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[diary]08/24 『observer』がはてしなく気に入った

■PS4版「オブザーバー」クリア。
昨夜、寝る前(0時頃)にもう少しだけ進めようとプレイしはじめ、夜中の3時過ぎまで黙々と遊んでしまった。
なんとその間、「もうちょっとくらいやってもいいだろう」みたいな計算を一切していない。本当にハッと気づいたら3時だった。私が会社勤めマンだったら終了していたところだ。あぶねえよ。
今日も仕事を片付けてから早速続きをプレイし、無事エンディングのうち1つを見ることができた。めちゃくちゃ面白かった。というか、気に入った。

ビジュアルがイイ

本作の何がよいって、やはりビジュアルである。
サイバーパンク世界における「肉体と機械の悪夢的融合」といえば、手垢のついたネタであるにもかかわらず、また先行作品もいくらでもあるにもかかわらず、『オブザーバー』の放つヴィジュアルの魅力はそれらと比べても遜色ないのが素晴らしい。一歩も退かない。
個人的には、違法な人体複製で生産されていた“培養肉”が、「受肉したハンス・ベルメール」とでもいうべきグロテスクな美しさで表現されているのを目にした瞬間、一気に持っていかれた。

すでに前段階としてアパート管理人の名前がヤヌスだったり、タトゥー屋にこれ見よがしに飾られたドレ「至高天を見つめるダンテとベアトリーチェ」、ブレイク「大いなる赤き竜と日をまとう女」、レンブラント「テュルプ博士の解剖学講義」、ベルメールの球体関節人形etcだったりを見て、「クソ、あざとい真似しやがって(好き)(コヴェナントかな?)」となってはいたものの、ここまで衒いなき偏愛ヴィジュアルを拝ませていただけるとは思っていなかっただけに、「僥倖!」といった感じ。

しかもその後、『AKIRA』カオリの最期的ビジュアルがしれっと展開されるにいたり、めろめろに心酔してしまい、心の中でこの『observer』というゲームをぎゅっと抱きしめるに至ったのでした。
なので、ここまでに散りばめられたキーワードに引っかかりを覚える方は、絶対にやった方が良いです。良い悪夢を。

余談

ここでちょっと怖い話を。
これ、ゲーム内で飾られてる絵なんですが。

タイトルを私は知らなくて、ただパッと見のモチーフであ、「クレオパトラの死」かな、と判断したんです(合ってました)。が。
よくよく見ると、キーになる蛇が描かれていないんですね……。
にも関わらず、なぜ私はこれをクレオパトラだと思ったのか。私もすでに精神を汚染されているのかもしれない……。
ちなみにこの元ネタの作品はこれっぽい。

描いたのはグエルチーノ(Guercino)というバロックの画家らしいのですが、ぐぐって見たらそういえばこの画家の肖像も飾られていたような気がしなくもない。西洋美術に詳しい人に、きちんとリファレンスを紐解いてほしい。だれかー。

ストーリーもイイ。SF。

閑話休題。
ヴィジュアルだけではない。ストーリーも、SFの王道とも言えるテーマを巧みに語っていたのも、非常に良かった。

──!WARNIG!ここから先、結末の展開に触れています!!──

ストーリーを進めていくと、主人公ラザルスキは、自身の主義を通したことで最愛の妻を死なせてしまったのではないか、という罪悪感に常に苛まれていることが判ってくる。
しかも、その妻と交わした最後の約束を守るため、自身の生命が危機にさらされたときにはその主義を曲げざるを得なかったという事実が、彼の苦悩に拍車をかける。己を責め、偽善者と憎みさえする息子を、だからラザルスキはどこか「受けるべき当然の罰」と捉えている節さえある。
こうして愛憎で歪んでしまった親子関係の、ある種の清算として、プレイヤーは最後に「息子」を受け入れるか否かの選択を迫られることになるのだが、そこで放つ「息子」の台詞がすさまじかった。
「父さんは、”父さんを憎む息子”に執着している。なぜだ?それは、僕のあり得た形のうちの、”一つの可能性”でしかないのに。」
この言葉は、もしかしたら「プログラム」の罠かもしれない。
しかし、自罰として関係の歪みに執着してしまう人間の悲しい性を鋭く指摘してもいる。
巷に溢れるフツーの”サイバーパンクもの”であれば、たんに「本物/偽物」を問うお仕着せの会話で終わっていただろう。しかし、本作は「本物」にしがみついてしまう人間の執着心の所在、そのメカニズム(の一部)にまで言及する。
凡百のサイバーパンク物、SFサイコホラーとは一線を画す作品である証のように思える。

加えて、本作には本筋以外にもいくつかサイドストーリーが存在する。(解決しなくてもクリア可能。)
本筋で関わる被害者達のエピソードも含め、これらは別個の物語として独立してはいるが、じつは最後の決断に至り、テーマが各々リンクしていたことに気づかされるようになっている。
他人事として下してきた決断が、最後の最後で自分の身に降りかかる。一貫性テストの発生である。

ここに来てプレイヤーは初めて、「肉体のその先」という可能性が呈示されているにも関わらず、精神が肉体から離れようとしない「自分自身」を発見する。
「肉体の檻/精神のその先」で揺れるゲーム内のキャラクタとまったく同じ立場に立たされるのだ。
サイバーパンクの苦悩が、ゲームを通じて我が身にも訪れる瞬間の戦慄。それは、意外なほどに卑近で、どちらを選んでも悲しく、あまりにも人間的な手触りだった。
SFのひとつの理想的な形であると思う。

──!!ここまで!!──

長くなってしまったのでそろそろ終わりたい。これ日記だよ。なんでこんなにダラダラ書いてんだよ。
とにかく、オブザーバーめっっちゃ刺さるゲームだったので、『ビデオドローム』『アンチヴァイラル』あたりでグッと来る人はぜひともやってみてほしい。
公式サイトはこちら
ローカライズしてくれたアミュージオさんめっちゃありがとう。

にしても、表記を「オブザーバー」にしても「>observer_」にしても検索に要らんもんが大量に引っかかってくるのだけがちょっとつらい。
とにかく、本日の日記ここまで!きちがいか!