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赤木沢と黒部源流へ

<黒部川が生まれる所>
黒部川の源は、長野岐阜富山の三県が接する山域である三俣蓮華岳と鷲羽岳、そして雲ノ平の祖父岳に囲まれた場所にあります。黒部川源流の山として鷲羽岳がそうであると広く認められていますが、より正確に言えば鷲羽岳のすぐ北にあるワリモ岳の方が、黒部川が生まれる所と言えるでしょう。
黒部川は時計回りに雲ノ平をぐるりと半周しそこから北へ向かって流れていきます。この黒部川原流域は古くは加賀前田藩の領地だったのですが、海の幸と平野部の稲作で豊かな食生活を送っていた越中の人々からは、山林資源としては価値ある物としても「奥山」過ぎて、猟師もわざわざ狩りに行くような場所ではなかったようです。ところが信州側の人々にとってはここは貴重な猟場であり、豊かな山の恵みを得られる所として、近代に至るまで欠かせない場所だったそうです。この辺りの事情は、三俣山荘、雲ノ平山荘を拓いた故・伊藤正一さんのご著書『黒部の山賊』に、生き生きと描かれています。

黒部川本流は、薬師沢出会いから上流では明るい開けた沢になり、昔の猟師たちの活躍を想像しながら、流れに沿って源流部まで比較的安全に歩きていくことができます。朝、薬師沢小屋を出発すれば、昼頃には源流部の登山道に合流できるでしょう。

川の様子は、年によって、季節によって、また天候条件で変わります。雪解け水が多い初夏(7月)は、梅雨と重なれば水位が上がっていることも多く、また短時間でもまとまった雨が降ると一気に増水してしまい危険な状態になりますので、注意が必要です。エスケープルートは多くはありません。必ずガイドや経験者に同行して入渓しましょう。

今晴れていて目の前の水位が平水でも、上流で集中豪雨などがあった場合、一気に増水して茶色の激流になることもあります。上流部の沢が土砂や流木で堰き止められてそれが決壊すると鉄砲水が発生します。増水には細心の注意が必要です。

<赤木沢へ>
薬師沢出合から黒部川を遡行していくと、赤木沢の出合があります。多くの場合、上流へ向かって右側(左岸側)をアプローチしていることが多いでしょう。高さ1mほどの川幅全体に広がった滝が見え始め、さらにその奥にもう少し段差がある滝が見えます。この二つの滝の間が赤木沢の出合です。左岸をそのままへつりながら、途中腰の深さまで水に浸かることもありますが、難なく赤木沢に入ることができます。

赤木沢の遡行は、登攀的な要素がほとんどなく、ほとんどの滝が直登か少ない高巻きで超えていくことができます。あえて核心部と言えば、赤木沢大滝の高巻きとツメのルート取りでしょうか。大滝手前は大きな階段上になっていて滝壺手前まで上がると右手に岩が露出したリッジが見えます。顕著な踏み跡があるので、それを辿って高巻きします。途中からブッシュになり、ばらく樹々をかいくぐっていくと顕著な踏み跡に出てそのまま落ち口の上に出ます。初心者がいる場合は、ロープ確保する場面でしょう。

ツメは赤木岳と黒部五郎岳の間にある中俣乗越へ。大滝を超えたら顕著な二股を左へ左へ進み、三つ目ほどを右へ入るとハイマツに煩わされることが少なく詰めることができるでしょう。間違うと藪漕ぎになります。

中俣乗越からは、太郎平小屋へ3時間、黒部五郎岳へ2時間です。赤木沢のみの最短コースなら、太郎平小屋へもどってそのまま折立へ下山すれば、一泊二日も可能ですが、予備日もかねて太郎平で一泊するつもりで二泊三日の予定で入山するのがいいでしょう。
黒部源流を満喫したいなら、中俣乗越から黒部五郎岳へ。黒部五郎小舎に宿を取り、翌日小屋前の小川から五郎沢を下って再び黒部川に戻るのもいいでしょう。そのまま源流へ詰めて三俣山荘へ。あるいは祖父沢出合から祖父沢へ入り詰めあげて雲ノ平のテント場へ出る、というコースもあります。
この山域にはこの他にも、薬師沢左俣、太郎沢など、いくつか沢登りコースがあります。一般登山道の喧騒から外れて、のんびりと沢歩きを楽しむにはもってこいの黒部源流域です。

<山行レベル>
体力:★★★☆☆(10キロ程度の荷物を背負って1日9時間歩くことができる)
技術:★★★☆☆(三点支持で簡単な岩稜を登ことができる)

お客様に必要とされる技術:沢歩きの基本的な歩き方、登り方

ガイドが同行しない場合:リーダーは後続を急斜面で確実にロープ確保できなければならない。ルートファインディングが困難な箇所はないが、増水などの場合に備えて地図読みしながらエスケープルートを踏破する技術が必要。ビバーク装備は必須。

事前に求められる山行経験:日帰り丹沢や奥多摩などの沢

<Peak2Peakガイド企画 赤木沢ベーシックプラン>
適期:7月末から9月中旬まで
期間:2泊3日  1泊目 薬師沢小屋 2泊目 太郎平小屋
総距離:28km
入山口:折立  下山口:折立
装備:夏山の基本装備、沢歩きの基本装備(ヘルメット、ハーネス、沢靴、レッグガード等)

<Peak2Peakの黒部源流ガイド公募企画>
今年の夏の黒部源流企画は以下の通りです。

①黒部五郎雲ノ平周遊 7月18日〜21日 3泊4日
モンベルとの提携イベント 実施決定 残席2名 空席が出ました。直前ですがまだお申し込み可能です。ツアーの申し込みは、モンベルHPから
高山植物が最も美しい季節に、黒部五郎岳のカールと黒部源流、雲ノ平を訪れます。(沢歩きはありません)

②黒部源流と赤木沢 7月26日から30日 4泊5日 実施決定 残席2名 募集中
赤木沢と黒部原流域を堪能します。折立入山、薬師沢小屋から赤木沢と祖父沢を遡行。雲ノ平を周遊し高天原で温泉を楽しみます。 

③雲ノ平 8月14日から17日 3泊4日 実施決定 残席1名 募集中
雲ノ平の定番コース。折立入山、雲ノ平、源流、双六、新穂高へ下山。
(沢歩きはありません)

⑤黒部源流赤木沢 8月24~26日 2泊3日 実施決定 募集中 残席2名
折立入山、薬師沢小屋と太郎平小屋に泊ります。折立登山口に朝集合。富山駅前に前泊か、車で直接登山口へお越しください。

いずれも詳細はお問い合わせください。
メール:peaknipeak@gmail.com



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