見出し画像

Print House Session

横田大輔という写真家の作品を、4人のデザイナー4つの印刷会社がそれぞれチームを組み、各チーム一つの作品を仕上げるというPrint House Session、無事に終了しました。それぞれの作品を振り返ってみたいと思います。

加藤勝也氏と山田写真製版所チームの作品は、通常本を作る時に1辺に施す中綴じを4辺全てにしてしまうという変則的な形の作品でした。あたかも4つのジンが一つになって、それが観音開き状態で捲り方によって様々な姿を見せるというとても面白いものでした。


町口景氏とサンエムカラーのチームでは、サンエム独自の高精細印刷の力を前面に出した作品で、くっきりと立体感のある印刷が印象的でした。金箔を散らした紙に印刷していたのですが、その金箔にインクがのらずにはっきりと残っていたのが、とても美しかったです。水墨画のような和を感じさせる印刷と和綴じの製本がとても合っていました。



田中義久氏とライブアートブックスのチームでは、「綴じない製本」が印象的でした。綴じないとは?

「通常、 『 加熱型押し 』 と呼ばれる加工ですが、今回の加工物は全ページにあらかじめロウがしみ込ませてある 「 ロウ引き 」 という加工がされています。箔押し機でこのロウ引きされた紙の束に高温の熱と圧力をかけてプレスし、熱で溶けたロウが冷えて固まることでロウが接着剤となり冊子状に綴じられるという仕組みです。」https://note.mu/pbjp/n/naec890a8b2d2

糸や糊などを使っていません。圧力と僅かなロウで一時的に固まっているだけです。なので何度もめくるといずれバラバラになります。また、使用されている紙は印刷機で印刷できる限界の薄さの紙を用いています。印刷スピードを落として印刷していますが、ときおりシワが発生します。そんな偶発性やいずれ壊れるというコンセプトは今回の商業性のない企画でしか実現できなかった作品ではないかと思います。


町口覚氏と藤原印刷チームの作品は、藤原印刷の起源である和文タイプライターがアイデアの起源となっています。タイプライターと聞くと、すぐにパソコンのような物を想像してしまうのですが英文タイプライターが50文字程度に対して、和文タイプライターは実に2400文字を実装し、オペレーターはそこから打刻する1文字を探すという日本語の複雑さがそのまま表れている代物です。今回の作品の為に、藤原印刷創業時のタイプライターを使いテキストを打ちました。

不織布という紙というより布のような柔らかい質感の紙を使用しています。横田の写真と織田作之助のテキストのコラボレーションは、その文字の裏写りまでも計算された緻密で繊細なものに仕上がっています。

最後に。今回のPrint House Sessionの全て作品の製本は篠原紙工さんに担当いただきました。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?