合、ただ経験したものよりも「面白かった」「美味しかった」「悲しかった」という感情を記憶に紐づけることで、その記憶は海馬に送られやすくなり、さらに長期記憶に残りやすくなることが知られています。つまり意識的に覚えたいものがあるときには自分の感情にインデックスを付けると良いのです。日頃から色々なものに興味を持つこと、心を動かし自分の感情を強く持つことが記憶力を高めていくひとつの方法です。不安に苛まれて、ストレスに浸かっていてはいけません。

良い記憶に対して感情を豊かに持っている人は良い記憶が残ります。「これは良い情報だ」と思ったら、そこで終わりにしないようにしましょう。「自分だったらどうしよう」「これはこんな風に使うと楽しいぞ」と感情を乗せていきましょう。

【基礎トレーニング/特訓1】
あなたにとって昨年の記憶に残るイベント、出来事を3つ思い出してください。そのイベントに紐ついている感情も一緒にメモしてください。たとえば「旅行」「コンサート」「映画」だったとします。感情は「未知の経験がたくさんあってワクワクした」「大好きなアーティストを間近に見られて興奮した」「先がわからぬ展開にドキドキした」というように。そして、自分が記憶しやすい感情があるのか分析してみましょう。その感情に傾向がある場合、今後の記憶の仕方をコントロールしやすくなるはずです。その傾向がわかったら、大事な情報に触れた時には、その感情を大事にするようにしましょう。

○記憶を取り出しやすくする

海馬では短期記憶を時間、順序、場所などを整理して想起しやすいようにしています。短期記憶が長期記憶として定着するためには感情のインデックスを付けることに加え、リハーサル行為があると良いのです。つまりくり返して覚えることが重要なのです。たとえば感情移入して観た映画はよく覚えています。さらに何度も観ているうちに台詞まで記憶するようになってしまいます。ためになる書籍は何度もくり返し読むと記憶に残ります。そして文章を口にすると記憶に定着しやすくなることもわかっています。

また記憶力の向上には、記憶を蓄えておくだけでなく、いかにしてスムーズに想起されるか(取り出せるか)も重要です。大脳皮質に保存された記憶はどのように想起されるか、実はまだその詳しいメカニズムはわかっていません。ただ想起することにも海馬が関わっていると考えられており、長期記憶に送られる段階で想起しやすい何かの回路を残していると考えられています。その場合、単にひとつのことを記憶するよりも、何かふたつのことを関連づけて記憶すると、記憶と想起がしやすくなる。意味のない数字を記憶しなくてはいけない場合、意味をつけて記憶すると忘れにくくなります。「223084」であるなら「ふじさんおはよー」などのように連想するのです。

またひらめきの回路を強化するトレーニングとして、思い出せないことがあったら、すぐにスマホで調べてはいけません。がんばって思い出そうとすることで、思い出す回路が強くなります。記憶を蘇らそうとすることは創造性の訓練になるのです。スマホの便利なものを放棄するのはなかなかできませんが、せめて一度思い出さそうとしてから調べましょう。記憶力を高めることは、新しいビジネスのアイデアを作る基礎になるのです。「いや、私はスピードを優先してなんでも早く検索するほうが合理的だ」。そう考える人がいても不思議ではありません。それはそれで良いと思います。ただし、未来の世界、スマホはいつも必ず繋がるとは限りませんし、トラブルがると頭が機能停止してしまいます。仮にスマホがなかったとしても対応できる頭脳を手に入れることをポーポーは推奨いたします。

【基礎トレーニング/特訓2】
情報を入手するために、雑誌や書籍やネットを活用する方は多いと思います。そんなときはただ流し読みをすると記憶に残れにくく、後で取り出しにくくなります。時間が少し掛かっても、「こんなことに使えそうだ」と情報を使っていることを想像してみると効果的です。また、何かを検索するときには、すぐに調べないで、短時間で良いので思い出してみようと記憶を辿ることをしてから調べる習慣をつけましょう。これを時間の無駄と考える人は、結果的にツールがないと使えない人になってしまいます。

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