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ポイントカード

疲れすぎると涙が出る。

どうしようもなくなって、何もできなくて、本を読むことも、映画を見ることも、寝転がることも、全部できなくなる。
挙句の果てに、大好きなお友達からの電話にさえ、微妙な受け答えしかできなくなって気を悪くなされて切られる。
そしてまた後悔する。

電車を降りて、改札まで歩くことができない。

下を向くと涙が出る。

足はフラフラと、改札じゃなくて、エキナカにある小さなスペースでやってる喫茶店に向かっていた。

甘いものが飲みたくなかった。
冷たいものが飲みたくなかった。
コーヒーが飲みたくなかった。

気づいたら注文はアメリカーノになってた。
多分カフェインを死ぬほど欲してた気がする。

注文は的確に伝えたし、お金もすっと出せた。笑顔で受け応えしたし、質問にもはっきり答えた。
別にレジ前でぐずぐずしたわけではない。

レジのお兄さんも同じ。
いつも通りの会話に、いつも通りの質問。いつも通りの案内。ただただ、ひとつだけ、お兄さんの案内に掴まれた。



「ポイントカードはお持ちですか?」

いやいやこんな普通の会話に何が含まれてたんだよと今になっては思うが、10分前、そこのレジに立ったわたしは、この一言にひどく救われた。

ポイントカードは持ってなかった。

だから、作ってもらった。

かまいたちのネタみたいに、この質問されたこの瞬間に戻って過去を修正したいとかならないように作ったわけじゃないよ。


レジのお兄さんにポイントカードを説明してもらった。一杯頼んだら1個ハンコ押してもらえて、20個溜まったら、1杯無料になるんだって。

そんなのどうでもよかった。
20個でも30個でもよかった。
ただ、その後にお兄さんがこう言った。

「今日何杯飲んでいってもらってもいいです、ポイント貯まるので、気の休まるまで、どうぞお店にいてください。」

サラダ記念日じゃないけど、アメリカーノ記念日。

最近は一人でいるならご飯食べなくなって、よくない痩せ方して、甘いものも食べたくなくなって、なんなら空腹に快感すら覚えてきた。

もしかしたら、体のなんかのサインだったのかもしれないけど、今日はこのカフェインにすっごく救われた。

さっき冷たい対応してしまったお友達に
謝れるといいな。
今日は帰って映画でも観れたらいいな。

マロッキーノ、シェカラート、シチリアーナ。
聞いたことないドリンクがたくさんメニューに並んでるから、またポイント貯めにここに来ようと思う。

放浪癖もち飽き性単位諦めがち注意散漫の限界大学生です