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桜なんか見てない

慣れないピンヒールを履いているような、
ずっとそんな感覚だった。
社労士一発合格なんて肩書を背負って人と会うものだから、なんだか背伸びしていて。

プライドだけがずぅっと高くて
でも仕事なんて出来やしないから
加えて背の高い丸椅子に座って、足もつかずプルプル足を震わせているような、
そんな2023年の春だった。

「きっとバレるに違いない、
いやもう、とっくにバレているのかもしれない」

ずっとそんな思考が脳を占めていた。
疲れていたのかもしれない、生活の変化が大きくて。
耐えられなかったのかもしれない、あの頃のいっぱいいっぱいで、体調の悪かった私の”しでかしたこと”が,
TSUNAMIのように押し寄せて、私を追い詰めていて。

ともかく、会っちゃえば
(あ、こいつ仕事もできないし、頭もよくないし、
なんか つまんない人間だなー)
ってバレちゃうっていうのが、ずっと頭にあって

そんな中でもなんで人と会う約束をとりつけてしまったんだろう的な予定が数件あって
私はとにかく顔色が悪かったと思う。

この頃の悩みのタネは仕事のこともあるし、子供のことも大きかった。
小学校に進学したのだが(うむ、なかなかスムーズにはいかないのだな!)
と思うことが多々あり、それはそれは疲弊していた。

4月はそんなこんなで、キャリコンの試験勉強も進まず
陰鬱な日々を過ごしていたのだが
ただ1つ、
キャリコンの勉強をしていて、よかったと思うことがあった。

先にも伝えた通り、子供の進学は親子にとって多少のハードルだった。
恥をしのんで書くが、
「まさかうちの子が、そんなことをするなんて」という事件がおこった。

たった数秒前まで、(学校でトラブルがあったら、本当に先生から電話がかかってくるんだ・・・)なんて
他人事だった私が、受話器越しに先生に謝罪を繰り返したあの日。

ただ慎重にしなければならない。
起こってしまった事実については、精いっぱい謝罪をするだけだが
果たして子供は、その場をどう、見ていたのか?

「相手と同じ景色を見るように」
というのは、傾聴を学ぶ上で、再三キャリコンの講義で伝えられることだ。

子供が学校で見ていた景色は何?
ロープレではきっと、発揮することのない”本気の”
相手と同じ景色を見たい気持ちで

子供と対話すること2時間
結局、どうジャッジしても今回は子供に非があるということで
それについては、ちゃんと話をして。

と、同時に猛省した。
その行為に至るまでの経緯を思えば
どこかで気づけたかもしれないのに。

私は今まで、子供が見た景色をここまで聞こうとしたことがあっただろうか?
保育園のときは、先生のフォローが手厚く
保育園で起こったことを先生が事細かに報告してくれた。

その先生の報告で、全てをわかった気になっていなかっただろうか?
どうせ小さいから、説明できるはずがない
覚えていない
そう決めつけて、子供の言葉を聞こうとしていなかったんじゃないか。

「お母さん・・・めっちゃ聞くぅ~~~~!!!!!」
という子供の絶叫で、話し合いの幕は閉じた。
人様に迷惑をかけてしまったことは心から反省しているが、
子供に対する、関りについての気づきがあったこと。
そして、
ここまで必死に、相手のみた景色を自分も同じように見ようとする経験は、
しかるべきタイミングでのことだったのかもしれない。

子供のことはぼつぼつと。
ただ、自分のその(私と会ったって、つまんない人間と思うだろ云々)という僻み根性は、そうそう落ちてくれるものではない。

ゴールデンウイーク、
社労士試験を通じて知り合った、年頃の近いお父さんお母さん(とその子供たち)と
BBQをするという自分の歴史上、陽オブ陽ともいえるイベントに参加した。

幹事ということで、当日まで色々やりとりをする中でも、
(ダメな奴ってバレたらどうしよう、いやもうバレてるかもしれない・・・)
という不安はぬぐえなかった。

そんな中、迎えた当日。
他の幹事メンバーはもちろん、参加者の皆さんの協力の中、楽しく、滞りなく会は楽しく進行されていた。

「ちょっと会計のことで相談があるんやけど~」
幹事ということで、ミニ招集をかけられた。
(どうしよう、ちゃんとしなきゃ・・・ちゃんとしなきゃ・・・
バレちゃう、つまんないやつって、バレちゃうよ・・・・
もう会ってもらえないんじゃないか・・・)と内心、緊張しながら
こうしたらいいんじゃないかという案を答えた。
すると

「あっそうそう、全然話変わるんやけどさー!」
「この前、~~~こういうことがあったときに、おばちゃんに飴、もらってさー!
巾着にいっぱい、本当に大阪のおばちゃんって飴、いっぱい持ってるんやなぁ!」
え?

確かに!
それってあれでしょ、黒飴とか?金平糖とか??
あとあれ!なんか花の匂いする、ミルクっぽい飴~~~!!!!
―ひとしきり飴の話題で盛り上がるー

「なんで、おばちゃんってアメ、巾着に沢山もってるんだろうねー!」
ねー!って解散した私たちのうち、私は、

解散もしたし、開放もしていた。
(いいんだ、ちゃんとしていなくても大丈夫だった・・・)
会計の話がすっとんで、おばちゃんの飴の話になっても大丈夫なんだ。

肩の力がすうっと抜けた。
こんな私でも、受け入れてくれる人がいる。

でもだからこそ、みんなと会って恥ずかしくない私になりたいな。





つい1年前は、
希望に胸膨らませ、軟らかく咲く桜を見上げたはずだったが

やっと深呼吸して見上げた空には
もう桜はなくて、新緑がキラキラしていた。

キャリコン試験まで、あと2カ月。

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