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ポストコロナへの助走

<ウィズコロナだと?>
9月4日。山のガイドをしていた時、お客様2名のうちのお一人が山小屋で発熱した。山行の2日目の夜だった。前日は登山口近くの山小屋に泊まり、天候回復を待って稜線に上がった。午前中はまあまあの天気だったが昼すぎから雨が降り出し、山小屋に到着するちょっと前から本降りになった。びしょ濡れになって小屋に入り、まずは乾燥室に直行。濡れたものの始末をして人心地ついた頃には、夕食になってしまった。食事の後、一人が熱っぽい気がするとの申し出があり、体温を測定すると37度ちょっとの微熱だった。

夕方の18時頃だった。喉も痛い、咳も少し出るというので、当然コロナを疑ってかかる。山小屋に報告して、他のお客様と我々を隔離してもらうことになった。我々以外の宿泊客は他に部屋へ移動、発症したお客様を部屋の一番奥のスペースに移し、小屋が準備した透明な仕切り板で囲った。山小屋はこの時点で、近くに常駐している山岳警備隊に連絡をし、指示を仰いだようだ。その後、警備隊の「人定」(名前住所登山計画書の有無など)作業があり、発症者が自力下山可能かどうかなどの質問を受けた。

幸いというか偶然にも、もう一人のお客様は現役の医師だった。その方の指示で持参していた解熱薬(カロナール)を発症者に投与した。熱は37度前後をキープしていた。

熱を出したお客様は、夜じゅう咳が出てあまり眠ることができなかったそうだ。翌朝、5時ごろ、熱が上がったようだというので、体温を測ると38.9度になっていた。お医者様の判断で再びカロナールを飲んでいただき、高熱で肺に負担がかかるから、自力下山は無理との判断された。警備隊に連絡を入れ、救助要請をした。

午前8時前に警備隊がやってきた。隊員は小屋に到着すると、15分ほどかけて白いタイベックの防御服を着用してから事情聴取があり、その後警備隊が持参した抗原検査キットで検査が行われた。15分で結果が判明。検査の結果、発症したお客様は陽性、ガイドの私ともう一人のお客様は陰性だった。

すでにヘリコプターは手配済みで、8時45分に飛来した。ヘリにはこれも完全防御の隊員2名と同じく防御服の操縦士、副操縦士が乗っていた。まるで映画か何かのワンシーンのようだった。ヘリ搬送になったお客様も搭乗前に防御服を着用した。ヘリと救急車で大きな総合病院へ運ばれたお客様は、PCR検査でも陽性となり、発熱、咳、倦怠感があったので、保健所の指示に従って、最寄りの指定ホテルでホテル療養隔離処置となった。

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