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「血液型と免疫力」という本を読んで



日本人は血液型が大好きだ。



話が盛り上がった時の話題にもなるし、困った時の必殺技にもなる。自分もこの話題で何度救われたことか。


この本を読んでいくと、「O型はコロナウイルスに感染しづらく、重症化しにくい」との統計が出ているようだ。








私はO型だ。






だから、コロナ診療の第一線で働いていても、感染しなかったのかと、血液型で納得してしまった自分がいる。

そして

明日も頑張ろう

と思う。










だけど読むだけでは終わらなかった。







医者というのは悪い癖で、ほんとにそうか、ソースは正しいのかと(職業病のように)批判的吟味を始める「コメンテーター」が顔を出す。







今回の本の根拠となったのは、米国75万人を対象とした大規模調査で、「23andMe」という遺伝子診断サービスを提供する会社が企画したようだ。








・唾液の検査だけで疾患のリスクがわかる
・50万以上のDNA情報を分析
・パーキンソン病・アルツハイマー病・筋失調症を含めた10の疾患に関するリスクを表示




そしてキャッチフレーズは









あなたのルーツ(祖先)をたどろう!





いよいよ胡散臭くなってきた。








小児心臓病の世界でも、しばしば両親から、遺伝子検査すべきかどうかの相談を受けるが、心臓病の場合は「多因子遺伝」(遺伝子&環境)がほぼほぼなので、心臓以外のmajoy anomaly(or 複数のminor anomaly)がなければあまり積極的には検査しない。

もちろんappearanceで「特異的顔貌」があれば当然調べるし、こども病院であればすでに出生時点で調べて遺伝子診断が判明していることが多い。



専門外のため遺伝子検査の詳細は避ける(語るほどわかっていないが正しいか?)が、

遺伝子検査は通常、「血液検査」で行われる。

G-band、Fish法などが一般的だが、何をtargetにする検査なのかで検査アプローチが異なることが常識だ。


検査アプローチの例としては、健康診断が挙げられる。「健康診断で問題ない」と言われているから癌とか悪い病気がないと信じている人がいるが、そもそも健康診断やドックでどんな検査をしたかが問題で、胸部X線なのかCTなのかPETなのか腫瘍マーカーなのか、タバコを吸っているのか(Brinkman indexがいくらか)によって検査前確率を考えながら判断しないといけないが、健康診断というのは生活習慣病を主にターゲットにしており癌をきちんと見つける検査ではない。









話を戻す。








今回の遺伝子検査は「唾液」という人体から作られたものであって細胞そのものではないものを検体としている。





果たして大丈夫なのか!?





検体手法自体が不確かなのに、アルツハイマーが2倍の確率で、とか仮に言われても、私は信じないし、知りたくもない。




こういう遺伝子ビジネスはうんざりだ。






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