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熱中症⑨〜まとめ〜

8回にわたって熱中症について解説してきましたがいかがだったでしょうか。まだまだお話し足りない部分もありますが、一旦まとめをしたいと思います。

熱中症の診断基準

従来の分類から、I-III度の熱中症という表現に変わり、重症度をよりシームレスに捉え迅速に対応していくことが強調されています。また、診断に当たっては、他の疾患が全て否定できていることが重要で、特に感染症に伴う全員状態の悪化は慎重にrule out する必要があります。

熱中症の病態生理と治療

熱産生と熱喪失のバランスの崩れによって、熱が身体に滞留してしまうことが根本原因でした。飲水量の低下による脱水、発汗に伴うナトリウムの喪失が病態をさらに深刻にします。

ひとたび、熱中症と診断したら迅速に体温を低下させ、出現している臓器症状に対して、集中治療を視野に入れた究極に対症療法をおこなうひつようがあります。

熱中症は予防できる

WBGT で 28 度を超えると有意に熱中症の発生率が上昇します。

WBGTには湿度が大きく影響するため、気温だけでは判断出来ません。しかし、WBGT をしっかりモニタリングし、それに応じた行動をすることで、熱中症は防ぐことができます。

特にスポーツ指導者の方々にはこの事実をよくしって頂いた上で、毎年スポーツをしている最中に亡くなる子どもたちが存在しているという事実を重く受めていただきたいと思っています。

補うのは水だけでよいか?

発汗に伴い水分だけでなく塩分が喪失することをご説明しました。水分・塩分がともに喪失することで、様々な病態が発生します。運動に関連する低ナトリウム血症という、難しい病態にも触れました。

最後に

救命の連鎖の一つ目の鎖は、「心停止の予防」でした。その意味で、熱中症は病態を知り予防策を行えば、確実に予防ができる病態です。ぜひ正しい知識を持って頂き、熱中症の予防に努めるとともに、万が一熱中症を疑う症状が出現した場合は、侮らず、慎重かつ迅速な対応をお願いできればと思います。
一方で、医療従事者の方々は状況証拠から「熱中症」と決め打ちすることなく、背後に潜む「熱中症もどき」の症状を呈する全身疾患をくまなく検索することを忘れないようにして下さい。

【参考になるサイト】
1.大塚製薬 「熱中症からカラダを守ろう」
https://www.otsuka.co.jp/health-and-illness/heat-disorders/

2. 環境省「熱中症予防情報サイト」
https://www.otsuka.co.jp/health-and-illness/heat-disorders/

3. 日本救急医学会「熱中症診療ガイドライン 2015」
http://www.jaam.jp/html/info/2015/info-20150413.htm

4. 日本スポーツ協会 「熱中症を防ごう」
https://www.japan-sports.or.jp/medicine/heatstroke/tabid523.html


  


小児科、小児集中治療室を中心に研修後、現在、救命救急センターに勤務しています。 全てのこども達が安心して暮らせる社会を作るべく、専門性と専門性の交差点で双方の価値を最大化していきます。 小児科専門医/救急科専門医/経営学修士(MBA)/日本DMAT隊員/災害時小児周産期リエゾン