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「魅惑の心理」マガジンvol.186(自分は嫌われている?/いえあなたは悪くありません)

新社会人と向き合う現場は、新しい心理傾向を知るのにとても役立つ場所です。学生から一気に社会に出る現場では、「えーそんなことしちゃうのー」「えーそう考えるのー」という驚きの感覚がまるで春の咲き誇る花のように出てきます。最近の若い人は「○○だよね」のような小さな話ではなく、ましてや「良い」とか「悪い」ではなくて、次第に変化していく人の傾向をダイナミックに感じられるところでもあります。

そんな現場の人から気になる話を聞くようになりました。それは「自信満々で失敗しても自己評価が下がらない反省も振り返りもしない人」と「常に何かに怯えていて、自己評価が低い人」の2パターンの人が増えているということです。以前から「心理傾向が2極化している」という話をしてきましたが、ここでもそうした傾向が見られます。二つの心理は全く別のベクトルが存在しているのではなく、実はこの二つは同じ心の病が原因で、その表現として異なった形で現れてきていると考えるのが良いでしょう。また、新社会人特有の問題ではなく、30代、40代、50代と言った人にもこうした傾向は見られます。

「自信満々で失敗しても自己評価が下がらない反省も振り返りもしない人」はなかなかやばいです。奇跡のメンタルです。この人たちの行動メカニズムや行動も大変興味深いのですが、今回はもうひとつの「自己評価が低い人」について考えていきたいと思います。「自分はダメな人間だ」と感じる人が増えていて、自己評価がどんどん低くなっています。そもそも日本人の自尊感情は極限まで低いのに、さらに地下に向かっているようです。「1864年の小説の『地底旅行』か!」と思うぐらい、いや、ちょっと古いたとえでした。「2008年のアメリカ映画『センター・オブ・ジ・アース』か!」というぐい、どんどん地下に潜っていってしまいます。

そして「自分は嫌われているかも」「自分に非があるに違いないと」と感じ、人と向き合うことがとても辛くなってしまうのです。ちょっとわかりやすくするために、こんな診断テストをしてみましょう。下記の質問をチェックしてみてください。

□人から嫌われている気がする
□SNSで誰かにメッセージを送って返信が遅いと不安になる
□よくSNSをする相手が、誰とどんな話をしているのか気になる
□相手の発言に裏を感じたり、傷つくことがまあまあある
□嫌われると感じたら、自分に何か問題があるかもと考える
□基本的に自分には自信がない

どうでしょう。何かを正確に診断するものではないので、多さに一喜一憂することはありませんが、4つ以上チェックした人は黄色信号かも知れません。「嫌われている」と感じる人の多くは、「自分に問題がある」と考えてしまいがちで、人間関係に強いストレスを抱きやすくなります。自分を責めるので元々低い自尊感情がもっと低くなってしまいます。地下まっしぐらです。

そこで私ははっきりと言いたい。「あなたは悪くありません」ただ、自分が悪いと感じてしまう、そんな思考のトラップにはまっているだけです。今回はそんな話をもう少し詳しくしていきたいと思います。

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