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「魅惑の心理」マガジンvol.221(ニュースな心理学/2023年12月)

新聞、テレビ、ネットのニュースを見ていると人の言動が不思議に見えることがあります。「何でこんな事件を起こすのだろう」「何でこんなことを言うのだろう」人の言動は、まさに謎だらけ。そこで、報道された小さな手がかりから、人の行動の「なぜ?」を心理学で紐解く、ニュースな心理学です。報道されるニュースの裏側にある人の心理を知ることこそ大事だと思うのです。

今回の話です。

・低所所得世帯に10万円、多子世帯の大学授業料無料の世論反応
・サマンサタバサ「冬季賞与」不支給の影響
・イオンはなぜトップバリュは値下げするのか
・塾内で児童を盗撮する講師の心理
・大阪万博関係者の未来予想図

・低所所得世帯に10万円、多子世帯の大学授業料無料の世論反応

以前から政府は低所得世帯へ給付金を出すと言っていましたが、今月、その内容が明らかになりました。所得税は納めていないけれども、一定以上の収入があれば課される住民税の「均等割」だけ納めている世帯にも一律10万円を給付し、18歳以下の子ども1人当たり5万円を上乗せするというものです。

収入があっても、控除などを引くと所得に税がかからないケースがあります。物価高の影響で苦労している世帯に対して、一定以上の収入があれば課される住民税の「均等割」という線引きをしてきたわけです。そして、収入によってトータル給付額に大きな差がが出ないように、段階を作ってきました。

この話が報道されるやいなやSNSのXやYahooのコメント欄は大いに荒れました。その多くは「なんで苦労して働いている人には給付がなく、働かない人に手厚い給付をするのか」という不公平感を爆発させるものでした。73歳のお母様が、生活のために必死に毎日働いて、税金も納めてるが気の毒という娘さんの書き込み、生活保護の外国人にばら撒いて日本人は苦しみ続けるという声もありました。

この給付では真面目に働いて納税している中間層が税金は取られるのに給付なしという状態になるからです。それもそのはず均等割だけ納めている世帯に属するのは、政府発表で約500万人しかいません。それも「世帯数」ではなく、「世帯に属する人数」を出してくるあたり、少しでも多いと見せたい政府の腹心が見えます。また、こうした告知を出してくると「あ、選挙が近いのね」という印象を受けます。政治家にとって選挙は最重要項目であり、選挙に近いところで「私たち、皆さんのために頑張っています」とアピールしたいわけです。

今回は選挙に通りたい政治家とお金を出したくない政府、その調整をとってきたわけですが、そこに苦しんでいる中間層のことを軽視していて、怒りを買ってしまったという構図でしょう。このあたりが高所得でお金に苦労しない共感能力の薄い特権階級が決める問題点をあらためて浮き彫りになります。ましてや先日、国会議員の給料を上げることをものすごいスピードで決めてしまった直後です。中間層と言われる人たちの下側にいる人は生活保護をはじめとする低所得層への待遇に強い不満があります。

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