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ポニテ周期

2024.04.15
ペぎんの日記#15
「ポニテ周期」


1日の授業が終わる。
長い廊下を歩いて部室に向かう。
前を歩く人の髪の毛が目に留まる。
セミロングを一本に結んだ髪。
フサフサしていて、ポニーと言うよりキツネの尻尾。
ボリューム感が愛くるしい。
コツコツと、廊下と上靴の出す独特の音。
その人は私の前を淡々と歩いていく。
不意にフワッと、結んだ髪が左に振れる。
そのまま尻尾は左右に振れる。振れ続ける。
ちょうど綺麗に、その人の歩くリズムに合わせて。
歩きと尻尾の周期に、寸分の誤差もない。
お互いに打ち消し合うことなく、
お互いにリズムを取りながら、
尻尾が左右に大きく揺れる。
地面から飛び立つ鳥のように、
力強く、しなやかにうねる。
この髪の長さ、髪の質感、足を出す早さ。
どれか一つでも欠けていたら見れなかったであろう、ポニーテイルの振り子。
もしかすると全部計算し尽くされた挙動なのかもとか、ちょっと思っちゃうくらい完璧な振り子。
廊下の突き当りで、その人は右に折れる。
ポニテの周期は乱れ、髪は大きく空中へ浮かび上がる。
浮き上がった髪の隙間に、窓からの夕日が差し込む。
茶色の強い髪の毛に、黄色い太陽が混ざって、黄金色に輝く。
私が角を右に曲がったとき、その人はもう、どこかへ行ってしまった後だった。

素敵な時間をありがとう。
私の知らない誰かさんへ。

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