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トマトの救済策

美味しいだろうか、甘いだろうか。

どきどきしながら、トマトを枝からもいで水道で洗う。

コロンと可愛らしい曲線を描く、艶やかな小さな実を口に運んで噛んでみる。


「う、すっぱい。」


田舎で育った私は近所の家々が皆そうであったように、家庭菜園で自宅で食べる分の野菜を育てていた。

冬場は白菜、ほうれん草、小松菜、キャベツ、ブロッコリー、初夏にはえんどう豆に始まり、玉ねぎとジャガイモの収穫が終わる頃きゅうり、トマト、茄子などが食卓に上がった。

祖母は野菜作りがうまく、多めに収穫できた時はご近所におすそ分けしていた。特にトマトは絶品だった。甘みがあってみずみずしいのに、水っぽさはなく、とにかく味が濃かった。

友人たちは「夏はきゅうりとトマトばかりで飽きる」とよく愚痴をこぼしていたが、私は祖母の完熟トマトが食べられる夏が待ち遠しかった。

祖母が他界した後、残りの家族で家庭菜園を引き継いだが、同時に鳥獣の被害が多くなってきた。

ジャガイモを植えればイノシシやモグラに食べられ、とうもろこしはカラスになぎ倒され食べられる。トマトも例外ではなく、小鳥たちによくついばまれた。

自然の摂理だから仕方ないのだが、自然相手の農業はなんと心が折れる仕事だろうか。

そのため、常に早め早めの収穫をするようになった。トマトは完熟を待たず少し色づき始めたら収穫して、家で追熟するまで保管するようになった。

それはそれで美味しいのだが、やはり祖母の完熟トマトが恋しい。

そこで、植木鉢で玄関脇で育ててみることにした。実のり始めたら、鳥獣除けのネットを被せてみよう。

家庭の畑仕事はほぼ収穫専門だった私だが、意外とトマトは育った。

実もちゃんとなった。完熟するまでしっかり待ってみた。

しかしながら、冒頭の通りだ。

祖母が一体どうやってあの美味しいトマトを育てていたのか、亡くなった今では全くわからない。

幼い頃、毎日のように祖母について畑に行っていたはずなのに。

どうして私はあの美味しいトマトの育て方を祖母に聞かなかったのだろう。

まだ青いトマトを眺めながら、口の中のすっぱいトマトを私は奥歯で噛みしめた。


さて、祖母の完熟トマトを育て方を知る救済策はありませんが、すっぱいトマトがもしかしたら、美味しくなるかもしれない方法を紹介します。

それは焼きトマトです。品種によっては焼いても美味しくなかったりするのですが、加熱することで酸味がとんでトマトの旨味がギュッと増すことがあります。

ということで、作り方です↓

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【用意するもの】

トマト、塩、耐熱皿(オーブントースターで使えるもの)

1.トマトを洗って食べやすい大きさに切ります。ミニトマトは半分、普通のトマトは角切りや薄切りなど。(くし切りは火の通りが不均一なのでオススメしません )

2.耐熱皿に並べ、塩をひとつまみ振りかけます。

3.オーブントースターで加熱します。

1200w で 5分くらい  600w で10分くらい。好みで加減してください。

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