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片目の世界~片目1年生~

2017年の11月1日。28歳の時。
左眼ぶどう膜悪性黒色腫(メラノーマ)と診断されました。
眼の中のガンです。

片目になって1年。
これまでを振り返りながら
片目の世界がどんなものなのかを
伝えていきたいと思います。
(2年目の心境の変化はまた追記したいと思います)

腫瘍は眼球の半分くらいの大きさ。
放射線治療か摘出の選択。
僕は左眼の摘出を選びました。

ガンに気づいたきっかけ

2017年8月ごろ
職場での昼休みに、動物の視界の話をしていました。
「シマウマは180度以上見えるらしい」
「人はどれくらい見えるんかな」

手を顔の後ろから少しずつ出しながらどこで見えるかを試していました。

何度も試しましたが、左手だけなかなか見えないことに気づきました。
左眼だけでやってみると、左手を伸ばしきる頃にやっと見える。。
「こんなに見えなかったっけ?生まれつきかな」
その時は病院にも行きませんでした。

最初に視界の狭さに気づいたのがきっかけでした。
今思うと他にも
・視界が真っ白になる
・まぶたの上が急に痛くなる

ということがあったのですが、仕事でパソコンを見すぎているからだろうと思っていました。

ガンと宣告されるまで

その後、2017年9月末に右目(摘出してない方)が充血して痒くなっていたので、眼科に行きました。その時に左眼の視界について相談しました。

町の眼科医からは
「網膜ごと眼球内が膨らんでいる。何かはわからない。自然に戻るかもしれない。他のところで見てもらった方がいい。」
と言われ、別の眼科に行きました。

次に紹介してもらった眼科では
「何かはわからないけど、腫瘍のようなものがある。大学病院で検査してもらってください。」
何かがわからないと治療もできないと言われ、何もできない状況にモヤモヤな気持ちに。

紹介された大学病院では
「何かはわからない。何かわかってもここでは治療できない。他の病院を紹介する。すいません。」
この時点で、眼の中の腫瘍はガンかもしれないと疑っていましたが、情報が少なく、さらにモヤモヤした気持ちに。

次の紹介先の大学病院では
「おそらくガンだと思う。はっきりはわからないけど、他の検査をしてガンではない可能性を潰していくしかない。治療は、眼球摘出か放射線治療。放射線治療はここではできない。確か東京の方に行かないといけない。治療方法は早めに選んでください。」
心づもりはできていましたが、いざガンという名前を聞くと落ち込みました。

セカンドオピニオンも含めて、大学病院から国立がん研究センターに紹介してもらいました。そこでようやく宣告されました。
「99%ガン。腫瘍の大きさは横18mm、縦13mm、厚さ10mmと目の半分くらいの大きさ。ぶどう膜悪性黒色腫(メラノーマ)だと思うが、最終的には摘出しないと悪性か良性かはわからない。治療は摘出か放射線。手術から10年後の転移の確率は変わらない。放射線治療は千葉の大学になる。費用は300万ほどかかるけど、今なら補助(ほぼ全額?)が出る。放射線を当てると視力が必ず落ちる。失明の可能性もある。摘出の場合は、手術したら終わり。術後は義眼になる。眼球を残したいか残したくないかで選んでも良いと思う。」

落ち込むというよりは、やっとはっきりした病名を宣告され、スッキリしました。話を聞いている中で自分の中で「摘出」一択になっていました。次年度から青年海外協力隊でインドにいくことが決まっていたこともありましたが、早くガンから脱出(逃げたい)したい思いがありました。摘出してガンとおさらばして、前に進みたい!そう思っていました。

はっきりとガンと宣告されるまで、1ヶ月間、全国の病院を駆け巡りましたが、もっと早く国立がん研究センターにいけばよかったと今は思っています。

こんにちわ。片目の世界。

摘出することを決め、手術は、京都府立医科大学ですることに。診察してもらい10日後に手術となりました。手術までには彼女とUSJに行きハリーポッターに乗り「3D納め」をして、両目を満喫しました。

片目になったらどうなるんだろう。
そう思って手術前から片目を瞑って
こんな感じかなと想像していました。

・やっぱり見えづらいのかな。
・遠近感なくなるのかな。
・ちゃんと運転できるかな。
・何ができて何ができなくなるんだろう。
・見える方の視力も悪くなるのかな。
・義眼ってどんなんだろう

手術は無事に済み、転移もありませんでした。
実際に片目になって1年経って、感じることは

・見えずらいけど、慣れる。
・遠近感は感じづらくなる(特に近くのもの)
・ない左眼が眩しく感じる(明るいところで目を瞑っている感じ)
・運転は慣れる(左折とバックはまだ怖い)
・思った以上に視界が狭い。
・右の肩が凝りやすい
・球技は下手になる
・お酒を注ぐときにこぼす

不便はあるけれど、できなくなったことは3Dが見れないくらいです。

球技は遠近感が感じづらいので恥ずかしいくらいに下手になりましたが、今後上達するか試していきたいと思います。

本当にざっくりだけど、これが片目の世界。
体験したい人は、片目を隠すと体験できます。

同じ境遇になった人へ

ほとんどいないとは思いますが
眼球摘出か放射線で悩むと思います。

僕の場合、視神経近くまで腫瘍があったので放射線治療でも失明する可能性は十分にあり、早くガンとさよならしたかったので、摘出を選びました。

どちらかを選ぶのは難しいと思います。
僕は片目を摘出することくらい、へっちゃらさ。
と思っていました。

でも、片目がなくなった自分の姿を見て
本当に落ち込みました。

ポジティブで楽観的な自分が
人と会うのが嫌になり、前髪を伸ばし、伊達メガネを買い、笑うことが少なくなりました。
ポジティブではなく、そこまで落ち込む経験をしていなかっただけなのだと気づきました。

今は元どおり、元気で笑って人とも会うのが楽しいし、せっかく買った伊達メガネもかけていません。支えてくれた家族、彼女(今の奥さん)、友人、職場の方々に本当に感謝しています。落ち込んだ心は本当に少しずつ回復していくものだと実感しています。焦らず周りを頼って存分に甘えましょう。

放射線にしても摘出にしても辛い思いをするとは思いますが、片目の世界は両目の世界と何一つ変わらず楽しい世界です。最初は人に会うのが億劫になりますが、できないことは(3D以外。。)一つもないですよ。

僕も片目の先輩として、伊達政宗のように(片目の大先輩なのですぐに自伝を買いました)逞しい人になります。

少しでも同じ病気になった人の不安が和らぎますように。


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